言葉の森新聞2007年11月1週号 通算第1005号
文責 中根克明(森川林)

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■■11月3日(土)は休み宿題(再掲)
 11月3日(土)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
 「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php


■■小中学生の受験小論文対策
 入試で作文や小論文の試験を出すところが増えています。今日は、小中学生の作文試験対策について書きたいと思います。大事なことは、全部で5つあります。
 第一は、何しろいろいろなテーマで最低10本は書いてみるということです。出そうなテーマで、10種類の作文を書いておけば、実際の試験でも使えそうな実例や意見が準備できます。
 第二は、誤字を徹底してなくすことと、時間内に字数を埋める練習をすることです。誤字は、実際に書いて見つけるしかありません。時間と字数については、いろいろなコツがありますが、これも最終的には慣れるしかありません。
 第三は、挑戦実例を見つけるということです。10種類の作文を書くときに、自分がこれまで何かに挑戦したという体験をできるだけ思い出して入れていきましょう。体験実例に価値があると、作文の印象そのものがよくなります。
 第四は、家族で対話をすることです。特に、普段あまり話すことのない父親が登場して、出そうなテーマについて父親の体験を交えながら話しておくと、その対話実例がほかのテーマのときにも使えるようになります。両親との味のある対話が入っていると、挑戦実例と同じで作文の印象がよくなります。
 第五は、光る表現を入れる練習です。しかし、これは、試験直前に練習すれば十分です。
 これら5つの取り組みの中で、最も効果の高いのが、第四の「家庭での対話」です。時事問題集などを読んで身につけた知識は、表面的なものなので試験には生かせませんが、両親の肉声を通して聞いた実例は生きた実例として子供の記憶の中に残ります。


■■まずは全体を(たんぽぽ/たま先生)
<<え2007/266み>>

 今月は、長文についてお話ししようと思います。みなさんの中に「長文が難しくて、意味がわからない言葉がたくさんある。一つ一つ調べていると、なかなか先に進まないのだが…」という人がいます。たしかに語句の意味を調べることは大切です。しかし全部の意味がわからなければ、長文を理解することができないのかというと、答えはNO(ノー)です。
 私たちは、人の話を聞いているとき、内容を100%理解し、記憶しながら聞いているわけではないようです。本を読むときもそうです。あとで思い出したとき「だいたいこんな話だった」というところに納まれば、内容を理解したということになるのです。難しい言葉がわからない小さな子供でも、大人と対等に話ができるのは、わかる部分から全体をとらえ、「おそらくこんなことを言っているのだろう」と想像しているからです。

 たとえばこんな話を聞いたことがあります。

 1枚の写真に何かが写っています。一人はピントが合ったその写真の切れ端を、何枚か持っています。もう一人が持っているのは、形は完全ですが、かなりピンボケです。さて、被写体が何かを当てることができたのは、どちらでしょう?

 正解は後者です。

 理由は簡単です。切れ端をいくらつなげても、欠けている部分に写ったものを当てることはできません。しかしたとえピンボケでも、全体が写っていれば、被写体が何かを想像することができるからです。

 それが家族写真であるとしましょう。欠けている部分があれば、家族が全部で何人なのか、またそこに犬が写っているかどうかもわかりません。でも全体が写っていれば、いくらピンボケでも家族の人数くらいはわかりますし、「人間でないようなものが写っているが、これはもしかして犬だろうか?」という想像ができるわけです。お父さんの髪が多いかどうか、お母さんが美人かどうかなどは、想像する方が楽しい場合もあります(笑)。

 長文を1枚の写真だと考えると、同じことが言えると思います。はっきりわかる言葉の意味を断片的につなぎ合わせるより、ピンボケでも全体を理解している方がいいのです。そのピンボケを修正するためには・・・もうわかりますね。そう、「何度も読むこと」です。

 先月号の続きではないですが、言葉の森の長文は、毎日読むのに負担にならない量です。完璧な理解を目指すより、全体を把握することが大切ですから、感想文を書く週は、特によく読んでおくようにしましょう。

                   <<え2007/264み>>


■■後の人のために(ひな/あられ先生)
 シオンの課題の人たちは、先学期ずっとアルフレッド・ノーベルの伝記を長文で読んできました。ノーベルはダイナマイトの発明や、石油のパイプラインの開発で巨万の富を蓄えた人物です。けれども、彼は巨額の財産を自分や家族のために使うのではなく、人類の発展に貢献した人たちに賞金として与えることを遺言に残しました。ノーベルは後の人のために、なにかをしようと思ったのです。

