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苦手分野と得意分野 アジサイ の広場
稔央 いつや

 日本では一般的に得意分野を伸ばすことよりも苦手分野を克服することに価値があると思われている。教育では大学受験をはじめとする受験生の選別シス
テムにそれが顕著にあらわれている。受験指導を受ける生徒達は、得意分野の科目を伸ばすことよりも苦手分野を克服することで合格する可能性をより効率 よく高くできることをくり返し聞かされる。実際それは複数の科目の点数の総和を比較して合否を決めるという方式のもとでは最も有効な勉強法だろう。し かしそうした評価方法に合わせた教育のもとでは突出した人材が生まれにくいという問題点がある。それを改善するためには突出した得意分野をもつ生徒が 優遇される教育制度に変更すべきだ。  

 自分自身が受験勉強をしていた頃を振り返ってみると苦手科目の勉強は苦痛でしかなかった。逆に得意分野の勉強は手応えを常に感じることができ、充実
した時間を過ごせたという実感が伴っていた。しかし志望校に合格しようとするならいつまでも自分の好きな事をやっているわけにはいかない。先に述べた ように得意科目を完璧にすることは受験には何の役にも立たないからだ。  

 具体的には各科目の点数を2乗した和を合計点数にするという方法がある。この場合、2科目の試験で50点ずつ取った生徒と、一方が100点でもう一
方が0点だった生徒では、両者の総得点数は同じ100点だが、この方法で得点処理をすると前者は5000点、後者は10000点になり大きな差がつく 。つまり万遍なく勉強した生徒よりも得意分野を伸ばした生徒が優遇される仕組みなのである。ここではこれによって自分の得意分野がなんであるかを見極 めることが重要になってくる。これは苦手分野を克服するのと同じくらい一つの重要な能力である。  

 確かにこれは平均的にレベルが高く、バランスのとれた人材を育てるという従来の日本の教育の美風を損ねる危険性をはらんでいる。怠惰な生徒達は苦手
科目に見向きもしなくなるかもしれないし文系と理系の分離を一層助長させるかもしれない。しかしそれは従来の選抜方法も平行して残し、組み合わせるこ とである程度防げるだろう。より深刻なのは主体的な努力が報われない、自分の能力を伸ばそうとする生徒のやる気を削ぐような教育制度である。  

 
 

 
                                               
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