言葉の森新聞2015年12月3週号 通算第1398号
文責 中根克明(森川林)

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■■新学期の教材を発送します

 新学期の教材を12月16日(水)~19日(土)に発送する予定です。
 国内の生徒で25日になっても届かない場合はご連絡ください。
 住所シールも同封します。


■■12月23日(水)と1月1日(金)2日(土)は休み宿題
 12月23日(水)と1月1日(金)2日(土)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時-午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 課題の説明の動画「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/
 オープン教育の掲示板「森の予習室」に学年別の予習のヒントが載っています。


■■学習障害を改善する高速言語入力、そしてその先にある超速読と超暗唱という方法 2

 現在、子供たちの発達障害は年々増えているようです。

 この発達障害の軽度のものは、注意力欠如や理性的なコントロールが効かない性格などとなって現れています。
 学校における学級崩壊には、こういうコントロールの効かない子供たちによるものがかなりあると思われます。
 このような発達障害を持った子供たちは、これまで医療によっても教育によっても改善する見込みはあまりありませんでした。
 しかし、鈴木さんの行っている方法によると、そういう子供たちが、早い場合はその日から症状の改善が見られるというのです。
 その方法は、私(森川林)なりの言葉で簡単にまとめると、第一は親の笑顔、第二は食事の改善、第三は高速言語入力(インプット)のようです。
 この高速言語入力という言葉は、こちらで勝手につけた名前ですので、詳しくは、鈴木さんの本を読んでもらうのがいちばんよいと思います。
「子どもの脳にいいこと」 http://www.amazon.co.jp/dp/4877951571
「やっぱりすごい!! 新・子どもの脳にいいこと」 http://www.amazon.co.jp/dp/4877952020
「子どもの脳がどんどん良くなる」 http://www.amazon.co.jp/dp/4845422298
 高速言語入力の原理は、次のようなものです。
 まず、発達障害の子どもは右脳の働きが活発で左脳の働きが弱いという仮定から出発します。
 それは逆に言えば、左脳の働きが弱かったために、それをカバーするものとして右脳の働きが活発化したとも言えると思います。
 右脳は、見聞きしたものを分析せずに、一括して瞬時に処理できるので、通常の言葉かけなどは遅すぎて集中できません。
 そのために、落ち着きがなく、周囲に対して理性的な配慮や行動のコントロールができず、興味があるものにすぐ行動を起こしてしまうという結果になるのです。

 この活発な右脳の働きを生かして、言語を高速にインプットすることにより、言語脳である左脳の働きを活性化し、左右の脳のバランスを取るというのが、鈴木さんの行っている方法です。
 具体的には、ひらがなや色や形の描かれたフラッシュカードを、言葉を声で言いながら0.5秒から0.2秒の高速で次々に見せていくというやり方です。
 この際に、鈴木さんが特に強調しているのが、親の笑顔です。笑顔でなければやってはいけない、とまで言っています。
 なぜ笑顔が大切かというと、次のような理由があるからだと思います。
 まず、子供は直感的に、明るいもの楽しいものの方に目を向けます。その反対に、暗いもの怖そうなものは、本能的に避けようとします。
 真面目な親や先生の表情は、暗く怖くなりがちです。そういう状態では、子供は働きかけを受け入れる前に、接すること自体を拒否してしまうのです。
 ここからは、私の考えですが、このフラッシュカードによる右脳経由の左脳活性化の先にあるものが、超速読による左脳経由の右脳活性化だと思います。
 また、もうひとつの左脳経由の右脳活性化の方法が、超暗唱という方法です。
 超速読とは、ただ左脳の力で速く読む速読ではなく、右脳の力で全体を一目で読み取るような速読です。、
 超暗唱とは、二百字や三百字の暗唱ではなく、五千字や一万字の暗唱です。
 右脳経由の左脳活性化は、発達障害の子供たちを改善する方法ですが、左脳経由の右脳活性化は、通常の子供たちの創造性を高める方法になると思います。
 言葉の森の教室にも、これまで、「学習障害と言われたのですが、作文が書けるでしょうか」というお母さんから何件か相談がありました。
 これまでの例では、それらの子供たちは、集団生活にはなじみにくい面はあったのかもしれませんが、作文の勉強ではほとんど何の問題もありませんでした。むしろよくできる子の方が多かったのです。
 ですから、学習障害という言葉は、学校や病院による無責任なレッテル貼りのようにも思っていました。
 しかし、実際に、発達障害と言われる子が増加している現状を見ると、やはり対策を考える必要があります。
 今考えているのは、発達障害と言われる子供を持ったお母さんたちと連携して、ウェブ上で改善の工夫をしていく「高速言語入力クラブ」の企画です。
 また、もうひとつは、普通の子が五千字一万字の暗唱を目指す「超暗唱クラブ」の企画です。
 いずれも、googleハングアウトやskypeやfacebookなどを利用して、相互の交流の中で行っていきたいと思っています。


