言葉の森新聞2016年5月2週号 通算第1418号
文責 中根克明(森川林)

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■■宿題で頭が悪くなる
 子供たちの中には、ときどき、「今日は宿題があるから(時間がないので)、○○はできない」と言う子がいます。
 中学生の場合も、定期テストの前に、一生懸命宿題をこなしている子がいます。
 先生は、宿題を出すことによって、最低限の家庭での学習ができると思っているのでしょう。
 また、保護者の方でも、学校の宿題というものがあれば、必ず勉強することになるので助かると思っているのかもしれません。
 しかし、宿題は、多くの場合意味がないばかりか、子供たちの頭を悪くし、勉強の意欲をなくすマイナス面の方が多いのです。
 宿題がなければ家庭で学習しないような子は、その宿題もやらなかったり、やっても答えや友達の宿題を写すようなやり方でやっています。
 宿題をきちんとやってくるような子は、その宿題は単なる作業のようなもので、やっても勉強になるようなことはありません。
 そして、もっと大きな問題は、他人にやらされる退屈な勉強に慣れることによって、勉強の面白さを感じない子に育っていくのです。
 私事ですが、私(森川林)の子供が小1のとき、足し算の答えを色分けするような宿題が学校から出たことがありました。
 子供が、「はあ」などとため息をつきながら宿題をやっているので、見てみると、全然面白そうな勉強ではありません。
 「これは、お父さんがやってやるから、本でも読んでろ」と言うと、子供は喜んでいました。だから、父の宿題です(笑)。
 その学校の先生は、普通にいい先生でした。普通のいい先生が普通に宿題を出すのですから、ほとんどの家庭では、その宿題をやるのが当然なのだと思ってしまうでしょう。
 そして、親も先生も誰も悪気はないのに、肝心の子供たちはどんどん勉強に対する意欲を失っていくのだと思いました。


■■日本発の未来の教育(10)
 アジアとともに、日本が目を向ける先はアフリカです。なぜなら、アフリカは地球の貧困の最後の焦点であり、アフリカが豊かにならないかぎり、世界に平和が訪れたと言える状態にはならないからです。
 アフリカに必要なのは、その地域の特性を生かした経済の建設です。しかし、そのもとになるものは、そこに住む人々の知恵と工夫です。だから、経済の建設と並行してアフリカの子供たちの教育を進めていく必要があります。
 この点でも、日本の寺子屋教育は、アフリカの教育に貢献することができます。
 これまでの世界の教育は、明治以降の日本の教育も含めて、学校での一斉授業形式の教育が中心でした。この教育方法は、短期間に全員を一定のレベルに持って行くには有効でしたが、その有効性は主に教育の初歩的な段階に留まるもので、教育の内容が高度になると、一斉より上のレベルの生徒にとっても下のレベルの生徒にとっても不十分なものになるという面を持っていました。

 また、一斉授業は、校舎とそこで教える先生を必要とするために、普及させるための費用と時間がかかるという面も持っていました。
 これに対して、ネットを使った少人数の自学自習形式の寺子屋オンエア型の教育は、生徒個人に教材と情報端末さえ渡せば、短期間のうちに比較的低コストで学習できる環境を広げることができます。
 義務教育の期間の勉強は、解説の詳しい教材があれば、特に先生が工夫して教えなくても本人の独学と同級生や上級生のアドバイスでほとんどがカバーしていけます。
 もちろん、経験の豊富な先生が教えた方が能率がよいという面があるかもしれませんが、幅広い範囲に点在する生徒に短期間に教育を普及させるためには、先に学んだ生徒があとから学ぶ生徒を教える仕組みを活用していく必要があります。
 それは、子供たちの遊びの世界では既に行われていて、それらの遊びの中には、勉強に似た複雑なものももちろんあります。
 ネットを使った寺子屋オンエア形式の学習は、この上級生が下級生の質問や相談に答えるという形の自学自習の教育を可能にします。
 ネットを使っているので、上級生にわからないところだけ先生が登場して質問に答えるという形も取ることができます。
 このようなやり方で教育を普及させていくことが、アフリカの人たち自身の手による経済建設の最初の土台になるのです。
 以上、10回にわたって、個性の教育、実力の教育、創造性の教育、教育の起業、世界の教育と話を進めてきました。
 言葉の森は、これまでに述べたような展望で、これからの教育を進めていきたいと思っています。


