言葉の森新聞2020年1月3週号 通算第1595号
文責 中根克明(森川林)

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■■これからの大学の国語入試の方向

 大学入試の共通テストから、国語の記述式の問題がなくなることが確定しました。
 これは、当然だと思います。
 120字程度の記述で測定できる能力などまずないからです。

 それでは、今後の国語の入試はどうなるかというと、私は次のように思っています。
 第一は、文章を読む量を増やす方向です。
 第二は、文章を書く量を増やす方向です。
 そして、第三に、これは少し先になりますが、入試問題自体がなくなる方向です。

 第三の話から先に言うと、今の入試の仕組みがあるのは、学校というリアルな教育の場が、教室の広さや座れるイスの数や先生の人数で物理的な制約があるからです。
 しかし、その制約は、ネットワークの世界では既になくなっています。
 唯一の制約は、気の合った友達の数は限られるという制約だけです。

 だから、入試はなくなり、誰でも好きなところに入学ができるようになる代わりに、そこで自分の好きなことを研究し、その同じ分野で気の合った友達を見つけるということが、学習の中心になっていくのです。

 そのときに必要な学力は、ひとつは高校卒業時までの全教科の学力をバランスよくつけておくことです。
 それは、受験に必要だからではなく、自分の専門の研究のために必要になるからです。
 そして、全教科のバランスのよい学力以上に大事なことは、自分の本当に好きな研究の分野を見つけることです。

 これからの勉強は、この方向に進みますから、今の小学生以下の子供の教育は、その子の好きなことを伸ばすことを第一に考え、その一方で苦手分野を作らないことを第二に考えておくといいと思います。
 
 さて、そのような先の未来の話ではなく、当面の入試がどうなるかということに戻ると、第一に文章を読む量が増えることです。
 この文章は、ただ量が多くなるだけでなく、難しい語句や内容が盛り込まれている文章になりますから、速読の勉強などでは対応できません。
 そういう難しい文章を読み慣れることが、これから重要になる勉強です。
 その勉強に対応できるのは、たぶん自主学習クラスの問題集読書になると思います。

 第二には、文章を書く量が増えることです。
 言葉の森のこれまでの指導の経験から言うと、作文の字数と作文の実力は、かなり高い相関関係にあります。
 もちろん、例外もあって、たくさん書けるのに内容が薄いという作文もあります。
 また、深い内容とよく考えられた表現で、字数が短いという作文もあります。
 そういう正反対の例外があることを前提とした上で、それでも、文章を書く字数と文章力の間には高い相関関係があるのです。
 そして、もともと文章力のある子であれば、ある程度練習することによって早く長く書けるようになります。

 したがって、長い文章を読ませ、長い作文小論文を書かせるという方向に、これからの国語の入試は進んでいくと思われます。

 では、その文章の採点をどうするかというと、それはまた別の問題です。
 作文小論文の自動採点ソフトを使うのが最も妥当な方法ですが、当面はまだそれは受け入れられないと思います。
 とりあえず、字数を評価の一つの基準にして、作文小論文の内容を評価するという方向になっていくと思います。


■■学校に行かない子も活用できる自主学習クラス
 自主学習クラスは、オンラインの少人数で自学自習の勉強を行うクラスです。
 この自主学習クラスの勉強で、国語・算数数学・英語・理科・社会の全教科の学習が能率よくできます。
 また、子供どうしの読書紹介や暗唱発表などの交流があります。

 自宅にいながらにして全教科の勉強ができ、他の生徒とのつながりもあるという点で、自主学習クラスは、学校に行かない不登校の子にとっても、勉強するのに最適な学習環境になっていると思います。

 この自主学習クラスは、これまで、子供たちの生活時間に合わせて夕方の5時から8時の範囲で行なっていました。
 しかし、午前中の早い時間から自主学習クラスを開いてほしいという希望もありました。
 そこで、2020年度に教材の切り替わる来年2月から、午前中の早い時間帯の9時か10時ごろから自主学習クラスを開くことを考えています。
 1クラスの生徒数が3人以上になった時点で、その時間帯のクラスをスタートさせます。
 この午前中のクラスへの希望される方があれば、希望の曜日や時間帯をご連絡ください。
 生徒数が確定した時間帯から、順次午前中の自主学習クラスをスタートさせていきます。
 また、森林プロジェクトの先生で、午前中からの授業がができる方も併せて授業担当のできる時間帯をご連絡ください。

