言葉の森新聞2008年2月2週号 通算第1018号
文責 中根克明(森川林)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇創造性を育てる作文・読解・国語◇◆◇◆◇
                              
    毎週担当の先生から電話の指導がある続けやすい通信講座
    自宅で無料体験学習を受けられます
    お申し込みはこちらからどうぞ
    https://www.mori7.com/

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■■2月11日(月)は休み宿題(再掲)
 2月11日(月)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
 「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php


■■年齢とともに進む読書力(その2)
 読書は、食事と同じようなものです。ある程度の食いだめはできます。しかし、1日腹いっぱい食べたから、これで1週間は大丈夫というわけには行きません。小学生のころにたくさん本を読んだから、中学生のころはあまり読まなくても大丈夫かといいうと、そうではありません。やはり、本はその年代に応じて読み続けなければならないのです。
 「三日書を読まざれば、則ち面目憎むべし、語言味なし」という言葉があります(宗代の書家、黄庭堅)。つまり、三日も本を読まないと、人相が悪くなり、話すことや書くことに味がなくなるというのです。これは、決してオーバーな話ではありません。中学生や高校生で、作文がなかなか書けないというとき、その原因は大抵本を読んでいないことにあります。数日間本を読んでいないと、文章力のある子でもやはりなぜか作文を書きにくくなるのです。
 ですから、作文や小論文の試験に臨むときも、私は生徒に今読みかけの1冊の本を持っていくことをすすめています。行きの電車の中で本を読んでいると、意外とそれが生きてくるのです。
 ところが、小学生のころは読むのにふさわしい本がたくさんありますが、中学生や高校生になると、年齢に応じたよい本が書店ではなかなか見つからなくなります。中学生や高校生のころは、物語文だけでなく、説明文や意見文の文章を読む必要があるのですが、そういう本はあまり売れないので書店には置いていないのです。
 そこで、私は、一昔前までは、「もっと図書館を利用しよう」と言っていました。しかし、今はインターネット書店という強い味方があります。アマゾンなどで、自分の関心のあるテーマを検索すると、読みたい本がたくさん見つかります。
 話は脱線しますが、アマゾンの社長は、昔、株の取引をする会社に勤めていたことがあり、その株の売買の方法をアマゾンの経営に生かしているようです。それは、ある会社Aと他の会社Bとの間に相関関係があると考えたとき、A社とB社の株価に差があれば、それを利用して売買するという方法です。A社の株が高くてB社の株が安ければ、A社の株を売り同時にB社の株を買うのです。先日、フランスの銀行が社員の取引で大きな損失を出しましたが、これも同じ方法です。ただしその個人が成績を無理に上げようとして、売りか買いの一方だけしかしていなかったので大損失になったのです。
 アマゾンでは、ある本Aと他の本Bとの間に相関関係があると、つまりAを買った人とBを買った人がある程度重複していると、その重複度に応じて、Aを買った人にはBをすすめ、Bを買った人にはAをすすめます。そして、これが意外とぴったり合っているのです。(つづく)


