森リンで高得点を取った作文を紹介します。
最初は、小3、こと座さんの作文「はじめて見た雪の帯」です。
字数774字、強力語彙6個57点、重量語彙16%55点、素材語彙136種77点で、総合点は65点です。(2月27日現在)
小3以下でパソコンで作文を書いている生徒の平均得点は46点ですから、65点というのは、かなり高い点数です。中でも、素材語彙の136種77点というのは、全学年の平均116種を20種も上回っています。
強力語彙と重量語彙は、年齢的な要素の強いもので、学年が上がり難しいテーマを書くようになれば、自然に増えてきます。小学校中学年のころは、強力語彙や重量語彙の点数はあまり気にせずに、素材語彙を増やすことを重点に書いていくといいと思います。
では、その作文。
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「ドイツの春は早いねえ。」
お母さんが、外の景色をながめながらつぶやきました。私の住むハイデルベルクは、ドイツでも南にあるので、他の所に比べて暖かいのです。特に最近では、最高気温が十五度くらいになることもあったので、道ばたのクロッカスが一辺にさき始めたのでした。
「あれっ?でもまた天気が変わってきたよ。雪だよ。」
私の声に
「うっそお。うわあ、何にも見えないじゃん。ものすごい風だね。スノーストームだよ。」
とお母さんもこうふんして叫びました。
私のうちは、山のてっぺんにあります。部屋は六階にあるので、窓からの景色は、広い空と山の森が見えるだけです。風が大きな音を立ててますます強くなってきました。さっきまで、見えていた近くの大きな木でさえもまったく見えなくなりました。窓の色が真っ白に変わりました。しかも、よく見てみると、まるで雪がオーロラのように見えるのです。ぼたん雪から粉雪まであって、雪の大きさもちがっていて、強い風がふくたび、きものの帯びが空からたれ下がっているように見えるのです。それにしても、ほんの十分前までは、日もさしていたのに不思議な気持ちになりました。お父さんから前に聞いた話によると、山の天気はすぐに変わるらしいです。そういえば、学校からの帰り道のバスの中で、私の家の方を見上げると、すっかり雲の中で、真っ白になっていたことがありました。
「こんないろいろな種類の雪がふってきたのを見たのは初めてだね。写真にとっておこうか。」
お母さんが、デジカメを持って吹雪のベランダに出ていきました。
「私も行く。」
「らいらはあぶないから、ここで待ってて。」
「きゃあー。」
真っ白になったお母さんが部屋に飛びこんできました。さっそくいっしょに写真を見てみると、ただ真っ白なだけで、帯びのような景色はわかりませんでした。
「ざんねんだったね、お母さん。」
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語彙が豊富で密度の濃い文章です。例えば、書き出しの部分「『ドイツの春は早いねえ。』お母さんが、外の景色をながめながらつぶやきました。」というところなどは、普通の小3の生徒であれば、「……と、お母さんが言いました。」で済ませてしまうところです。
また、それに続く文「私の住むハイデルベルクは、ドイツでも南にあるので、他の所に比べて暖かいのです。特に最近では、最高気温が十五度くらいになることもあったので、道ばたのクロッカスが一辺にさき始めたのでした。」というところも、普通は、「私の住むハイデルベルクは、とても暖かいのです。」で終わってもやむを得ないところです。
語彙が豊富な分だけ、ものの見方も豊かになっている例と言えるでしょう。
このような語彙力は、作文を書いているときの努力だけでできるものではなく、やはり普段からの読む練習の蓄積によって育っていくものです。
さて、このように上手に書ける生徒が、これからどういう勉強をしていったらいいかということですが、私は、この段階のままたっぷり上手な文章を書き続けて、小学生時代の記念となる作品をたくさん残していくといいと思います。
小学生は、このあと小5から説明文や意見文の感想文中心の課題に移ります。そのころになると、作文で要求される語彙は大きく変化します。ある意味では、この小学5年生から上の作文が、将来の文章力に直接つながる重要な作文で、それまでの小学4年生までの作文は助走期間のような位置づけです。
この助走期間を飛び越えて、小学校の3・4年生の時期に、その先の高学年で書くような作文を先取りすることはあまり意味がありません。それは、小学3・4年生のころは、自分の周囲の身近な事物に対する感動を深める時期で、ものごとを抽象的・一般的に思考する時期ではないからです。
小学3・4年生のころは、書き出しの工夫や結びの工夫などの表現を工夫する力をつけ、作文については速く長く書くこと、読書についてを速くたくさん読むことを中心に勉強し、実力を蓄えていくことが重要です。
これからも、たっぷり楽しい作文を書いていってください。
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枝 6 / 節 5 / ID 5680 作者コード:
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