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複雑なものの見方 アジサイ の広場
稔央 いつや

 アンパンマンは勧善懲悪の構図が延々と繰り返されるアニメである。それを見る子供たちには、悪は直ちに抹殺されるべきものであるという思考回路しか
提供しない。何が悪を生むのかといったものごとの背景に潜む原因に迫るものの見方はこうしたテレビアニメからは身につけられない。子供向けのテレビア ニメに限らず、大人向けのドラマでさえ登場人物の役割が単純化されている。だが実際には現実はこのように単純にはできていない。私たちはものごとの複 雑な面にも目をむけるべきだ。  

 第一に本気で現実の持つ複雑な側面に眼を向けたいのならテレビアニメを見ずに本を読むべきだ。テレビというメディアには視聴率を稼ぐという目的があ
る以上、わかりやすくするために登場人物の役割や筋を単純化する傾向がある。その点を踏まえた上で現実にも通用する複雑なものの見方の手本をテレビに 求める方がおかしい。その点、小説などでは現実を深く多角的に捉えることが要求される。  

 第二にテレビ番組に対するまともな批評や格付けを盛り上げるべきだ。これによって今まで漠然と見ていた番組がどのような性格のものだったかについて
考えるきっかけを与えることができる。現在はこのような種類のテレビ批評は大衆の目に触れる形でほとんど行われていない。質の高い批評に触れることで 視聴者自身の見る目が養われるはずだ。これはテレビでやることが望ましいがすでに大きな権力となっているマスメディアを内部から批判することは非常に 難しいだろう。そこで解決の糸口となるのがインターネットである。インターネットなら雑誌やテレビなどのメディアの意向に沿う批評をする人物が選ばれ るといった、これまでなら当然だった批評にまつわる問題を回避できる。  

 確かにたとえ批評制度が確立したとしても具体的な報酬が得られる見込みがなければ質の高い批評のできる人物が参加する可能性は低い。また、多くの批
評家達が参加したとしてもその中で人気のあるものとないものに2極分化し、結果として偏ったものの見方を提供するかもしれない。そもそもテレビを漫然 と見ている人がテレビ批判に関心を持つとは考えにくい。しかしこうした批評はないよりはあった方がはるかに善い。アンパンマンを見た子供達にこれまで アニメの持つ意味など考えたことなどなかった母親が的確なフォローを付け加えることもできるようになるかもしれない。  

 
                                                 
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