■■おすすめの暗記法(こみこみ/こみこ先生)
学校が三学期になると「一月は、行く。二月は、逃げる。三月は、去る。」といわれるように時間が早く過ぎるように感じますね。そんな中、みなさんは、もうじき「学年末テスト」や「総まとめ」と慌しさを増すようにテスト勉強に追われる日々を迎えることになるでしょう。
<<え2007/293み>>
 暗記がとても得意な人でなければ、覚えることがたくさんあるとそれだけでやる気が失せてしまうこともあります。私の経験から、暗記をするには何よりも「反復」、「繰り返し記憶すること」それで暗記したことが定着します。
 先日読んだ日本経済新聞朝刊に連載されている女優 森 光子さんの「私の履歴書」ではこのような文章が掲載されていました。
 「紙を縦に折り、折った紙を横にして自分のセリフだけ書く。相手のセリフは語尾だけ。書くと字の形から覚えられる。」
 森光子さんは、覚えるまで何度も繰り返してセリフを紙に書かれるそうです。これを読んだときに、私は、辛かった受験勉強の際に、ぶ厚ワラ半紙の束に漢字や英語のつづりを何度も繰り返して書いたことを思い出しました。
 そこで少しでもお役に立てば、とみなさんに私のおすすめの暗記法を紹介します。
<<え2004/161み>>漢字や英単語のつづりは、何度も繰り返して書いて覚えましょう。書きながら意味や読みを音読すると、なお記憶に残ります。
<<え2004/162み>>語呂合わせを使って歴史の年号や英単語や熟語の意味を覚えると、強烈に記憶に残ります。
<<え2004/163み>>音読して暗誦するときには、じっとして覚えるのではなく、体を動かしながらやりましょう。おすすめは、階段の昇り降りや、スクワットをしながら覚えることです。ドラマ「ドラゴン桜」では、東大合格を目指す受験生が同じところをぐるぐる歩いたり、卓球の素振りをしながら暗誦していましたね。これは、眠気も吹き飛びますし、脳も活性化されて一石二鳥ですよ。
 <<え2007/318み>>
 「忘却曲線」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、人間は一度覚えたことも時間が経つにつれて忘れてしまいます。忘れかける七十二時間後あたりにもう一度覚えなおすこと。このことで頭に定着する確率がかなり高くなります。
 皆さんも暗記したいことを覚えた三日後に復習して、頭の中に叩き込んでいきましょうね!


■■密度の濃い10分間に(ひまわり/すぎ先生)
 新しい年を迎えて、言葉の森も新学期が始まりました。今年も、みなさんの作文と電話のお話がとても楽しみです。
 みなさんの作文を継続して読んでいると、一年毎に成長が実感できます。実は、私も子どものころ、いくつかの通信教育にチャレンジしましたが、どれもさぼりがちで長続きしませんでした。それに比べると、言葉の森の生徒の提出率と継続率はすばらしいと思います。
 なぜ言葉の森のみなさんが、ここまでがんばれるかを考えてみました。第一は、もちろん一人一人の努力です。また、家族の協力もあるでしょう。もう一つ、電話指導があるということも、大きな要因ではないかと思いました。
<<え2007/347み>> ちょっと話はそれますが、今の中高生は、あまり電話を使わないようです。私が中高生のころは、友だちと長電話をしてよく叱られました。今のように、子機を使って自分の部屋でこっそり電話するということができないので、すぐに親にばれてしまったというのもありますが……。
 現代では、電話の代わりにメールを使うという人が増えています。電話は忙しいときにかかってくると困ることもありますが、メールは相手の都合を考えなくて良いので便利です。また、複数の人に同じことを伝えたいときにも、一度で済みます。手紙とちがって、ポストまで行く必要もないし、送信すればすぐに相手に届くのもメールのいいところです。

 しかし、すべていいことばかりではありません。すぐに届く(はず)というメールの長所が、逆に使う人を苦しめる場合もあります。
「どうしてこんなに返事が遅いのだ。(イライラ!)」
「あのメールを読んで、嫌な気分になったのかな。(悶々)」
 こんな無用の心配ばかりする人もいます。でも、返事が遅いのはたいてい、単にメールチェックをしていなかったり、単に筆(?)不精だからです。
 メールの文章から誤解が生まれて、嫌な思いをしたという話も聞きます。伝えたい内容を、自分の考えや感情まで含めて、絶対に誤解のないよう、短い文章に表現するのはたいへんです。かなり推敲が必要になるでしょう。しかし「手軽な」メールで、そんなに文章を推敲したりはしませんね。
<<え2007/351み>> 電話は、相手を時間的に拘束するという難点はありますが、問いかければすぐに返事が返ってくるというのが最大の長所ではないでしょうか。タイムラグがないので、お互いの思っていることがストレートに伝わり、誤解があれば、すぐその場で解いて先に進むことができます。
 みなさんと電話でお話をしていると、文章だけではわからない、色々なことがわかります。
「今日は元気がいいなあ。いいことがあったのかな。」
「あれ? 今日は声が低い。風邪気味かな。」
 また、課題の説明をしていると、その場で手応えを感じます。「難しいな」とみなさんが感じているときは、それが先生にも伝わるので、易しい言葉に直して繰り返し説明するなど、柔軟に対応できます。これは、文章による説明と添削だけではできません。