 先日、「ミス・ポター」という映画を観ました。ミス・ポターとは『ピーターラビット』の絵本を描いたビアトリクス・ポターのことです。映画は彼女の生涯を描いたものです。(ただし、事実と違うところがたくさんあります。)
 もともと彼女の家は裕福でしたが、ピーターラビットのシリーズが世界中で人気を博し、彼女は巨額の印税を得ることとなります。そのお金を使って、ポターは美しい農村風景が残るイギリス北西部の湖水地方の自然を守るため、たくさんの土地を買い上げました。その土地は自然や歴史的建造物を次の世に引き継いでいくことを目的としたナショナルトラストという団体に託され、今では国立公園の一部になっています。今日美しい湖水地方が残っているのは、ポターのおかげともいえます。

 ノーベルの遺言状の感想文を書くとき、自分にも似た体験がないかふりかえってみると、下級生のためにカレンダーを作っていってくれたり、ベンチを買ってくれた卒業生のことを思い出した人がいました。そういえば自分も卒園するときに時計を残してきた、という人もいました。わたしも自分の家を学童保育の場所に使うよう、遺言された人を知っています。ノーベルやポターのように大金を投じて、歴史に残るようなことするのは誰にでもできるわけではありませんが、身近なところでも「後の人のために」となにかをする人はいるようです。

 高い知能を持った猿も、過去のことから何かを学んだり、自分の家族や仲間のために何かをすることはあるでしょう。でも、これからずっと後のことに思いをはせたり、人類という地球規模の視野にたって物事を考えられるのは、人間しかいません。ただし人間が時間や空間に大きな広がりを持って考えられるようになったのは、ここ150年くらいからかもしれません。人間の思考はどんどん進化しているのです。
 私はノーベルやポターのようにお金はありませんが、後の人のために自分にできることは何だろうと、映画を観終えてから考えています。
                          <<え2004/809jみ>>


■■桃栗三年野菜は?年(パンダ/なるこ先生)
 朝夕はかなり涼しくなり、ようやく秋らしくなりましたね。学校では運動会などの行事も一段落したでしょうか?
               <<え835み>>
 我が家ではこの秋から、野菜作りに挑戦しています。家から自転車で五分ほどのところに土地を借りて、全くの更地を耕すことから始めました。土地が更地なら、作る方も全くの初心者。鍬を持つ手つきもおぼつかない状態で、最初はどうなることやらと思いましたが、どうにか土作りを終えて、蒔いたタネが芽を出し根付いてきたところです。

 みなさんは、野菜の旬がわかりますか? 秋刀魚や栗、松茸などと並ぶ秋の味覚といえば、さつまいもがすぐに思い浮かぶかもしれませんね。その他の野菜はどうでしょう? トマトの旬は夏ですね。キューリやなすも夏野菜です。大根や白菜は冬ですね。それでは、じゃがいもは? 玉ねぎの旬はいつでしょう?

<<え1716み>> <<え1717み>> <<え1720み>>  <<え1718み>>
 本来、それぞれの野菜には育つのに適した季節があり、最もおいしく食べられる時期が決まっているものでした。ところが今や、野菜は一年中店先に並んでいます。品種の改良や栽培方法の多様化、また流通手段の発達などによって、いつでも豊富な種類の野菜を食べられるようになったのです。しかし、あらゆる野菜が大量に出回る一方で、自然に近い形で育った本来の野菜は少なくなり、味わう機会が減っています。野菜の旬もとてもわかりにくくなっていますよね。

 太陽の光をいっぱいに浴びて育った旬の野菜は、おいしいだけではありません。夏野菜は夏に食べることで夏バテ防止になったり、ほてった体を冷やしてくれるなどの効果を発揮します。冬野菜はその逆で体を温める役目をします。もちろん春野菜でも秋野菜でも、旬のものを食べた方がより栄養価も高く、体にとっていい働きをするのです。野菜の持つパワーを存分に発揮させ、よりおいしく野菜を食べたい! そのためにも、もっともっと野菜のことを知りたい! そんな思いが家庭菜園を思い立ったきっかけでもあります。

