題名 | 先生とのトーク 137 |
名前 | レックウザ |
時刻 | 2006-06-27 10:11:18 |
「ねえ、六年生になったら、あの習字の先生がうちらの担任になるんだって。」
「げっ、あの、厳しそうな感じの先生?」 私と友達は、補習校に通っている。五年生のとき、私たちは、六年生になったら、第一印象が怖そうな先生が担任になることにびくびくしていた。私達が習字を習っていたとき、その先生に教えられていた。先生は、大きな声で、そして少し早口で話すので、いつも習字のときは緊張していたのだ。だから、私と友達は、その先生を恐ろしがっていたのだ。しかし、それは勘違いだった。先生は、とてつもなく面白い先生だったのだ。 そして、六年生の教室の扉を初めて開けた日、私と友達はばったり会った。私たちはうつむいてしまった。最初に、その友達が話しかけてきた。 「もうすぐ、あの先生来るね。」 「うん。・・・・すごい緊張するね。」 私は、小さな声で返事をした。そして、時が過ぎ、クラス全員そろってぺちゃくちゃと話していたときだった。私と友達が恐ろしがっていた、あの担任の先生がつかつかと教室に入ってきたのだ。 「何しゃべっているの、すぐ席について。」 先生の、その小さな口から、大きな声で、まるで氷水のように冷たい言葉が飛び出してきた。一瞬、みんなしーんとして立っていたが、さっと決められた自分の席に腰を下ろした。と同時に、よくしゃべる男子が口を開いた。 「先生、僕、教科書忘れちゃいました。○○さんの教科書見ていいですか。あと、机、くっつかせていいですか。」 一瞬、先生は黙っていたが、急に大声で笑い出した。 「あははは、あんた、その子のこと好きでしょ。」 私達は、ポカンとしてしまった。先生がそんなことを言うだなんて、これっぽっちも思っていなかった。むしろ、先生は、 「ダメです、忘れた自分がいけません。教科書なしで、授業をして、恥を知りなさい。」 とでもしかるのかと思った。私達は、担任の先生が全然怖くないことに気づいた。笑っている顔は明るくて、元気そうだった。とても、生徒をびくびくような人には見えない。その先生の笑顔を見ると、みんなはほっと安堵の胸をなでおろした。その瞬間、みんなはどっと笑い出した。不安と恐ろしがっていた気分は消え去り、安心と楽しい気分が生まれたのだ。そして、みんなだんだんと先生に慣れてきて、男子などはどうしようもない駄洒落、例えば、 「先生、この話の内容、見つからないよう。」 や、授業に関係ない質問、 「先生、すごい筋肉がありますね。どこでそんな筋肉作れるの?」 などと、しんとしたひと時はないほど、先生に話しかけた。しかし先生は、どんなにどうしようもない駄洒落も、授業に関係ない質問も、すべて笑ったり、答えてくれたりした。私と友達は、全然怖くないね、担任の先生、と、目で合図をした。 先生は、私達だけの先生ではないことは、六年生になっての初日からわかった。なぜかというと、いつも休み時間のときに、中学一年生の女子が何人も教室にどたどたと入ってくるからだ。その子達の目は、まるで星の輝きのようにきらめいている。そしてその子達は、 「せんせ〜い、何か今日、宿題が多いんですけどぉ〜。」 「先生って、ホント筋肉がすごいよね〜絶対テレビを両手でかかえて持ち上げられるよ!」と、楽しそうに先生に話しかける。何となく私は、その中に入って、自分も先生にいろんなことを話しかける。例えば、 「先生って、ドラえもん、見てるんですよね?面白いですか?」 などと話す。そして、先生はみんなと楽しく、たった一週間に一日の楽しみを味わっているのだと、私は今もつくづく思う。 面白い先生と一日中話すのは、とても楽しくて、私は補習校がない日には、いつもため息をついて、先生と話したがる。他の先生と違って、何かと暖かいぬくもりが感じられる。先生とは、子供達に勉強を教えるだけの人間ではない。人と話をして、笑い、またはしかり、そしてまたは微笑みかけるのである。これは、どこの地方の先生も、共通しているのだ。この世には、ほとんどの先生が、暖かいぬくもりをくれる、優しい人間なのだ。 |