言葉の森新聞2018年1月2週号 通算第1498号
文責 中根克明(森川林)

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■■中学受験は、長期的な視野で
 保護者懇談会で、小学4、5年生の生徒の保護者からよく出された質問が、受験に関することでした。

 公立中高一貫校を受験したいという人は多いのですが、現在の公立中高一貫校の試験問題は、私立の中学受験と同じように、訓練をしないと解けない問題になっています。
 ですから、実力で合否が決まるのではなく、問題の選び方やそのときの運で合否が決まる面がかなりあります。

 小学校6年生の子供にとって、受験というのはほぼ初めての機会ですから、合格する可能性が少ないということはあまり考えません。

 そして、よくできる子であれば、親も子も合格するつもりで受験に臨みます。
 ところが、実際には倍率はかなり高いので、不合格になる子の方が圧倒的に多いのです。

 そのときに、親が長期的な視野を持っていて、受験勉強はひとつの経験であって、合格不合格に関係なく勉強してチャレンジしたことに意味があるという捉え方をすることができればいいのです。

 ところが、子供と一緒に、合否の結果に一喜一憂してしまう人が多いのです。
 それは、やむを得ない面もありますが、やはり親は落ちても受かっても、普通にどっしりしている必要があります。

 また、受験のために長期間苦しい勉強していると、その勉強を無駄にしたくない気持ちが働いて、私立中学も滑り止めに受けるようなことも出てきます。

 私立中学でも、トップ校に行けば、周りの人の雰囲気に引っ張られて勉強が進む面もあります。
 しかし、ほどほどのところに行けば、やはり周りの人に影響されて、ほどほど勉強しかしなくなります。

 それぐらいであれば、公立の中学に進んで、多様な生徒のいる中で自分のペースで勉強を進めでいった方がずっといいと思います。

 人間が、自分の人生という自覚を持って勉強を始められるのは中学3年生ぐらいからです。
 その頃に取り組む勉強は、自分の意思でやるものですから、どんなに頑張っても無理はありません。

 しかし、小学校6年生のころは、自分の意思で取り組むとは言っても、本当のところはまだ勉強の自覚が育っているわけではありません。

 だから、無理をして勉強をさせると、その反動として勉強に対する面白さを感じなくなってしまう可能性もあります。

 小学生で中学受験をする場合には、保護者は子供の人生という長期的な視野を持って取り組むことが大事です。
 例えば、勉強が忙しいときでも、読書をしたり対話をしたりというような機会を少しでも続けていくようにすることが大切なのです。


■■これまでの教育、これからの教育
 これからの勉強は、子供たちが思い思いに自分に好きなことに熱中して取り組むような勉強になります。

 では、基礎的な知識の勉強はどうするかというと、それは主に家庭での自学自習でまかなうのです。

 家庭での自学自習の教材は、オンラインの授業で自分に合ったものを選択します。
 学校は、子供たちが、家庭での勉強の成果を発表する場になるのです。

 たとえどんなに面白い授業であっても、15分も聞いていると飽きてくるのが普通です。
 しかし、自分が発表する授業であれば、飽きることはありません。
 子供たちは、みんな、聞くよりも話す方が好きなものです。

 新しい教育は、これまでの教育で成功しているところからは生まれません。
 東大や京大が入試改革に踏み切ったのも、世界でのランキングが落ちてきたからです。
 未来を客観的に予想すれば、たとえ現在成功しているところであっても、新しい教育に踏み出さなければならないのです。


■■思考力とは何か--算数の思考力と読書の思考力
 先日の保護者懇談会で、「思考力とは何か」という質問が出ました。

 今、書店では、子供向けの算数クイズのような思考力を育てる問題の本がいくつか出ています。
 いずれも頭を使って考える面があるので、大人にとっても面白い問題です。
 そういう算数クイズのような本で、思考力を育てるのはどうかという意見があったのです。

 こういう算数・数学の問題で、確かに思考力はつきます。
 しかし、それは算数・数学の狭い分野に限定された思考力です。

 世の中に出て遭遇するさまざまな問題にその思考力が適用できるかというと、そういうことはかなり限られています。

 日本のロケット開発の父とも言われる糸川英夫氏は、その著書の中で、「数学が、考える力をつけるわけではない。それは大学教授会の数学科の先生の発言を聞いていればよくわかる」と皮肉を書いていたことがありました。

 数学の思考力というものは、確かにありますが、それは一般の思考力と混同され過大評価されている面もあるのです。

 では、思考力を育てるものは何かと言えば、それは困難な課題への挑戦と、難しい本の読書だと思います。

 なぜかというと、困難な挑戦や読書によって、人間が普通に平面的に考えるところから、一歩進んで立体的に考えることができるようになるからです。
 そういう立体思考は、ほかのところにも応用できます。

 だから、子供の思考力を育てるためには、難しい本を読ませたり、難しいことに挑戦させたりすることです。
 しかし、「させる」という面が強くなると、子供の自主性を育てる面ではかえってマイナスになります。

 いちばんいいのは、説明的な文章の面白さに気づかせることと、小さな挑戦であっても子供が独自にやろうとしたことをいつも評価してあげることです。
 そして、親自身が、子供との対話の中で、知識ではなく思考を使って話をするように心がけることなのです。