                <<え1719み>> <<え1714み>>   <<え1721み>>   <<え1724み>>
 とはいえ、野菜作りとひとことで言っても、そう簡単においしい野菜が作れるわけではないということが、始めてみてとてもよくわかりました。家族が食べるだけの量を収穫できればいいので、大量に立派な野菜を作る必要はありません。だから、土をやせさせないためにも、無農薬有機栽培をめざしているのです。初心者にどこまでできるのかはわかりませんが、まずは土に親しんで、他の生き物たちとの共生を図りながら、野菜の特性や成長の仕方などを学ぶこと、それが差し当たりの目標です。

 「桃栗三年柿八年」ということばがありますよね。何事も成熟するまでは、それ相当の年数が必要であるということのたとえです。野菜は長くても半年から一年あれば、収穫が期待できますが、最初の出来ばえはともかく、ゆっくりと気長においしい野菜を食べられる日を夢見て、農作業を楽しみたいと思っています。

 目先の成果ばかりにとらわれることなく、じっくりと何年か先を見つめて、それまでの時間を上手に使いこなせるようにしたいですね。
               <<え837み>>
 ちなみに、じゃがいもと玉ねぎの旬ですが、じゃがいもは夏のものと秋から冬のものがあります。我が家の畑で、今すくすくと芽が伸びています。玉ねぎの旬は春ですね。十一月に入ったら、苗を植えつけるつもりです。


■■「ねえ、知ってる?」(はつこ/そうよ先生)
 「知ってる?ママ。」
きたきた。学校で、塾で、習ってきた知識を披露したがるときの娘の発言。お迎えに行って、開口一番にこれを言ってくれると
「今日は楽しい学びが出来たんだな。」
と、私はうれしくなります。
「しめすへんって神様に関係ある漢字が多いんだよ。『神社』でしょ、『祈る』とか、『礼拝』とか!ねえ、知ってた?ママ。」
う〜ん、ちっとも知りませんでした。この問答、実は娘と私の楽しいミニバトル?!でもあるのですが、今回に関しては完敗です。
「しめすへんはカタカナのネに似ているね。そこにちょぼをつけると,ころもへんになるね。」
負け惜しみにもならないことしか言いかえせません。トホホ・・・
<<え574み>>

 そこで思い出したのが、子どもにと思って買っておいた『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(白川静監修、小山鉄郎編、共同通信社)という本。先年亡くなられた漢字学の大家、白川静先生の漢字についてのお話が、小学生にも理解しやすいように書かれています。子どもにこの本を紹介する絶好のチャンス!さっそく一緒に読んでみました。ありがたいことに、話題になったしめすへんの「『示』をめぐる漢字」という項目が見つかりました。

 「『示』も「ネ(示)』(しめすへん)などの漢字でたくさん使われる字形です。この『示』は、神を祭るときのテーブルの形なのです。」
なるほど、「示」の字の横線がテーブル台にみえますね。下の方はテーブルの足にみえますね。しめすへんが神様に関係があるのは、このへんのもともとの形からくることがわかりました。みんなは知ってた?
<<え576み>>

 「もともと」を知るってとっても楽しいよね。さっきのように、「しめすへんは神事のためのテーブルだ」と分かれば、「祭」「際」「祝」「祖」も同じグループだと納得できますね。でもさらに楽しいのが、人に得た知識を教えて「そうなんだ。」と言ってもらうことではないでしょうか。何かが分かったときって感動的ですよね。この気持ちを他の人と共有できるとさらに幸せになりますね。そして幸せな気持ちって忘れないんですよね。

 こんなかんじで私の子供は最近「ねえ、知ってる?」の発言が増えてきたのですが、同時に一頃なりをひそめていた「なんで?」という問いもまた増えてきました。
 みなさんは今、どんなときにあるのかしら。「なぜ?」の時ですか?それとも「ねえ、知ってる?」の時ですか?それとも「ねえ、知ってる?でもなんで?」の時ですか?大人って答えられないと、実はけっこうくやしいんだけど、でもそうやって子どもに負けるのがちょっと楽しくもあるんですよ。
<<え110み>>

 「ねえ、ママこれ知ってる?」
ほらまた始まりました。喜んで負けるとしましょう。



   <<え602み>>


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