 みなさんも、タイムラグのない電話指導のよさを生かすため、疑問に思ったことなどは、すぐその場で先生に聞いてください。「こんなことを言ったら恥ずかしい」と思わず、何でも話してみましょう。メールと違って、話した内容は残りませんから(笑)。楽しく密度の濃い10分間にしていきましょう。


■■「誰かになろう」(よう/まえ先生)
<<え882み>>

(朝日新聞より)
●九州や四国などでこの冬、12月中〜下旬まで紅葉。全国ではこの50年でカエデの紅葉が約15日お続なった。
●06年は死者152人の豪雪。07年冬は記録的な小雪、暖冬。東京では観測史史上最も遅い初雪。
●07年夏葉101地点で観測史史上1位の高温を記録。埼玉県熊谷市、岐阜県多治見市で国内最高気温を更新。
●富士山の地中に存在する永久凍土が縮小。76年の分布下限は標高3200メートルだったが、01年には3500メートルに。
●東北地方で南方系のサワラが水揚げされるなど、魚種や漁期の異変が各地で相次ぐ。
●95年に大阪府で初めて見つかった熱帯性の毒グモ「セアカゴケグモ」が関東でも確認される。

 新年早々、朝日新聞の一面は環境問題を取り上げていました。これだけたくさんの異変が私たちの身の回りで起こっているかと思うと、正直ショックですね。

 高学年、そして、中学生以上の長文には、よく登場する環境問題。新聞やテレビなどでも、毎日のように取り上げられていますが、私たちがどれだけ真剣に考えているかというと……。環境問題は長い時間をかけてじわじわ進行する病気のようなもので、身近にさしあたって大きな変化がなければ、危機感を持つことは難しいかもしれません。例えば健康診断で、お医者さんに「今のままの健康状態だと10年後、大きな病気になるかもしれませんよ」と言われたようなものです。今のところ健康だしなぁ……、ま、気を付けなきゃなぁ(具体的な対策はなし)。これが、「あなたは大きな病気にかかっています。今すぐ治療しないと、命が危険です」と言われたとしたら、どうでしょう。一般的には、すぐに入院して、手術をしたり薬を飲んだり、どうにかしてよくなろうと思うのではないでしょうか。つまり、人間は切羽詰まらないと、なかなか「自分の問題」としてとらえることができないのですね。でも、冒頭に挙げた新聞記事は日本の出来事です。実は環境問題は私たちのすぐそばで起こっているのです。

 「誰かになろう」という言葉を聞いたことがありますか?私が小学生の時に、当時の校長先生がことあるごとにおっしゃっていた言葉です。私たちは、普段、知らず知らず「誰か」に頼っています。例えば、道にゴミが落ちているのを見たとします。ゴミに気付いた時に、すぐに拾ってゴミ箱に捨てられる人はどのくらいいるでしょう。たいていの人は「誰かがやってくれるだろう」と見て見ぬふりをするのではないでしょうか。「誰か」って、一体誰のことなのでしょう。その「誰か」がいつまでたっても現われなかったら、一体どうなるのでしょう。「誰かになろう」とは、つまり、そういうことなのです。目の前に起こっている問題は、決して「誰か」の問題ではなく、「みんな」の、そして「自分」の問題なのです。

