題名 | 長所を伸ばす、好きなことを生かす、明るく見る 101 |
名前 | 森川林 |
時刻 | 2005-12-20 04:42:02 |
どれも、ごく平凡なことですが、人間の生き方を左右する大事なことのように思います。
長所を伸ばす お母さん方からの相談で多いのが、「うちの子のここを直してほしいのですが」というものです。作文は、トータルな学力が要求される科目なので、欠点もそれだけいろいろな分野で見つけることができます。「字が汚い」「漢字を使わない」「表現が稚拙」など、数え上げればきりがありません。しかしここで、多くの大人は、その欠点を直せば作文が上手になると考えてしまいます。確かに、欠点の矯正はそのまますぐに効果が出るので、直した分だけ上手になることは間違いありません。しかし、その効果は最初のうちだけなのです。初めのうちは大きな欠点を直すので、効果も大きく出ます。しかし、次第に欠点が小さなものになっても欠点を直して上手にするという発想を続けるので、効果の大きさに反比例する形で批判の度合が大きくなってきます。注意をしたり批判をしたりする人は、相手のためを思って真面目に直しているつもりでも、書くたびに直される子供の側はたまりません。熱心な指導によって、かえって子供が作文嫌いになるというのはこういう背景があるからです。 欠点を直すことはもちろん大切です。しかし、それはあくまでも補助的なものにとどめるべきです。指導における主要な路線は、読む力をつけつつ、よくできたところを褒めるというやり方です。褒められれば子供は気分がよくなるので、ますます努力しようと思います。その努力の方向を、読む学習の方に振り向けるというのが、上手な指導の仕方です。 ご家庭で作文を見る場合も、「ここを直せばもっとよくなる」という言い方は最小限にとどめ、逆に、「ここがいい」「あそこがいい」という言い方をふんだんにしてあげることです。その上で、毎日、長文の音読や読書を続けていくことが上達のサイクルを継続していくコツになります。 好きなことを生かす もう一つの相談で多いのが、「○○をしすぎるので、少しは△△もするようにしたい」というものです。例えば、あるジャンルの本ばかりを読むので、別のジャンルの本を読ませたいなどという相談です。 子供でも、大人でも、何かに熱中しているときは、それが自分の成長にプラスになっているからということが多いものです。そして、ある期間そのことに熱中すると自然に、そこから得るものが少なくなるように感じ、自然にその熱中したものから卒業していくようです。 確かに子供は、視野の狭さから一つのことに熱中することもありますから、周囲の大人は別の世界もあることを知らせてあげる必要はありますが、基本は子供が好むものを発展させてあげるということが大切です。 テレビゲームなどは、子供がいちばん熱中するものですが、これもただ禁止するのではなく、その熱中をうまくコントロールしつつ発展させていく工夫をする方が前向きな対応だと思います。例えば、ゲームは、制限時間を決めて自分の好きなことを管理する練習と考えることもできますし、低学年でしたら攻略本を読んで読む力をつけるきっかけと考えることもできます。何かを禁止するという対応は、逆に親の禁止がなくなったときに歯止めが利かなくなるというマイナスを持っています。 また、もっと大事なことは、子供でも大人でも人間は幸福な生活をするために生きているということです。禁止や我慢で苦しい選択をすることは、それが自分の意志で進んでなされたものでないかぎり、人間の本来の生き方に反するものだと思います。 明るく見る もう一つは相談ではありませんが、発想の仕方で、もっとこう見ればいいのにと思うことがよくあります。 真面目な人ほど、「○○しないと△△にならない」という言い方を好むようです。例えば、「勉強しないといい学校に入れない」などです。二重否定の言葉なので、聞いている人は二重に暗くなります。(笑)同じことを、「勉強をしていい学校に入ろう」と言えばずっと明るくなります。「楽しく勉強をして楽しい学校生活に入ろう」と言えば、もっと明るくなります。 子供の作文を注意する場合でも、「ここがだめだからよくない」という言い方でなく、「ここを直すともっとよくなる」という言い方をするだけで印象がずっとよくなります。 言葉というのは、感情的なニュアンスを帯びて使われます。たとえの指導をする際に、「ぼくは、海の底のような暗い心で友達をにらみました」などという例を挙げる人はいません。(笑)「ぼくは、青空のようにさわやかな気持ちで友達を見つめました」などという例を挙げれば、みんな明るくなるはずです。こういう単純な例ではよくわかるのに、実際の生活では暗い言い方をする人は意外と多いのです。 そういう暗い見方で育てられた子供は、たぶん暗い見方で世界を見るようになると思います。見方というものは自覚しにくいものだからこそ、できるだけ意識的に明るくしていくことが大切なのです。 |