■■小学校高学年以上の生徒に読ませる本

 日本の子供の読書環境は、幼児や低中学年のころに読む本はかなり充実しています。
 よく、どういう本を読んだらよいかという質問を受けますが、書店や図書館に並んでいる本で面白そうなものはどれでもいいというぐらいよいい本がそろっています。
 ただし、次のような本の選び方はあまりよくありません。
 それは、(1)名前が有名だからという理由だけで読ませる本(難しすぎたり、逆に子供向けに省略されていたりするものがあります)、(2)親が昔読んだ感動した本(現代に合わない暗い話になっているものが多いです)、(3)「○年生の読みもの」などと銘打ってある本(短い話がぶつ切りに載っているようなものが多く、読書に没頭するという読み方ができません)
 いい選び方は、次のようなものです。(1)ブックオフなどに並べられている本(よく読まれているものが多いからです)、(2)本の奥付を見て何度も印刷されていることがわかる本(人気のある本だからです)、(3)シリーズ化されている本(「フォア文庫」「青い鳥文庫」などのようにシリーズ化されているものは、これまでに人気のあった本だからです)
 さて、小学校中学年のころまでは読書環境が充実していますが、小学校高学年、中学生、高校生になると、その年齢にふさわしい本がだんだん少なくなってきます。
 高校生で本を読まない人が多いというのも、やはりいい本が身近にないためです。昔は、高校生向けの新書版の本が何種類かありましたが、今はあまり見かけません。
 特に、説明文の本は、書店にはほとんどないと言っていいので、いい本を探すためには図書館を利用していく必要があります。
 図書館では、「岩波ジュニア新書」「ちくま少年図書館」「ちくまプリマー新書」などが並んでいると思います。
 しかし、父親や母親が最近読んで感銘を受けた本であれば、小学校高学年以上の生徒でも、同じように読めるものがかなりあります。
 私が数日前人に薦められて読んだ本で面白かったものは、「サラとソロモン」のシリーズです。
 ストーリーもいいのですが、中に説明的な言葉がよく出てきます。ストーリーの面白さにひかれて読んでいくうちに、説明的な概念も身につきます。
 このような大人も、高学年以上の子供も同時に楽しめるような本は結構あると思います。
 ただし、ここで注意することは、自分が読んでよかったと思った本でも、必ずしも子供はそうは思わないことがあるということです。
 読書というものは個性的な面がありますから、好き嫌いははっきりしています。
 そこで、読ませ方のコツとしては、2冊以上の本を並行して読むようにすることです。1冊だけにこだわると、その本にあまり関心がない場合、そこで読書が止まってしまいます。2冊以上を同時に読んでいれば、1冊にあまり興味がわかないときでも、ほかの本を手に取ることができます。
 また、読書は必ず毎日読むようにさせることです。週に3日とか4日とかいう読み方では、読書の習慣はつきません。
 何しろ毎日読むことが大事で、その目安は、本当は毎日50ページ以上です。しかし、読書の苦手な子は、毎日50ページ以上ではかえって続きませんから、少なくとも10ページ以上は読むというようにしておくといいと思います。その場合でも大事なことは、毎日読むということです。


