言葉の森新聞2016年3月3週号 通算第1411号
文責 中根克明(森川林)

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■■3月21日(月)は休み宿題(再掲)

 3月21日(月)は休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時-午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」や課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 課題の説明の動画「授業の渚」http://www.mori7.com/nagisa/
 オープン教育の掲示板「森の予習室」にも、学年別の予習のヒントが載っています。


■■株は九勝一敗、事業は一勝九敗――子育ても一勝九敗の分野で (つづき)
【前回までの記事】
 ……今、身近な人が働いている仕事を思い浮かべてみるとわかるように、年々マーケットが小さくなっていくものがほとんどです。だから、たまにマーケットの広がりが一時的にせよ認められる分野(例えば介護)などでは、すぐに参入者が増え競争の中で市場が小さく分割されてしまうのです。(つづく)
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 こういう大きく衰退傾向にある社会で、一勝九敗の分野を見つけるには、その分野を創造しなければなりません。創造とは、与えられた答えを速く正確に見つけることではなく、自分の個性をもとにして新しい答えを作り出すことです。
 こういう時代には、まず親から、「答えがあるから安心だ」という発想ではなく、「答えがないから面白い」という発想に切り換えていく必要があります。
 誤解のないように言えば、勉強ができることはよいことです。そしてもちろん、全教科、苦手なものがないように勉強していくべきです。それは、大して難しいことではなく、正しい勉強法とある程度の勉強時間があれば誰でもできることです。
 しかし、そこそこ勉強ができるということで留まっていたのでは、これからの個性の時代に活躍することはできません。一勝九敗の世界をいつも念頭に置きながら子育てをしていく必要があるのです。


■■日本発の未来の教育――オンエア特別講座、寺子屋オンエア、オンライン作文、森林プロジェクト
 今の世界経済は、行き詰まっています。先進国はどれだけ金融緩和をしても景気は上向かず、株価だけがマネーゲームで上がり(ということはそのうち下がることがあるのですが)、貧富の差はますます広がっています。そして、国家の財政赤字も日々拡大し、それが縮小する見通しはありません。
 しかし、これを政策が悪いからだと言うことはできません。政治は今の時点でできることをやるために、できる限りの工夫をしているはずです。だから、国民のすることは、批判する対象を探すよりも、自分のできる場所で日本が直面する困難に立ち向かっていくことです。

 そして、その一方で、その困難を克服したあとにこれから迎える新しい社会を生きる子供たちを、どう育てていくか考えることです。

 今の世界の行き詰まりの最も大きな原因は、経済の新しいフロンティアが見つかっていないことです。
 先進国がこれまで担ってきた工業社会は、グローバリズムの流れの中で、新興国、中心国に拡散していきました。新興国は、低賃金と最新設備によって、先進国から工業生産の主要な役割を引き継ぎました。
 先進国は、理屈の上では、より高度な工業生産を目指していけばよかったはずなのですが、高度な工業生産は、これまでの工業のような多数の雇用を必要としませんでした。
 雇用を増やさずに生産性を高める大企業と、所得を低下させ消費力を減退させていく大多数の消費者との間の矛盾が今の社会の行き詰まりの大きな原因です。

 だから、これから作るべき新しい社会は、これまでのような生産を一手に引き受ける少数の大企業と、消費だけを一手に引き受ける多数の消費者によって構成される社会ではありません。
 人類全体の生産力は、既に人類全体に必要な消費を埋めて余りあるものになっています。だから、先進国が率先して新しい消費と、その消費によって引き出される新しい生産を生み出す必要があるのです。しかも、その新しい生産は、生産に特化した企業によって行われるのではなく、消費者が生産者を兼ねるような形で行われなければなりません。
 すべての人が消費者であるとともに生産者であるような社会を作ることによって初めて流れの止まっていた通過が動き出し、経済が自然な活性化を取り戻すのです。