■■時間をかけるのは個性と経験と読書。勉強は短期間の集中力で
 受験勉強というのは、それほど面白いものではありません。既に答えのある世界で、他人と同じことをより速くより正確にやるという競争ですから、個性のはっきりしている子ほど飽きるのも早いのです。
 しかし、現実に競争があるのですから、やらないわけには行きません。そこで、出てくるのが、最後の1年間(又は半年)で死に物狂いの集中力で得点力をつけるという方法です。
 地道で計画的な勉強を考える人は、そういうやり方を不安視しますが、実はこの短期間の集中勉強というのは、大きな成果を上げるものです。
 ただし、それまでに、基礎的な実力はつけておく必要はありますが、その基礎的な勉強は、学校で普通に勉強していればつくというレベルのもので十分です。
 受験勉強というものは、本人の実力を測るものではなく、限られた範囲の試験での得点力を測るものですから、過去問を分析し自分の弱点を見極め、集中的に取り組めば、半年ほどで成績が急上昇します。
 保護者の中には、こういうことを自分で身を持って体験している人がいます。そういうお父さんやお母さんは、子供の勉強にあまり口出しをしません。普通に勉強していれば、いざというときにがんばれるということがわかっているからです。
 そして、それまでの勉強をあまり無理せずに行っていて、自分の自由な時間をたっぷり持っていた子供ほど、短期間の集中力は爆発的になるのです。
 ところが、今は塾の情報が多いせいか、子供が小さいころから塾に通わせて受験勉強の先取りをする家庭が増えています。
 もちろん勉強すること自体は、子供の仕事のようなものですから、それはそれでいいのです。
 しかし、受験の先取り的な、学校でやらないような問題を解かせるような勉強は、多くの場合全くの無駄になることが多いのです。なぜなら、例えば小学校3年生で1時間かけてやっと身につけたようなことは、小学校5年生になると10分でもっと確実に身につけられるというようなことがあるからです。
 そして、早めに無理な勉強をがんばっていると、勉強の生活に飽きるせいか、受験のときの短期間の爆発力が出ないのです。
 勉強は、時間をかければ確かに成績は上がります。だから、受験の最後の1年間の集中力で成績を上げるよりも、早めにこつこつと成績を上げておいたほうがよいという考えもあります。
 しかし、受験のための勉強に時間をかけるのは、実はもったいないことです。
 これからの子供たちの成長に大事なことは、個性を伸ばし本当の実力をつけておくことです。
 成績を上げるための勉強は、短期間の(と言っても半年か1年の期間ですが)集中力で取り組み、そのかわり、自分の好きなことに熱中し、経験と読書の質と量を高めていくことに多くの時間を費やすようにしていくといいのです。


■■なぜ自学自習か――人間は個性的に間違え個性的に理解する(1)
 ニワトリの摂食行動には個性がありません。だから、照明時間を長くすることで、どのニワトリも短期間で成長します。
 人間の勉強も同じように考えて、長期間教えればそれに比例して学力が上がるかというとそういうことはありません。人間の学習には個性があるからです。
 確かに小学校低学年のころは、学習内容に個性の差はほとんどありません。誰でもやればできるようになるし、やらなければできるようにならないという点で共通しています。
 しかし、学年が上がるにつれて、間違いの仕方も理解の仕方も個性的になってきます。同じ問題ができない場合でも、ある生徒はAの部分がわからないためにできないが、他のある生徒はBの部分がわからないためにできないということがあるのです。
 すると、当然その問題を理解する仕方も、ある生徒にはA’という解説が有効で、他のある生徒にはB’という解説が有効であるということが出てきます。
 ところが、これまでの教育では、生徒は受け身で教わる側に回っていることが多いため、教える側の先生がいくら熱心に教えても、その先生の説明の仕方もやはり個性的ですから、生徒と先生の理解のミスマッチングが起こることも多かったのです。
 優秀な先生が必ずしもよい先生になれないのは、この生徒と先生の個性の差があるからです。では、その反対に優秀でない先生がよいのかというと、これも同じようにその先生の個性に合わない生徒が出てきます。
 だから、生徒の個性を生かした勉強法で、最も能率のよい方法が自学自習なのです。