■■七つの未来
 これからの教育と社会の、進むべき大きな変化の方向を説明したいと思います。

 第一は、子供たちが、知識を詰め込み、それを再現するテストを受けることによって評価されるような今の教育の仕組みを変えることです。

 そのかわり、自分で考え、それを発表し、周囲の人からの反応を受けて自分の考えを発展させていくという方向への教育を作っていくことです。

 この発表と交流が動機となって、必要な知識の蓄積は自然に進みます。
 知識の詰め込み自体が目的なのではなく、「自分の考えを深めるために知識を必要とするようになる」という教育です。

 第二は、この教育を支えるものが、教えることを専門とするプロの教師ではなく、普通に社会生活を行っている、そして人間的な魅力のある一般の社会人であるということです。

 教育がプロではなく、多様なアマチュアによって担われるというのは、これからのインターネット社会において、人間は職業や経歴ではなく、実際の教育実践の内容によって評価されるようになるからです。

 第三は、教育についての思想が今後さらに深まっていくことです。

 これまでの教育は、工業化社会を前提とした人間を育てることを目標としていました。
 また、個人の教育に対する要求も、工業化社会に適応し、その社会の上方に行くことを目的としたものでした。

 しかし、これからはその前提が変わり、個人の幸福と創造と向上と貢献が、仕事の大きな目的になってきます。
 すると、その人間の生き方の変化に合わせて、教育の思想もこれから大きく変わってくるのです。

 第四は、新しい教育が開発されていくことです。

 今の教育は、国語、数学、英語、理科、社会などのように、主要な3教科又は5教科に技能教科を加えるような形で構成されています。
 しかし、人間の創造性が最も価値あるものとみなされる社会になると、教育の内容は大きく広がります。

 今の主要5教科や技教科は、なくなるのではなく、これから生まれる膨大な新しい教育内容の一部となっていくのです。

 第五は、コミュニティの中で人間どうしが交流し共有することが、日常生活の中で大きなウエイトを占めるようになることです。

 それは、子供だけでなく大人も、人から与えられた一律の義務をこなすような時間から解放され、自分の個性を生かす時間を多く持つようになるからです。

 個性の拡大とコミュニティの活性化は比例しています。
 自分の個性を発展させるようなコミュニティに、多くの人が参加するようになるのです。

 それは、子供にとっても大人にとっても同じです。

 第六は、経済的な助け合いが社会の大きな仕組みになっていくことです。

 個性的な仕事のコミュニティが、一つの経済的な助け合いの基盤となっていくのです。

 第七は、インターネットの情報の広がりに比例する形で、リアルな世界との結びつきが強化されていくことです。

 「情報」という人間の体から独立した抽象的なものは、インターネットによって時間空間を超えて広がるようになりました。
 また、情報は、コピーという操作によって、人間の個性から切り離されたものとして流通するようになりました。

 この情報のグローバル化という社会の進歩と並行する形で、これから人間の体が持つ時間、空間、他の人間との関わりが、次第に重要な要素となってくるのです。

 時間、空間、人間というものは、自分自身の身体と深く結びついています。
 個人の身体を離れて、その個人の懐かしい思い出や、親しい友人や、住み慣れた場所という情報だけが存在するのではないからです。

 この時空と人の関わりが、これからのインターネットの情報共有の社会では、最も重要な要素になってくるのです。

 以上の七つの方向で、今後の教育と社会は大きく変わっていきます。

 言葉の森もこの方向に沿って、これからの仕事を進めていきたいと考えています。


■■言葉の森が今後力を入れていく三つの分野
 言葉の森が、今後力を入れていこうと思っている分野は三つあります。
 ただし、前提になるのは、今の言葉の森の作文教育と、森林プロジェクトの作文指導を充実させることで、更にその上に力を入れていこうと考えている分野です。

 第一は、海外にいる日本人の生徒の、作文をはじめとする教育全般への取り組みです。
 海外に暮らす日本人の子供は、日本語環境が乏しい中で、主に家庭の力によって日本語の力をつけています。
 それを、オンライン教育という形で、子供たちどうしの交流を深めながら楽しく勉強できる環境として言葉の森が提供していこうと考えています。

 第二は、幼児教育です。
 人間の成長の出発点は、小学校に入学するときではありません。
 それよりもはるか前の幼児期から、成長の重要な土台が作られています。

 しかし、この幼児期の教育の研究は、あまり進んでいるとは思えません。
 だから、何でも旺盛に吸収できる幼児期に、知識の先取りをするような幼児教育が広く行われているのです。
 これを、もっと人間の自然の成長に沿った形で進めていくことを考えています。

 第三は、日本教育です。
 日本には、明治期以前に、日本独自の優れた教育が、寺子屋教育以外に家庭や地域の中で行われていたはずです。
 しかし、それらが欧米化された教育の枠組みの中に解消された結果、今の教育は、点数化されないものを教育の範疇(はんちゅう)に取り込めないでいます。
 その日本的な意味の教育を、現代の科学技術を生かして復活させていきたいと思っています。


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