これからの教育と社会の、進むべき大きな変化の方向を説明したいと思います。
第一は、子供たちが、知識を詰め込み、それを再現するテストを受けることによって評価されるような今の教育の仕組みを変えることです。
そのかわり、自分で考え、それを発表し、周囲の人からの反応を受けて自分の考えを発展させていくという方向への教育を作っていくことです。
この発表と交流が動機となって、必要な知識の蓄積は自然に進みます。
知識の詰め込み自体が目的なのではなく、「自分の考えを深めるために知識を必要とするようになる」という教育です。
第二は、この教育を支えるものが、教えることを専門とするプロの教師ではなく、普通に社会生活を行っている、そして人間的な魅力のある一般の社会人であるということです。
教育がプロではなく、多様なアマチュアによって担われるというのは、これからのインターネット社会において、人間は職業や経歴ではなく、実際の教育実践の内容によって評価されるようになるからです。
第三は、教育についての思想が今後さらに深まっていくことです。
これまでの教育は、工業化社会を前提とした人間を育てることを目標としていました。
また、個人の教育に対する要求も、工業化社会に適応し、その社会の上方に行くことを目的としたものでした。
しかし、これからはその前提が変わり、個人の幸福と創造と向上と貢献が、仕事の大きな目的になってきます。
すると、その人間の生き方の変化に合わせて、教育の思想もこれから大きく変わってくるのです。
第四は、新しい教育が開発されていくことです。
今の教育は、国語、数学、英語、理科、社会などのように、主要な3教科又は5教科に技能教科を加えるような形で構成されています。
しかし、人間の創造性が最も価値あるものとみなされる社会になると、教育の内容は大きく広がります。
今の主要5教科や技教科は、なくなるのではなく、これから生まれる膨大な新しい教育内容の一部となっていくのです。
第五は、コミュニティの中で人間どうしが交流し共有することが、日常生活の中で大きなウエイトを占めるようになることです。
それは、子供だけでなく大人も、人から与えられた一律の義務をこなすような時間から解放され、自分の個性を生かす時間を多く持つようになるからです。
個性の拡大とコミュニティの活性化は比例しています。
自分の個性を発展させるようなコミュニティに、多くの人が参加するようになるのです。
それは、子供にとっても大人にとっても同じです。
第六は、経済的な助け合いが社会の大きな仕組みになっていくことです。
個性的な仕事のコミュニティが、一つの経済的な助け合いの基盤となっていくのです。
第七は、インターネットの情報の広がりに比例する形で、リアルな世界との結びつきが強化されていくことです。
「情報」という人間の体から独立した抽象的なものは、インターネットによって時間空間を超えて広がるようになりました。
また、情報は、コピーという操作によって、人間の個性から切り離されたものとして流通するようになりました。
この情報のグローバル化という社会の進歩と並行する形で、これから人間の体が持つ時間、空間、他の人間との関わりが、次第に重要な要素となってくるのです。
時間、空間、人間というものは、自分自身の身体と深く結びついています。
個人の身体を離れて、その個人の懐かしい思い出や、親しい友人や、住み慣れた場所という情報だけが存在するのではないからです。
この時空と人の関わりが、これからのインターネットの情報共有の社会では、最も重要な要素になってくるのです。
以上の七つの方向で、今後の教育と社会は大きく変わっていきます。
言葉の森もこの方向に沿って、これからの仕事を進めていきたいと考えています。
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枝 6 / 節 12 / ID 27045 作者コード:
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