 ご連絡は、下記の要望受付のページからお願いします。
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■■小さな一歩が大事
 評論家の扇谷正造さんは、かつて、受験、就職、結婚が人生の三大イベントであるというようなことを言っていました(表現は少し違うかもしれませんが)。
 その一歩が、その後の人生に大きな影響を与えるひとつの分岐点になるというのです。

 しかし、私はそれは確かに分岐点のようなものになるが、その後の生き方でいくらでも変わっていく分岐点なのだと思います。
 決して、一方の道が上り坂で、一方の道が下り坂というのではないのです。

 むしろ大事なのは、どちらの道に行くかということではなく、そのときに自分がどういう基準でその道を選ぼうとしたかという意識の方です。
 その基準は、その道が自分が本当に行きたい道かどうかということです。
 このときに迷うのは、自分が本当に行きたい道には、大抵の場合、困難が待ち受けているように見えることです。

 しかし、そのときに、自分の気持ちに反して、楽に行けそうな道を選んでしまうと、その後、小さな分岐点に出合ったときも、つい楽な道の方に行くようになります。

 だから、分岐点に出合ったときに最も大事なのは勇気を持つことです。
 勇気さえあれば、そのときには失敗しても、また新しい道を作ることができるからです。

 その勇気の支えになるのが、かつて自分は分岐点で自分の本当に目指す道を選ぼうとしたという過去の経験です。

 もちろん、安全性の高い道を探すという客観的な判断は大事です。
 しかし、最後の決定は、たとえ不確かであっても自分が本当にしたいことに近い道を選ぶということなのです。


■■未来の社会と仕事を考えた未来の教育
 親が、自分の子供の教育を考える場合、現在は二つの選択肢しかないように思われています。
 一つは、受験勉強に専念し、あまり意味のないと思われる勉強に時間を費やし、それでも一応いい学校に進むという道です。
 もう一つは、受験勉強から離れて、普通に勉強をして自分らしい時間も過ごし、普通の学校に進むという選択肢です。

 現在の親の世代は、自分自身が成績が重視された時代に生き、それなりに自分の成績にあった進度を選んできたので、成績というものを超えた世界というものに確信がありません。

 そして、実際に就職に際しては、学歴がほとんどすべてを決定しています。
 だから、名の通った企業に就職しようと考えるならば、高い学歴をつけておくことが必須の条件になります。
 そして、名の通った企業に就職できないということは、一生不利な条件で生きていかなければならないというような考え方になってしまうのです。

 ところが、名の通った企業に入るということは、現在では必ずしも将来の保証にはなりません。
 高度経済成長時代であれば、企業が発展するという展望がありました。
 しかし、今はモノ余りの時代なので、工業製品はこれから生産を縮小していかざるを得ません。(途上国ではまだしばらく工業製品の余地がありますが、。)
 また、サービス業についても、先進国の少子化に見られるように、需要を生み出す人口そのものが減っていくのですから、今の社会で名の通った企業であるということは、今がピークでこれからは下り坂になるということとほぼ同じなのです。

 もちろん、企業によっては、従来の仕事の分野を離れて、新しい分野に進出し大きく発展するところもあるでしょう。
 しかし、それはトップの力量にかかっていることなので、どの企業が今後発展するかということは誰にも分かりません。

 確かに、大企業は今後長期的に衰退するとはいっても、これまでの蓄積があるので、かなり長期間は現状のまま推移していくでしょう。
 大企業の利点は、福利厚生が充実していることであったり、給与面の待遇がいいことであったり、安定していることであったりしますが、長期的に衰退する傾向にあるのですから、仕事の内容はルーティンワークと営業が中心になってきます。

