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暗唱の仕方


暗唱の意義


子「どうして、暗唱するの」
母「あーん、しょれはね」
^_^「……」

自分の音読した声が耳に入ると、

脳が、「これはのどと耳の両方から来ているから大事な言葉だ」と思う。

だから自分の言っていないことは、右から左に抜けることも多い。
母「勉強してるの?」

同じ言葉をくりかえしていると、言葉がイメージとなって脳の金庫に保管される。

しかも、イメージは、いくらつめこんでも大丈夫。
「パクパク」

母「そして、脳が丈夫になるのよ」
子「そうなのう」

●暗唱のコツ

 暗唱のコツは、ただ回数をくりかえして音読することだけです。
 最初は正確に読み、慣れてきたら、できるだけ早口で滑らかに音読した方が早く暗唱できるようになります。
 暗唱をする時間を、朝ご飯前の10分間などと毎日ほぼ確実にできる時間帯に決めておきましょう。
 暗唱は覚えることが目的ではありません。文章を自分の体の一部となるようにすることが目的です。歌を歌う練習をするつもりで暗唱していきましょう。
 課題フォルダの最後の方に、それぞれの月ごとの暗唱用長文が載っています。

■ 暗唱すると

●1、頭がよくなる

 思考力の骨組みとなる語彙や考え方が自分のものになるからです。

●2、作文がうまくなる

 語彙や文のリズム感などの表現力が自分のものになるからです。

●3、勉強ができるようになる

 複雑なものを覚えることが苦にならなくなるからです。

■ 暗唱の成果はどんなところに

●江戸時代の寺子屋教育の基本は暗唱

 寺子屋教育の基本は、百字の文章を百回読むことでした。この勉強法によって日本は当時世界一の識字率を達成していました。
(江戸時代の日本の識字率70?80%、同時代のヨーロッパの先進国の識字率20?30%)

●ノーベル賞の湯川秀樹も小1から暗唱

 湯川秀樹と3人の兄弟は、それぞれ5、6歳から四書五経の素読をさせられました。そして、全員が学者になりました。
 そのときの勉強法は、論語を漢字のまま意味もわからないまま音読し暗唱するという方法でした。
(芳樹(兄、冶金学者、東大教授)、茂樹(兄、歴史学者、京大教授)、環樹(弟、中国文学者、京大名誉教授))
 しかし、湯川秀樹は後年、素読は役に立ったが、読めないし意味も分からない文章を読むのは苦痛だったと述べています。

●暗唱を生かした著名人

 暗唱を自分の実際の勉強に生かした著名人には次のような人がいます。

□貝原益軒(1630-1714)……81歳のときに著した「和俗童子訓」で四書五経を毎日百字百回暗唱するという勉強法を提唱しました。益軒の影響は日本全国々に及び、江戸時代の日本の教育の大きな方向を決定しました。暗唱は子供だけでなく、大人にとっても価値があると述べています。

□塙保己一(1746-1821)……盲目でありながら当時日本全国に散らばっていた600冊以上の学術書を編纂するという偉業を成し遂げました。その伝記は、ヘレン・ケラーにも大きな影響を与えました。18歳のとき般若心経を毎日100回1000日間暗唱するという誓いを立て実行しました。また、晩年まで折に触れて暗唱をしていました。

□シュリーマン(1822-1890)……独学で十ヶ国語以上をマスターしトロイアの都を発掘しました。そのときの勉強法が、外国語を辞書にも文法書にも頼らず大声で音読し暗唱するという方法でした。生まれつき弱かった記憶力が、この勉強法で改善したと述べています。

□本多静六(1866-1952)……林学博士。暗唱の勉強法で東京農林学校(今の東大農学部)を首席で卒業しミュンヘン大学経済学博士号を取得しました。大学1年生のとき数学で赤点を取りましたが、一念発起し数学も丸ごと暗唱するという方法で学年トップになりました。子供時代、家の仕事を手伝いながら文章を暗唱するという勉強法をしていました。大学には作文の点数がよくて合格できたと述べています。

□野口悠紀雄(1940-)……経済学者。自身の中学高校時代の経験から英語の勉強法として音読暗唱を提唱しています。高校時代、英語は教科書をただ音読するだけで好成績を維持し東大工学部に合格しました。しかし、そのように単純な方法なのに実践する人が少ないと述べています。


■ 暗唱の例
●長文の見本



●1週目の読み方

 文の出だしにという番号がふってあります。
 1週間7日間、長文の暗唱をする場合、が1日目の100字、が2日めの100字、が3日目の100字です。
 そして、4日目、5日目、6日目、7日目は、の300字を通して暗唱します。

●2週目、3週目、4週目の読み方

 同じようにして、2週目は、を暗唱します。3週目は、を暗唱します。
 そして、4週目は、の900字を通して暗唱します。から先は暗唱しません。

●まず1週目の1日目

 の100字を30回音読します。


●紙を折って数える暗唱法

 紙を折って数えるおt、30回の音読がやりやすくなります。
 A4サイズの紙を次のように切ります。


●30回読むとき

 1日目の4分の1のサイズの紙を図のように折って、1回目の暗唱に使います。
 100字の暗唱用は、長い方の紙を縦に谷折に二つに折る。そのあと上から山折りに折る。
 1センチぐらいに折っていく。
 15回ぐらいで全部折りたためる。
 100字を1回読むたびに1回ずつ開いていく。
 全部開いたら15回読んだことになる。これで約5分。
 続けて読みながら、今度は折りたたんでいく。
 全部折りたたんだら、30回読んだことになる。これで約10分。これを大枝と呼ぶ。
 3日間3本の大枝をY字型に組み合わせて暗唱の木を作る。