 江戸時代の三百年間は、経済の停滞した時代と考えられています。しかし、その中で、日本独自のさまざまな文化が生まれました。その文化を担ったのが、消費者でありつつ生産者でもある大衆の中から生まれた無名のの独創家でした。今の日本が目指すのも、こういう時代です。
 これまでの社会では、人間は労働者でありかつ消費者でした。労働者というのは生産者ではなく、生産者の手足となって働く人です。生産者とは、自分の意思で物を作り出す人ですから、生産者とは別の言葉で経営者と言ってもいいでしょう。
 未来の社会は、誰もが経営者でありかつ消費者でもあるような時代、つまり、生産と消費の両方を兼ね備えた人間の本来の姿に近づく社会になるのです。
 今の子供たちが将来社会に出るころには、そのような誰もが経営者でありそして消費者であるような世の中になっているでしょう。その時代を生きていくために、今大事なことは、経営者となるための子育てを上手に行っていくということです。

 一昔前までは、経営者になることは大変でした。まず大変なのは、資金を作ることでした。なぜ資金が重要だったかというと、物を作るのにも、それを売るのにも、事業所を確保するのにも、何をするにも資金が必要で、その資金を提供してくれる機関も限られていたからです。
 しかし、今は、経営者になることは昔よりもずっと簡単です。それは、パソコンとインターネットとソーシャルサービスと3Dプリンタの時代には、物を作るのにも、それを売るのにも、場所を確保するのにも、資金はほとんど必要ないからです。そして、資金を提供してくれる機関も人も、アイデアさえよければいくらでもいます。しかも、昔は失敗したらあとがないという悲壮な決意をした起業も、今はアメリカ並みに、失敗はむしろ自分の経験になるという感覚に近づいています。
 こういう時代に、経営者(生産者)になるために必要なものは、個性と、個性に支えられた創造性と、その個性を支えるバランスのよい学力と、社会生活を円滑にするための人間関係です。昔のように、優れた学歴さえあればどこからでも引く手あまただったという時代は、もう過去のものになっています。学力が必要なのは、学歴のためではなく、自分が仕事をする際にいろいろな場面で学力が必要になるからなのです。

 このような社会がくることを前提にして考えると(それはもう既に来ているのですが)、子育ての重点のひとつは、個性を育てることです。もうひとつは、バランスのよい学力を育てることです。そして、この二つが、言葉の森が今行っている「オンエア特別講座」や「寺子屋オンエア」や「オンライン作文」や「森林プロジェクト」に結びついているのです。

 それでは、それを順番に述べていきたいと思います。
 まず、個性を育てることについてです。
 個性を育てるためには、その子の個性を発見しなければなりません。ところが、日常生活で見られる個性というものは、日常生活自体があまり変化や多様性がないことから、誰でも似たり寄ったりのものなりがちです。その子がどういうことに興味や関心を持っているかということが、選択できる興味や関心の分野にあまり広がりがないために平凡なものになってしまうのです。


■■日本発の未来の教育(2)
 では、どこでどのようにして個性を発見するかというと、それは読書によってなのです。読書というと、多くの人は、ストーリーのあるフィクションの本を考えると思います。フィクションももちろん個性発見のきっかけになりますが、よりはっきりと個性を自覚させてくれるのが、説明文やノンフィクションの本です。

 ノンフィクションの分野には、科学、芸術、スポーツ、料理、ファッション、電車、ロボット、恐竜、政治、経済、文化などと大きな広がりがあります。人間の個性は、こういう読書がきっかけになって自覚されることが多いのです。
 例えば、ある探検家が、子供時代に寒さに耐える練習をするために冬でも窓を開けて寝たなどという話を読むと、そういうことに感動してすぐに自分もやってみたくなる子と、そういうことに全く興味がなく、自分もやってみようとは思いつきもしない子に分かれます。これが個性です。その子の個性に合ったことは、止められてもやりたくなるし、個性に合わないことはどんなに勧められてもやりたくないものなのです。

 両親と学校の友達と近所や親戚の人たちという狭い世界の中では、子供が本来持っている個性に合うものはなかなか見つかりません。だから、多くの人は、間に合わせの個性でほどほどに満足して成長していくことになるのです。
 個性を磨くためには、その個性に費やす時間が必要です。10年同じことに興味を持って取り組んでいる人にほかの人が追いつこうと思えば、やはり10年かけなければなりません。もし自分のほかに10年かけている人がいなければ、その人はその分野の第一人者だと言ってもいいでしょう。たとえ10年かけて追いつこうとする人がいても、自分はもう10年先に行っていればいいからです。
 ところが、多くの人がやっているよくある個性の場合には、第一人者になることは至難の技です。
 例えば、サッカー、バスケットボール、野球、ピアノ、バイオリン、バレエなどの分野では、既に多くの人が昔から何十年もかけて取り組んでいます。だから、そこで自分が第一人者になる確率はきわめて小さいのです。そのかわり、その分野のレベルの高いものを吸収できるという利点もありますが、そこから一歩踏み出して自分独自のものを作り出すのはやはり難しいのです。

