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清書:もう、あんたも『お姉ちゃん』☆ アジサイの広場
SMILEY(^o^)あるわ小6

 「あっ、ごめーん。待ったぁ?」
 

 ふと振り返ると、私の後ろの方から元気な声。小柄な女の子が息を切らして、いかにも、今起きたばかりです、というような顔をしながら走って
くる。その元気な声の持ち主はふーちゃん、こと真部芙紗子ちゃん。私の同級生だ。ふーちゃんと私は学校に登校するときいつも家の前で待ち合わ せして一緒に学校へ行く。でも、ふーちゃんはいつも寝坊や忘れ物、テレビを見ていたという理由で待ち合わせ時間を少し過ぎてから、元気な声を 出してやってくるのだ。ふーちゃんはすごく明るくて、すごく面白くて、いつもみんなを楽しませてくれる。けどよく忘れたり、ぬけていたり、ど こから見たってしっかりしている子ではない。ふーちゃんには妹、弟がいないから特にだ。でも、ふーちゃんのそういう所も私は大好き。そしてふ ーちゃんは今日もいつもどうり、待ち合わせ時間を過ぎてからやってきたのだ。  

 「ふーちゃん、今日も寝坊したのォ?」
 

 私は探るような目で、ふーちゃんにそう言うと、ふーちゃんは申し訳ないような顔をしながら遅くなってしまった『いいわけ』を話し始めた。途
中、ふーちゃんの言った言葉が面白すぎて私は笑いがとまらなくなり、お腹が痛くなってしまったのだが学校に着いてもふーちゃんの『いいわけ』 は終わることはない。私はだんだんつまらなくなり、学校に着いてからふーちゃんの話はほぼ聞き流してしまっていた…。だが、ひとつ気になる言  

 「えっ?今、ふーちゃんなんて言った?」
 

 「……だからさぁ、我が家の重大ニュースがあるんだってば!!何だと思う?当ててみな☆」
 

 ふーちゃんはいかにも早く私に答えてほしいという顔をしている。私は全然わからない。ついに私が考えている間、ふーちゃんは待ちきれず、
 

 「うちのお母さんに赤ちゃんができたんだよ!!うちに妹か弟ができる!!!!!いいやろー?うち、できたら妹がいいなぁ~!前からほしかってんもん
。生まれるのは十一月の末ぐらいだって。あぁ、楽しみぃ~!」  

 と正解を言った。ふーちゃんはただ空想にふけていて、私はというと教室を飛び跳ね、走り回り、クラスのみんなにこのおめでたいニュースを教
えまわっていた。  

 「ふーちゃん、アンタもついにお姉ちゃんになるんじゃん!私には妹がいるから、お姉ちゃんがいかに大変かがわかる…。お姉ちゃんはメチャメ
チャ大変だけど頑張りなさいよねっ!」  

 私が激励の言葉をかけると、ふーちゃんは今まで私に見せたこともないような満面の笑顔をしていた……。 次の日の朝、夜から大雨が降るのじ
ゃないかと思われるほど、びっくり仰天のことが起きた。ふーちゃんが待ち合わせ時間よりも早くに、いつもの待ち合わせ場所にいるのだ。私は目 を疑った。 「ふーちゃん今日、日番なの?こんなに早く…。」  

 すると私が思いもよらない答えが返ってきた。 「ううん、違う違う!うちもさ、もうすぐお姉ちゃんになるわけじゃん、だからしっかりしなく
ちゃいけないでしょ。いつも寝坊なんかしてられないよ!」 ふーちゃんはいつもと違って真剣そのものだった。  

 「えらいじゃん、ふーちゃん!これからもこの調子で遅れないようにねっ。」 昨日までのふーちゃんは良く忘れたり、ぬけていたり、しっかり
しているとは言えなかったはず――。だけど今日からは違う。お世話役やまとめ役、そんな仕事がまったく向かないはずのふーちゃんが、自分から 進んで物事を解決していくようになったのだ。これもふーちゃんが、自分はお姉ちゃんになった、という自覚を持ち始めたからだろう。その日の夜 、私の予想どおり、大雨が降った(笑)。 ついにふーちゃんにとっても私にとっても、待ちに待った十一月の末がやってきた。ふーちゃんのお望 みどうりにかわいい女の子が生まれ、名前は『ゆり』となづけたそうだ。今では、ふーちゃんの朝寝坊はすっかりなくなったのだが、このごろ、  

 「ゆりの世話してあげてたから、おそくなっちゃった。」 という時の方が多くなった。でもそれはそれで、ふーちゃんも良いお姉ちゃんになっ
たなぁ、といつも感じさせられる。人間、自分に弟、妹ができただけで責任感が強まり、こんなに変わることができたなんてすごい。ふーちゃんも 妹ができたことによって、すごく成長した……。来週の月曜日、『ゆりちゃん』を見せてもらう予定だ。私もがんばらなくちゃなぁ♪   

 
                             
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