■■若者は就職以外の道も考えよう――森林プロジェクトのように自分で働ける仕事の展望を

 甲野善紀さんは、古武術を自分なりに研究して新たな境地を切り開いてきた人です。
 その甲野さんが、「今までにない職業をつくる」という本を出しています。これは、自分がこれから作るというのではなく、今の若者の仕事の状況を見て、やむにやまれぬ気持ちで、「もっと自分たちで新しい職業を作ればいいんだよ」とアドバイスしているのだと思います。
 若い人たちの就職の環境は、今のままではますます展望のないものになっていきます。
 派遣という形の仕事が増えると、当面の生活は何とかなりますが、その仕事の中で自分が何かを学び成長するという面がどうしても弱くなります。
 しかし、正社員でもその事情はあまり変わりません。生活の安定度がある程度あるとしても、これからの社会では、高度成長時代のように毎年規模が拡大するような仕事はもうありません。
 逆に、毎年縮小する市場を多くの企業が奪い合う中で、そのしわよせは社員に向けられます。つまり、競争の中で最も削減の対象となるのは人件費なのです。
 そのため、正社員であっても、仕事の中で自分の成長や挑戦が実感できる人はごくわずかで、ほとんどの人は、縮小する市場の中でいかに仕事を能率よくこなすかというようなところに力を入れざるを得なくなっていきます。
 若い人の離職率が高いのは、根性がないからではなく、やはりその仕事の中で先の展望が見えない気がするからなのだと思います。
 昔のように、会社自体が発展していく中であれば、長年勤めているだけで、部下が増え新しい仕事が増えました。それに伴って、自分も成長していくことができたのです。
 しかし、これからのように会社も市場も縮小していく中では、仕事の中で成長するどころか、今ある能力自体もさびついていく可能性が高いのです。
 では、どうしたらいいかというと、それは、若いうちに時間を味方にすることです。
 時間を味方にするというのは、時間をかければかけるだけその分野のプロになれるようなことに今から着手しておくのです。
 甲野善紀さんが、古武術の研究を始めたころは、そういうことが仕事になると思っている人は誰もいなかったでしょう。本人自身も、それが仕事になるとは思っていなかったではずです。
 しかし、自分の好きなことをずっと続けていく中で、やがて時間がたち、気がついたら押しも押されぬその分野の第一人者になっていたということなのです。
 これからが個性の時代というのは、こういうことなのです。
 個性というものが持って生まれたものだけであれば、それが特に何かに役に立つことはあまりありません。しかし、時間をかけた個性であれば、それは個性を生かした仕事に結びつくのです。
 しかし、個性というぐらいですから、みんなと同じ安全に見える道を歩いていたのではその分野の第一人者にはなかなかなれません。
 例えば、野球やサッカーやバスケットボールというメジャーなスポーツであれば、同好の士も多いし、練習する機会や場所も幅広く提供されています。しかし、その分野でプロになる可能性はほとんどないでしょう。
 ところが、周りに同じことをやっている人がほとんどいないような珍しいスポーツであれば、最初は誰からも相手にされないという苦労を味わうでしょうが、何年もたつうちに、そのスポーツの第一人者になっている可能性がずっと高くなるのです。
 これが、昔のような住んでいる地域に限定された狭い情報の社会であれば、人と違うことをやっていることは特に大きな利益にはなりませんでした。
 しかし、今のインターネット時代の特徴は、ロングテールなのです。つまり、インターネットを使えば世界中が市場ですから、自分の住んでいる町が人口10万人で1人だけ同じ趣味を持つ人がいたとしたら、同じ確率で考えると日本全体の1億人の中では、1000人も同じ趣味を持つ人がいます。世界全体で考えれば、もっと多くの仲間がいて、その人たちに自分の経験を教える仕事をすれば、そこに大きなマーケットが生まれるのです。
 こういうことが可能になるのは、ただ自分の好きなことに時間をかけることによってです。そして、若いということは、これからの時間がたくさんあるということです。
 だから、今仕事をしている人も、これから新たに社会に出る人も、まず自分の好きな分野で、多くの人がまだ参加していない分野をライフワークにする展望で取り組んでいくといいのです。
 言葉の森では、森林プロジェクトという名称で、作文を教える仕事を提供していますが、これを今後作文だけでなくもっと幅広い分野でできるものにしていきたいと思っています。
 当面、毎月第二火曜日は、森林プロジェクトに参加している人の交流会を、googleハングアウトで行っていく予定です。
 同じようなことをしているところは、今はたくさんあるはずです。
 若い人たちは、こういうさまざまな機会を利用して、自分のライフワークを見つける参考にしていくといいと思います。
 そのときに大事なことは、まず第一に自分の好きなこと、そして第二にできるだけみんなのやっていないことを時間をかけてやっていくことです。


■■暗唱検定、暗唱クラブ、新渡戸稲造記念館、森の学校

 1月から全学年の暗唱長文を作りなおすことにしました。現在、その最終チェック中です。
 低学年の子のお母さんから、子供に暗唱の自習をさせやすいように、面白い文章を取り入れてほしいという声もありました。それも、確かに一理あると思います。
 言葉の森の読解マラソン集は、説明文でダジャレの盛り込まれている長文で、子供たちに人気があります。
 その文章を音読したり暗唱したりする子は、楽しいから続けられるという面があるようでした。
 しかし、暗唱のいちばんの基本は、やはり親や先生という周囲の大人の確信だと思います。
 例えば、日本ではどの子も例外なく九九ができます。九九のような便利なものを、なぜ他の国でやらないかというと、他の国では大人が確信を持てないからなのです。
 日本では、大人は、九九はできて当然だし、やれば誰でもできるとわかっているので、子供や嫌がろうが何しようが明るくやらせることができます。
 大人が、できて当然という態度で臨めば、子供も自然にそのことを受け入れるのです。
 これが逆に、大人が、この暗唱は難しいだろうとか、自分には到底できないとか、嫌がったらどうしようとか思っていると、その気持ちは子供に通じます。
 そして、子供も、大人が思っているとおりに暗唱を難しく感じ出すのです。
 では、どうしたらいいかというと、暗唱という勉強を毎日の習慣のように軌道に乗せてしまえばいいのです。
 その方法として考えているのが、寺子屋オンエアを利用して、家庭で行う暗唱クラブという企画です。
 暗唱クラブで、数人の子どもたちが先生の指導のもとに、それぞれの家庭で一緒に暗唱をすれば、毎日10分の暗唱は苦もなくできます。
 そして、その暗唱の勉強を、暗唱検定を目標にして続けていくのです。
 今回の暗唱長文は、日本の古典から素材を選んでいます。
 古代からの日本の文章は、萬葉集や平家物語のように文学的なものが多いのですが、明治時代に入ると、少しずつ説明文的なものが出てきます。
 明治時代の説明文で代表的なものに、内村鑑三の「代表的日本人」や、新渡戸稲造の「武士道」などがあります。
 これらは、もともと英語で書かれたものですから、翻訳された日本語の文章を暗唱すれば、それに合わせて英語の原文の方も暗唱できるようになると思います。(つづく)


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