言葉の森新聞2004年8月3週号 通算第851号
文責 中根克明(森川林)

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■■上手な文章の型を身につける
 戦後の教育は、自分で考えて工夫するということに重点を置いたために、模範となる型を身につける面がおろそかになりました。創造や個性は大切ですが、それらが発揮できるのは、安定した土台があるからこそだということが忘れられていたのです。
 これは勉強だけでなくしつけでも同様です。朝起きたらあいさつをする、返事は「はい」と言う、人をいじめない、などは、どうしてそうするのかを考えさせる以前にまず形として身につけさせる生活習慣です。ところが、自由や個性を大事にする人は、往々にして、これらの基本も個人が自主的に考える問題としてしまうところがあるのです。
 さて、勉強の話に戻ると、最も能率のよい勉強の仕方は、すぐに答えを見ることです。これは、算数・数学ではよく言われていることですが、国語の問題についても同様です。もっと極端に言えば、問題集に先に答えを書き込んでおき、問題と答えを続けて読みながら理解していくことです。このやり方は、小学校低中学年では難しいかもしれませんが、勉強の目的を理解している中学生や高校生では効果的です。
 また、勉強の当面の目的は受験勉強ですから、最良の問題集は、自分が受験する学校の過去問です。高校生の場合は、志望校の過去問を最後の仕上げに使うのではなく、受験勉強のスタートのときに先に全部答えを書き込んで読むという使い方をするといいと思います。
 話を作文に当てはめると、最もよい文章の勉強の仕方は、模範となる文章を繰り返し読むことです。自分が書いたものを推敲するという文章上達の方法もありますが、それは基本が既に身についてからの話です。小学生のうちは推敲するよりもまず、いい文章を繰り返し読んでそのリズム感を自分のものにしていくことが大切です。
 言葉の森の自習の中心は、長文音読です。毎日、長文音読をしていると、長文を部分的に暗唱してしまう生徒も出てきます。暗唱できるぐらいまでに読み込んでいくと、自分が文章を書くときにも、文章の流れがスムーズになります。
 逆に最も悪い文章の勉強の仕方は(笑)、欠点を直そうとすることです。欠点を直して上手な文章が書けるであれば、日本中の子供たちはみんなすぐに文章が上手になっているでしょう。これは健康と病気の関係に似ています。病気を治せば健康になるとしたら、こんなに病院が繁盛しているのですから、日本人はみんな健康になっているはずです。しかし、病院はますます繁盛しています。
 欠点を直すのではなく、上手な文章を身につけることによって自然に欠点のない文章を書くようにするというのが理想の勉強スタイルです。欠点を直すことが意味を持つのは、文章の土台ができてからです。


■■長文の漢字文化
 漢字を読む力と漢字を書く力は、全く違うものです。
 読む力は読書によって育ちます。書く力は、書き取りの練習をしなければ身につきません。ただし、読みなれている子は、書き方を覚えるのも早いという関連はあります。
 漢字の読みは、文章の中で覚えるのがいちばん無理がありません。英単語のように漢字の読みだけを独自に練習するとしたら、その勉強は苦痛ですから、かえって量をこなせません。長文音読や読書の中で覚えていくのが最も自然です。その際、漢字の意味がわかる必要は必ずしもありません。文章の流れの中でつっかえずに読むことができればいいと割り切って考えると気が楽です。
 この漢字の読みで大事なのは、大人の姿勢です。子供が、「こんな漢字習っていないから難しくて読めない」と泣き言を言ったときに、それを認めていては、小学1年生では小学1年生用に書かれた文章しか読めず、小学2年生では小学2年生用に書かれた文章しか読めないことになってしまいます。世の中にある漢字は、学年別に使われているのではなく漢字文化としてトータルに使われています。漢字を身につけるのは、国語の勉強に漢字があるからではなく、日本の現在の社会が漢字文化の中で生きることを要求するからなのです。
 しかし、今の常用漢字で言えば、覚えなければならない漢字は約2000字です。日本の学校教育では、このわずか2000字の漢字を学年に割り振り、1年間に200字ぐらいずつを細切れに教えていますが、これは一見よさそうに見えますが、実はよくないやり方です。漢字の読みに関しては、小学生のできるだけ早い時期に2000字全部を一通り読みだけはできるようにしておいた方がいいのです。
 大人が、漢字は文化として覚えるものだという姿勢でいると、子供も自然にそういう気持ちになり、長文にまだ習っていない難しい漢字が出てきても、抵抗なく読むようになります。
 長文集は、それほどたくさんのページではありません。3ヶ月読んでいれば、どんなに難しい漢字が出てきてもやがて読みなれてきます。最初に難しいと思ったものほど、あとになってそれが楽にできたときに達成感があると考えて読んでいってください。