 新年早々、おめでたい気分が吹っ飛ぶような新聞記事を読んで、背筋がぴんと伸びたような気がします。エアコンの設定温度を考える、再利用できるものは再利用する、水を出しっぱなしにしない……、小さなことだけれど、大きな一歩なのです。「誰か」になることは簡単なのですね。「誰かになろう」、今年はこの言葉を大事に、日々を送ろうと思います。


■■今は今なんだ(なら/なら先生)
<<えa/1588み>> 今は今なんだと。今を未来のためだけに使うべきじゃない。

 これは、恩田陸さんの『夜のピクニック』の中に出てくるフレーズです。主人公の高校3年生西脇融(にしわきとおる)は、自らの置かれている環境を受け容れられず、誰よりも早く大人になりたいと、周囲に距離を置いて高校生活を過ごしてきました。その主人公が、昼夜を通してひたすら歩くという学校行事の中で、自らのあり方に足りなかったことに気付く、その場面での言葉です。
<<え3789み>> 私たちは、常日頃、「ああすればこうなる」という思考の上にたって、どう行動するかを決めます。「こうなる」であろう未来のために、今何をすべきなのか、と考えるわけですね。先を読んで、計画的で堅実な道を選んで進んでいくのです。この主人公だけでなく、皆さんも「もうすぐテストがある。勉強しないと、成績が落ちる。」と思って机に向かうことも多いのではないでしょうか。

 「ああすればこうなる」というフレーズで、ピンと来た人もいるかもしれません。言葉の森の課題集ムベの山11月3週分「ああすればこうなる……」です。その中に「予定された未来」と「漠然とした定まらない未来 イコール 真の未来」とがあると書かれています。長文の言葉を借りれば、主人公融は、「予定された未来」のために日々を費やしていて、それでは何かが足りない・何かを見落としているということに、あるときに気付いたのでしょう。
<<え2006/105jみ>> 例えば、受験に必要だからということで取り組んでいる科目、それは、受験が終わったらどうなるのでしょうか。もう、用済み? 思い出しました! センター試験のためだけに必要だった理科の参考書を、試験が終わったら、試験会場のゴミ箱に捨ててしまったことを。当時の私にとって理科の勉強は、センター試験という予定された未来のためだけになされていたことなのですね。

 私の担当している山大君は、作文でこう書きました。「想定外のことが起こったときに費やした時間がもったいない。それに、そもそも、つまらない。」と。そのとおりです。受験科目としての理科の勉強は、苦手意識もありとても苦痛でした。おまけに、高校3年の秋になって、あまりのできの悪さに選択する科目を物理から化学に変更しました。「今までの時間は、何だったんだぁ! 時間を返せ。」(自分の力不足なのにね。)
 一方、国語の勉強は、受験用の参考書問題集を使っているものの、受験勉強という意識はあまりなく、問題文をただただ読んだり古典のドリルを時間制限を設けて解いたりするのも、どこかおもしろがっていたように思います。その時点で、自分の将来像など浮かんではいなかったのですが、結果として、今、国語に関係する仕事をしているのですから、「定まらない未来」に活かされているということになりますね。

<<え1678み>> 想定できない・定まらない未来でも何とかなる……そのためには、今を今のために使うことが大切なのでしょう。課題長文にはエンデの『モモ』に出てくる「時間泥棒」についても述べてあります。もうずいぶん前に読んだ『モモ』ですが、再読しようと思います。




 <<え797み>>


----------------------------------------------------

■MagMagからのメールマガジンの登録と削除は下記のページで
(▼ダイジェスト版 マガジンID:0000000226)
https://tinyurl.com/ybkrlw5b
(▼完全版 マガジンID:0000132951)
https://tinyurl.com/yakxr3w3
■これまでの言葉の森新聞は下記のページで
https://www.mori7.com/mori/
■ホームページ
https://www.mori7.com/
■メール
mori@mori7.com
【事務局用】 ユーザー: パス: