森リンは、日本で初めて実用化された文章解析ソフトです。
文章の上手さは、一般に語彙の豊富さと高い相関関係にあります。文章中の語彙は大きく分けて、文章の面白さと相関の高い素材語彙、内容の深さと相関の高い重量語彙、思考力と相関の高い強力語彙などに分類されます。森リンは、それらの語彙を抽出し数値としてわかるようにしました。 アメリカでは既に、複数の論文自動採点ソフトが開発され、2001年の時点で全米の中学・高校を中心に200以上の機関で5万人の生徒に利用されています。
このアメリカの自動採点ソフトの仕組みは、上手な文章が持つさまざまなパターンを基準とし、その基準からどれだけ隔たっているかによって文章の上手でない度合いを評価するものです。このため、上手でない文章の評価の妥当性に比べて、上手な文章の評価の妥当性が低いという面を持っています。また、アルゴリズム(コンピュータの計算手順)の性格上、評価の過程が複雑な数式の組み合わせとしてブラックボックス化され、人間は採点の結果を受け取るだけという立場に置かれがちです。しかし、これまで人間が長時間かけて行っていた論文の評価の前処理をソフトが行えるようにした功績は大きく、米国の中学高校の教育現場で文章表現の指導を容易にするという大きな成果を上げています。
森リンは、上手な文章の定義を明確にすることから評価を始めます。これは、上手でない文章の基準を決めるところから評価を始めるアメリカのソフトの方法とは正反対のアプローチです。アメリカのソフトでは、評価の過程を外から見ることができませんが、森リンでは、評価の過程はすべてオープンです。このため、ソフトが出した評価の結果を人間が主体的に解釈し、それをその後の学習に生かすことができます。また、森リンはアルゴリズムの性格上、上手な文章になるほど評価が正確になるという特徴を持っています。
文章の評価には、多様な要素がからんできます。人間がアナログ的に行っているこの評価を、現在のコンピュータの水準で代替することはできません。森リンは、人間の評価を模倣するのではなく、独自のアプローチをすることによってこの問題を解決しようとしています。
客観的な評価がすぐに出ることによって、子供たちは、文章を書くことに手ごたえを感じるようになります。また、森リンの評価は、なぜそういう評価が出たのかということが、書いた本人にもわかるように具体的に表示されます。このため、子供たちは、自分の力で文章をよりよくしようという意欲を持つようになります。
これまでの文章指導では、指導者は添削作業に追われるような指導になりがちでした。しかし、誤字や誤表記の指摘は、生徒どうしの相互添削でもカバーできます。また、よりよい表現の工夫は、添削によるよりも、生徒自身がよい文章を読むことによって身につくものです。森リンを使うことによって、指導者は本来の文章指導に専念することができるようになるのです。
|