■■バノ2世
 言葉の森のペット、オカメインコのコトとバノの話をずっと以前、言葉の森新聞に書きました。
http://www.mori7.com/mori/komori2001/m010904.html
 そのバノが昨年の台風の日に遊びに行ったきり帰ってきません。
 先日、近くのペットショップに行くと、バノにそっくりのオカメインコのヒナがいたので、つい買ってしまいました。バノ2世です。まだヒナなので、朝昼晩と人間がえさをやらないと食べられません。家と教室の行き来には、上空のカラスに注意しながら(笑)手に乗せてつれてきます。
 今度のバノは、たぶんメスなので、今いるコトとの間に子供が生まれると思います。子供の名前は、モリにする予定です。続けて呼ぶと、「コト、バノ、モリ」となります。
 目標は、ハトのように、毎朝自由に空を散歩させて、夕方は自分から家に帰ってくるような鳥にすることです。


■■「できる自分」をイメージする(くじら/たま先生)
 先月末、ふとしたきっかけから、ある講演会の司会をすることになりました。もちろん、生まれて初めての経験でしたし、「マイクを持って人前に立つなんて、私にそんなことできるわけがない」と思っていました。しかし、後には引けなくなり、考えを変えました。「もしかして一生に一度の経験かもしれない。自分を崖っぷちにおいて、どこまでできるか試してみよう」と・・・。
 それから原稿をつくり何度か練習をして、本番前日、数人の知人の前でリハーサルをしました。それまでは、何とかなるという思いもあったのですが・・・結果はひどいものでした。ほとんど全部に「ダメ出し」されて、しかも立ち方、喋り方にも注意されてしまいました(笑)。これには本当に落ち込みましたが、できない部分が分かればこっちのものと、単純な私はすぐに気持ちを切り替えて、今度はイメージトレーニングに走りました。とにかく「絶対にうまくいく」ということだけを考えて、本番に臨みました。
 私がやったイメージトレーニングは、どのようなものだったか? とても簡単なことなのですが、司会が上手な人=アナウンサーを思い浮かべたのです。テレビで見るアナウンサーは、どんなふうか? 目線はどこに向けるか? 話し方は? とにかくゆっくりと、目の前の人に訴えかけるように、そして相手を和ませる笑顔も必要だと、頭に描きながら原稿を読む練習をしました。
 本番では、「アナウンサーになった私」をイメージし、「私は絶対にできる」と信じていました(本当に単純です)。すると自分でも信じられないくらい落ちついて話すことができました。そして講演会終了後、知人に感想を聞くと「すごくよかった!」、「落ちついて堂々としていた」、「昨日とは別人のようだ」と、皆が絶賛してくれました。(リハーサルではかなりひどかったのだと、恥ずかしくなりましたが。)はっきり言ってここまでできるとは思わなかったので、大満足! 自分に自信が持てました。
 人は誰でも「得手・不得手」がありますが、できないと思っていることにあえてチャレンジすることも必要ではないでしょうか。できないといって避けて通ることは簡単ですが、そこには進歩がありません。「できる自分」をイメージして、苦手なことにも立ち向かう勇気を持ってください。結果は必ずついてくると、私は信じています。

<<え322み>>
 七夕の夜、子どもたちと一緒に、笹に飾りをつけ、短冊に願い事を書いてみました。みなさんはどんな願い事をしたのでしょうか・・・。
 月に行けるようになった今の時代にも、星空へのあこがれや夢は、いつまでも失いたくないですね。
<<え2004/541み>>


