でも、たしかに、父は面白い独り言を言ってるし、洗濯物を取り入れる時、強れつに臭かったのも汗水垂らして、私達のために一生懸命働いてくれているのだ。 （72字）

　

「プルル　プルルル　プルー」
父のスマートフォンがどこかでなっている。近くにあるはずなのだが、辺りを見回しても分からない。父は時々いや毎日、何か物をなくす。英語の本だったり、時計だったり、さっきのスマートフォンだったり、毎日毎日、どこかに置き忘れている。そして、何分後かに嬉しそうに持ってくるのだ。そういう父だが、実は長所がある。
　私は、はっきり「これは長所なんかではない」と断固、母が言ったことに反対した。父の長所がなかなか思いつかないから、母に聞いてみると、
「独り言で家族を笑わせてくれたり、汗でシャツが臭くなるほど、一生懸命働くことかな。
あれは本当にやばい。」と、笑いまじえて言ったのだ。母が言ったことに驚いた。あの父の少しめいわくの独り言がいいのだろうか。でも、たしかに、父は面白い独り言を言ってるし、洗濯物を取り入れる時、強れつに臭かったのも汗水垂らして、私達のために一生懸命働いてくれているのだ。角度を変えると、今まで普通のおっさんだった父が少し違って見えてきた。まるでゲームのキャラクターのレベルが上がったように感じた。長所を見つけるのは難しいが、角度をほんの少し変えると見つかるもんだ。母には長所がたくさんある。もちろん、短所もあるが・・・（笑）。まず一つ母には人を思いやる心がある。そして、ふっくらとした笑顔で人をハッピーな気持ちにする。この間も、テストであんまりよくない点の時、「あと三問じゃん。大丈ブイ。」とピースサインをしていた。あの時は嬉しかったのを覚えている。一気に気持ちがふくらんだ。しかし、母は小言も多い。そして口ぐせは「はーつかれた。」
「もー。」「うるさいなー。」だ。そっちの方がうるさいし、こっちがもーと言いたい。しかし、これもなんとなく長所に変えられる気がした。「はーつかれた。」というのは、私のために一生懸命やっているから。「もー。」や「うるさい。」も私たちのために言ってくれているのだ。
　妹も長所が二つか三つはある。まず一つは寝顔が可愛い所だ。家でキャーキャー言っている妹も寝ている時は可愛い。天使だ。もう一つは、極々たまーに優しい所だ。ぶっきらぼうだけど、手を貸してとかこれしてと言った時はやってくれる。本当に少しで、百回に一、二回なのだが。もう一つは、何でも見つけてくれるところだ。私の父の短所置き忘れが発生するたび見つけるのだ。これは本当にすごいと思う。
　人間にとって、家族とは短所を見つけ合い長所を伸ばしていくものだ。これからも、家族の短所を長所に裏返していきたい。今日もリビングに家族皆が集まる。