■■なぜ自学自習か――人間は個性的に間違え個性的に理解する(2)
 自学自習のやり方は、次のようになります。
 国語は、難読と多読が中心なので、問題集読書と読書を続けます。難読さえしっかりできていれば、あとの知識的な勉強は短期間で仕上げられるので、試験がある場合にその直前に勉強するだけで十分です。
 国語の問題集読書は、入試問題集の場合は問題文だけ読みます。市販の問題集の場合は先に答えを書き込み、問題と答えを併せて読みます。いずれも自分で問題を解く必要はありません。
 国語の知識的な勉強に関しては、漢字、文法、古文、漢文の参考書を繰り返し読みます。漢字は漢字の問題集で覚えるだけでなく、自分が作文で使って間違えた漢字を特に重点にノートに書き出して覚えます。
 理科、社会、英語は、知識を整理して身につける必要があるので、参考書を繰り返し5回読みます。
 英語は、文法の理解だけでなく、文章の流れに関する慣れが必要なので、教科書を繰り返し音読し暗唱と暗写できるようにします。余裕があれば、英語の長文を読むことに慣れるように、英語の問題集読書と読書を行います。
 国語、理科、社会、英語とも、参考書に問題が載っている場合は、先に答えを書き込み、問題と答えを併せて読みます。
 理科の計算問題の場合は、算数数学の勉強の仕方と同じように、できなかったところの解説を読んで理解します。
 算数数学は、問題集を解く勉強が中心になります。1冊を完璧に仕上げることが目標です。
 まず、算数数学の問題集を解くときは、問題集に直接答えを書かず、必ずノートに書きます。問題集には、○×だけつけておきます。
 ノートは、詰めて書かずに、できるだけスペースを空けて書きます。間違えたところに、正しい解法を書いて理解するためです。
 問題を見てしばらく考えても解き方がわからない場合は、それ以上時間をかけて考えるようなことはせずに、すぐに答えを見て解法を理解します。
 また、できる問題の場合も、横に解答を広げておき、自分の答えが合っているかどうかすぐに確かめるようにします。
 算数数学の勉強で大事なことは、その場で自分で○×をつけ、できたところは二度とやらずに、できなかったところだけ正しい解法を理解し、1冊が終わった時点で何度も繰り返しやることです。
 だから、こういう勉強法ができない、答えのない宿題や、自分ではなく親や先生が○×をつける問題は、算数数学の勉強としては時間の無駄になります。
 ところが、この無駄な勉強に時間をかけている子がほとんどなのです。それは、小さいころから、できる問題を解くという作業的な勉強に慣れてしまっているからです。また、親自身も、子供が一生懸命できる問題を解いている姿を、勉強している姿のように見ていることが多いからです。


■■なぜ自学自習か――人間は個性的に間違え個性的に理解する(3)
 さて、算数数学の勉強の場合は、他の教科の勉強と比べて、できない問題にぶつかったときの対応の仕方にコツがあります。
 できない問題は、自分で解説を読んで理解しますが、自分で読んでも理解できない場合があります。そのときに、そのできなかった問題の解法のどの部分が理解できないかを絞って、ほかの人に聞くのです。その場合、単に「問題がわからない」と言うのではなく、その問題の「解法のどこからどこに進むところがわからない」と絞って質問することが大事です。
 子供が最初に質問する「ほかの人」とは、お母さんとお父さん、つまり身近な親です。なぜなら、親は、子供がいちばん気楽に質問できる相手であり、親もまた子供の個性をいちばんよく理解しているからです。
 子供に質問をされたとき、親は自分の知識や考えで答えるのではなく、その問題集の解法に沿って答えることが大事です。親が自力でその問題を解く必要はなく、親は解法を見て説明できればよいのです。
 しかし、学生時代によく勉強ができた親でも、普段は勉強的なことをする必要がないので、多くのことを忘れています。
 親が考えても、子供と同じように解法が理解できないときは、先生に聞きます。そして、その先生の説明を親が理解し、親が再び子供に説明してあげるのです。
 更に言えば、親が解法を見て考えても理解できない問題は、できなくてもよい問題であることも多いのです。入試問題は満点を取る必要はなく、できる問題をしっかりできるようにしておくことが第一です。あとは、少し難しい問題もできるようにしておき、難しすぎる問題はできなくてもよいと割り切って取り組むことです。
(つづく)


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