■■ネタの話(ペンギン/いのろ先生)
<<えa/685み>><<え2004/384み>><<え6482み>>
<<え2004/434み>>「なんでだろう〜なんでだろう! ななななんでだろう♪」
 ちょっと古いけれど、はやっていたのでみんなも知っているかな? テツ&トモの「なんでだろう」です。先生は、お笑い芸人(おわらいげいにん)が大好き。なぜかというと、とても真面目(まじめ)だからです。
 え? お笑い芸人が真面目だというのはおかしいっですって?\(^v^) 先生も以前(いぜん)はそう思っていました。でも、よく知れば知るほど、
「人を笑(わら)わすのには、たくさんの努力(どりょく)がいるのだなぁ。」
と、感心(かんしん)させられるのです。
 たとえば、この「なんでだろう」にしても、その時の思いつきで言っているのではないのですね。お笑い芸人さんたちは、普段(ふだん)の生活の中で、人を笑わせる「ネタ・話のモトとなるもの」をあらかじめ用意する努力(どりょく)をしているのです。そして本番(ほんばん)では、人を見事(みごと)に爆笑(ばくしょう)させます。すごいと思いませんか?「あらかじめ用意する」、ここが大事(だいじ)です。

<<え2004/436み>>実(じつ)は、作文を書く私たちも、お笑い芸人といっしょです。(笑) つまり、「ネタ」が大切(たいせつ)なのですね。この場合(ばあい)の「ネタ」とは、「書きたいこと」です。「ネタ」がたっぷりあると、すらすらと鉛筆(えんぴつ)が走ります。心にゆとりが持(も)てます。
 では、そういう「書きたいこと」を集める方法(ほうほう)はあるのでしょうか? もちろんあります。(^o^)/ 驚(おどろ)くことに、コツは、たった1つだけ。それは、「ネタはどこにあるかな?」と「思う」だけ、です! びっくりでしょう? なぜなら、皆さんのまわりはネタがごろごろしているからです。
 目にうつるもの、耳から聞こえる音、おやつを食べながらのおしゃべり……。そこにこそ、「ネタ」があるのです。また、ほっとしたり、笑いたくなったり、好きだなと思いたくなったりする物事(ものごと)の中に、「話のモト」が「ある」のです。ただ、思い、見つめ、これを書こう! と、皆さんが決心(けっしん)するだけ。簡単(かんたん)でしょう?

<<え2004/435み>>7月は夏休みが待っていますね。たくさんの大きな、小さなおもしろい出来事(できごと)がありそうです。もし、ノートが余(あま)っていたら、自分だけのネタ・ノートを作ってメモしておいてもいいですね。短(みじか)い日記(にっき)のように、後から読めるので便利(べんり)ですよ。
 最後に、夏は楽しい出来事もありますが、キケンもいっぱい。どうか注意(ちゅうい)して、安全(あんぜん)に夏休みを過ごしてくださいね。では、また電話で話せるのを楽しみにしています! 
<<えa/2311み>>


■■どんどん発表しよう(ねこバス/なおこ先生)
 先生には、なかなか意見を発表する機会がありませんでした。小学校から高校くらいまでは、ぼんやりしていて意見といえるようなものがなかったのです。(みなさんの方がはるかに優秀だと、いつも感心しています。)大学に入ってから論文を書く練習をしましたが、会社で働きはじめてからは、女性が意見をいうことはまったく期待されていませんでした。かなり昔の話です。(笑)

 そんな先生にも意見を言わせてくれる人たちがあらわれました。同じマンションに住んでいてマンションの修繕(しゅうぜん)工事を計画する委員の人たちです。その人たちは、「女性はお茶をいれろ!」と言わずに対等に意見をたたかわせてくれました。こうしてこのマンションは、かなり古いのにまるで新築のように立派に生まれ変わりました。

 そして、この工事はほとんど前例がないので、六月に国土交通省が発表した「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」にたくさん写真をのせてもらうことになりました。これは、マンションの修繕工事に関係する人たちのお手本ともなる内容のものです。その話を聞いたとき、わくわくして眠れないくらいうれしい気持ちになりました。