 このメジャーな分野に参加して、できるだけピラミッドの上の方まで行くというのは、過去の工業社会の時代の名残りです。オリンピックの金メダル銀メダルなども、こういうピラミッド型社会の発想を前提としています。
 これからの社会は、そういうピラミッドのなるべく上に行くことによって満足する社会ではありません。一人ひとり自分が山の頂点になるような分野を見つけるのが未来の社会です。そのためには、他の人が興味を示さないかもしれない個性的な分野で、自分にぴったり合うものを見つけ、そこに時間をかけて取り組んでいくことが必要になるのです。

 では、そういう個性を発見するきっかけとなる読書をどのように用意していったらいいのでしょうか。言葉の森が考えているのは、インターネットを利用した「読書感想クラブ」という仕組みです。
 まず、オンエアで6、7人の生徒がグループになります。そして、それぞれの生徒が自分の好きな本をみんなに紹介します。しかし、子供たちどうしでは読書の広がりが欠けるので、担当の先生も子供たちが興味を持ちそうな本を紹介します。
 友達の紹介してくれた本や、先生の紹介してくれた本で、自分も興味があるものについては、本の貸し借りができるような仕組みにします。互いに少人数の固定した仲間なので、期限を決めて郵便でやりとりすれば貸し借りは安全にできます。
 そして、その次の会合までに、友達や先生から借りた本、又は自分が持っている本をもとに感想を発表し合います。この感想が大事なのです。
 本の感想というと、多くの人は、自分の思ったことを書けばいいのだと考えがちですが、そういう思ったことだけの感想は、誰が書いても同じようなものになることが多いのです。極端に言えば、感想の最後の結論は、「面白かった」か「つまらなかったか」ですから、そういう感想だけをいくらふくらませようとしても、個性ある感想にはなかなかなりません。

 言葉の森の行っている感想文指導は、感想を書く前に、感想の裏付けとなる似た例を見つけることが中心です。「読書感想クラブ」の場合も、その似た例を見つけるために、実験や調査をしてみるのです。その実験や調査の過程を、写真で撮ったり動画で撮ったり絵で描いたりしておけばなおよいでしょう。
 次の会合には、その実験や調査を伴った感想をみんなの前でビジュアルに発表します。ちょうどプレゼン作文発表会のような感じです。
 このようにして、さまざまな新しい経験を積み、他の人の経験に接することで、自分の個性もより一層磨かれてきます。

 個性は、すぐにその場で生かす必要はありません。人間の個性は年齢とともに変化し成長していくからです。しかし、小中学生時代にそのようなさまざまな経験をした子は、大人になっても自分の個性の輪郭がはっきりしてきます。すると、「自分が本当は何がしたいのかわからない」というようなこともなくなりますし、「自分探しの旅」に時間をかけることもなくなります。自分の個性や興味や適性を生かして生きていくことが、人生を楽しく過ごすための第一の条件になるのです。
 これが、言葉の森の考える個性を育てる教育です。

 この「読書感想クラブ」と同じような少人数のオンエア講座には、ほかにもさまざまな企画が可能です。
 これまでにオンエア講座で行ったものは、「親子作文」「紙折り暗唱」「公立中高一貫校適性試験」「中学生定期テスト」「センター試験国語」など、勉強的なものが中心でしたが、ほかにも、行事、ロボット作り、工作、料理、音楽、スポーツ、行儀作法など、いろいろなものが考えられます。
 いずれも、自分が興味を持ったものに接することによって、個性を自覚するきっかけができます。そして、自分に合ったものを伸ばしていくことが、将来の人生設計の土台になっていくのです。(つづく)


■■スマホアプリの記念品タイマーの説明書
 2月29日までにスマホアプリを入れてくださった方に記念品のタイマーをお送りしました。操作の説明は台紙の裏に書いてあります。

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