 しかも、大企業であればそれだけグローバルな競争の中に置かれるので、グローバル競争の基準でルーティンワークは次々にAI化されアウトソーシングかされていくでしょう。
 その盛衰が分かるのは、中小企業の衰退がすぐ見えるのと違って、かなり先のことになるはずなので、気が付いたときは新しい道に切り替えるには遅すぎるということにもなり得るのです。

 しかし、大企業とは違うベンチャー企業への就職は、もっと短い期間での激しい栄枯盛衰の中に置かれています。

 このように考えると、企業への就職を前提とした考え方ではない道を探す必要があるということなのです。
 それは、自分の個性と専門性を活かしてフリーランサー(自由業)として独立していく道です。
 その典型的な例が、よく例に出しますが、さかなクンのような生き方です。

 もちろん、自分の個性が専門的な仕事として成立するようになるまでには長い期間がかかります。
 その長い期間を支えるだけの生活の糧がなければなりません。
 その糧の一つが、農業となることが考えられます。

 田舎で自分と家族が食べられるだけの農業を営みながら、その一方で、自分の個性をビジネスにできるような蓄積をしていくのです。
 ところで、田舎にいて得られる現金収入の仕事は限られていると思われています。
 ところが、オンラインの教育システムの中で、自分の得意分野を人に教えるというような仕事であれば、田舎にいても自分の個性を活かして仕事していくことができます。

 農業を行いながら、子供の教育も含めた教育文化産業のオンラインを利用した仕事をするということがこれからの生活設計の一つの可能性として考えられます。
 田舎に行った場合の子供の教育も、その子供がオンラインで学習する仕組みにすれば何も心配することはありません。

 ところが、オンラインで自分の得意な何かを教えるとは言っても、個人の力でその市場で開拓するには時間がかかります。
 だから、言葉の森のオンライン教育システムを使って、そこに所属する中でオンラインの教育に参加し、さらに自分の個性に磨きをかけ、YouTubeやSNSで発信し、最終的には自分の名前だけで仕事ができるようなオンライン教育文化の仕事を作っっていく展望を考えるといいのです。

 工業製品は、既にモノ余りの時代に入っています。
 サービス業のほとんどは、生活に必要なものではないので、これから発展する可能性は高くありません。
 しかし、文化的な欲求、つまり人間がもっと成長したいとか、もっと新しいことを学びたい、もっと変わった自分や違った自分になりたいというような欲求は、普遍的なものですから、今後はこの教育文化産業がさまざまな形で広がっていきます。
 現代は、言わばその教育文化産業が一斉に花開く前のカンブリア紀の前夜なのです。

 このような展望を考えるならば、子供の教育の方向は大きく四つに分けて考えていくことができます。
 第一は、能率のよい学力の獲得です。
 これは、今の学校や塾や予備校でやっている無駄の多い必要性の乏しい受験勉強に時間をかけるのではなく、教科書に沿った形で真に必要な学力として全教科をしっかりマスターしておくという自学自習の学習です。

 第二は、考える力を育てる学習です。
 それは、文章を読み、考え、文章を書くという作文と読解の学習が中心になります。

 第三は、自分の個性を生かして創造的な学力を育てる学習でです。
 創造力を育てることへの関心は、誰でもありますが、もともと点数で評価される性質のものではないので、今の受験教育のシステムには乗りません。
 互いに創造的な子供たちが、相手の創造的な発表に刺激を受けながら自分の個性を伸ばしていくという少人数の相互教育的な学習が中心になります。

 そして、第四は、他の人とのリアルなコミュニケーションを交わしながら、実際に自然の中や、機械や道具を使う中で、実験や工作やさまざまな経験に挑戦する学習です。

 このような学習を行う場が、農業を生活の基盤とするような田舎に作られ、そこに個人では用意できない実験設備や工作設備などがあれば、そこが新しい子供たちの学習の場であるとともに、新しい創造的な仕事を作り出す場となります。

 言葉の森のオンラインスクールは、このような未来の社会を展望して、子供たちの新しい教育とその教育の先にある新しい社会を作っていきたいと考えています。













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