 「えっ〜、ほんとなの?」という声が聞こえてきそうですね。本当かどうかは、自分で確かめてみてください。自分が「絶対に正しい!」と思うことがあったら、意見を発表し続けることです。いろいろたいへんなこともあります。このとき、勉強したことや作文を書いたことが役にたつことがわかるはずです。そしてまわりの人が「なるほど、そうか。」と思ってくれることが多くなったら、夢はどんどん現実になっていきます。

 みなさんは、いろいろな機会にたくさん発表して、夢をかたちにできる人になってください!試験があったらたくさん勉強してください。たくさん勉強したり、たくさん発表するほど、実現できる夢のサイズが大きくなるはずです。

☆ ホームページを作りました。「2・3回目大規模修繕のためのマンション再生ノウハウ集」です。
http://homepage3.nifty.com/mansion-saisei/index.html
写真が中心なので、おもしろいですよ。
<<え321み>>


■■文章を書くときに(スズラン/おだ先生)
そろそろ夏休みですね。楽しいことがいっぱい待っていることでしょうが、受験生のいむまくんは目標に向かってのスケジュールが決まっていることでしょう。
夏休みになりますし、作文を書く時間をいつもより落ち着いてとれるかなと思い、そこで、今月は文章を書くときに少し注意しておくと、同じ内容でも読み手に伝わりやすくなる書き方を考えてみました。
二つの工夫を挙げてみました。
1)書き出しと終わりの工夫をしましょう。
 言葉の森では書き出しの工夫という勉強をしていますが、この書き出しが案外難しいですね。書き出しの文を読むことで、次ぎに続く内容がどうなっていくのか読み手が興味を持つ文になれば工夫が生きてきますね。そのためには、会話、音、情景のようすをずばりと書いて決めてみましょう。そうすることで、これから何が始まるのか興味が出てきます。それだけに、書き出しは難しいのですが、これが決まると、その文のだいたいの出来具合が決まってきそうです。
 そして、終わりが大切になるということは、いよいよこれで終わりというところで余韻を残す余裕のようなものが感じられれば文章の内容が強く印象付けられることになりそうです。
 ある人がたとえて言っているのですが、お習字で「一」の字を書くときに、着筆のところに力を入れる、そのあとに少し力を抜いておき、いよいよここで終わりという所へ来たときにまた力を入れゆっくり筆を離す、これで上手な「一」が書けるという表現が当てはまっているようです。
 言葉の森では、書き出しに使った情景や考えに戻って結びの文にしておくことを勉強しますので、こういうことを心掛けて文を書いてみると、同じ内容でも良い文になっていくということになりそうです。どんなふうに書いてよいのか分からないことが多いのですが、そのためには名文といわれる本を読むことがいいようです。

2)段落をつける工夫をしましょう。
 昔の日本の文章には段落をつけませんでした。源氏物語をはじめ巻紙の手紙には段落がありません。新聞も昔は段落がはっきりしていなかったそうです。ではどうして段落をつけることになってきたのでしょう。これはどうやら、外国の文(英文ははっきり段落がありますね)が入ってきた明治の頃からということらしいのですが、段落がついていたほうが読みやすいですね。
 言葉の森では4年生ごろの教材から「段落」を勉強します。段落はこうしなければならないという絶対的な決まりはありませんが、だいたいの目安として、一段落は200字から300字の長さが標準のようです。「。」のついた文が三つぐらいで一つの段落でしょうか。どんなふうに段落をつけるのか慣れないときや構成を考えるとき、書きたいことを箇条書きにだしてみる、その一つ一つを一つの段落で言い切れるかどうか考える、一つでは無理なときは二つまたは三つぐらいにしてみる、という構成で文章ができあがっていきそうです。
 段落と段落の間の内容は少し変化したものにし、改行して一字さげて書き始めることを心掛けると読みやすい、内容の展開がはっきりした文になりそうです。

 夏休みが始まる頃ですが、いままで時間がなくて読めなかった本を読んだり、家のお手伝いをしたり、あきるほど勉強をしたり(暑いので無理?)、普段できない遊びの時間を持ったりできるのが夏休みですから、「いい夏休みだったなあ」と思えるような時間の使い方をして過ごしましょう。


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