●1週目の2日目、3日目

 2日目にはの長文を同じように30回音読します。3日目にはの長文を同じように30回音読します。
 

●1週目の4日目

 4日目には、の300字を通して10回暗唱します。


●10回読むとき

 300字を読むときには、4日目の16分の1のサイズの紙を図のように折って数えます。
 4日目からは、300字暗唱用の小さい方の紙を折る。
 1センチぐらいに折っていく。
 5回ぐらいで全部折りたためる。
 300字を1回読むたびに1回ずつ開いていく。
 全部開いたら5回読んだことになる。これで約5分。
 続けて読みながら、今度は折りたたんでいく。
 全部折りたたんだら、300字を10回読んだことになる。これで約10分。これを小枝と呼ぶ。
 4日間4本の小枝を、大枝の先にY字型にさす。
 1週間で暗唱の木が1本できる。

●2週目、3週目の暗唱

 1週目にの300字を暗唱できるようにしたあと、2週目には、同じようにを暗唱します。
 そのとき、はもう暗唱しません。
 3週目には、同じようにを暗唱します。そのとき、はもう暗唱しません。
 いずれも、300字がすらすら暗唱できるようになったら、イメージ化で出だしの言葉を覚えておきましょう。

●4週目の暗唱

 4週目には、の全部で900字を通して毎日4回暗唱します。
 4回読むときは、指を折って数えます。
 4回読んだら、暗唱の木を2本ほどきます。(そうすると、また次の月に使えます)

暗唱フォンの作り方

 教室で一斉に暗唱するときや、狭い家で兄弟一緒に暗唱するとき、大きい声は出せないが、自分の声はしっかり聴きたいということがよくあります。
 暗唱の仕方の中には、聴いて覚える方法もあります。高速聴読がその方法ですが、人によっては聴くだけでは覚えにくいようです。耳栓をして周囲の雑音が入らないようにしながら、内耳で聴く方法もあります。しかし、これも人によっては覚えにくいようです。
 一方、先人の例を見てみると、シュリーマン、本多静六、貝原益軒、湯川秀樹など、みんな声を出して暗唱する方法でした。人間は、いったん自分の声として出した言葉を、聴くときにも言葉として認識します。声を出すことによって二重にその言葉が自分のものになるのです。

●暗唱フォンシングル型
A4の紙を1枚用意します。
1枚を二つに折ります。
二つに折った線を基準に三つに折ります。
裏返してまた三つに折ります。
片側の端を箱を作るように折り立ててホッチキスで止めます。
両側の端を同じように止めて長い箱を作ります。
箱の真ん中あたりを折って120度ぐらいの角度にしてホッチキスで止めてできあがり。
 

●思考力を育てる暗唱
 記憶や反復や音読や暗唱が、理解や思考と相反するという考えを持つ人がいます。例えば、丸暗記という言葉には、自分で考えない、表面的な知識だけ、というニュアンスがあります。暗唱も、この丸暗記と同じようなものだと考えている人もいます。
 しかし、記憶が、思考に対して弊害になるのは、その記憶が徹底していないときです。つまり生兵法の記憶、一夜漬けの記憶のときに記憶が弊害になるのです。消化され自分のものになった記憶は、思考を深める役割があります。
 例えば、九九というものを考えてみるとわかるように、ほとんどの人は、九九を消化しているので記憶による弊害というものを感じません。しかし、九九を覚えかけているときは、九九を使うことによって実感よりも劣る面が出ていたこともあったのです。

お菓子を分ける (九九もうろ覚えのときは、体験のブレーキとなることがあります)

 同様に、言葉も、覚えかけのときの言葉は、実感よりも劣る面があります。未消化の言葉によって、体験がかえって浅くなる時期があるのです。しかし、言葉が消化されたあとは、体験は言葉によって深くなります。
 暗唱は、言葉による物の見方感じ方考え方を蓄積することです。
 しかしもちろん、暗唱以外にも、言葉を蓄積する方法はあります。例えば、たくさんの話を聞くこと、たくさんの本を読むことです。多くの話を聞いたり多くの本を読んだりすることによって同じ文章に触れる機会を増やすことができます。つまり、同じ文章や同じ文脈に何度も触れることによって、理解するための言葉が表現するための言葉になっていくのです。
 この表現語彙と理解語彙には、大きな違いがあります。例えば、英語を読む力を10とすると、ほとんどの人の英語を書く力は1程度のはずです。誰でも名作を読んで感動することができますが、同じような名作を書ける人はほとんどいません。理解語彙のレベルと表現語彙のレベルは大きく異なるのです。
 消化された表現語彙を蓄積する方法として、日本人は暗唱というやり方があることを知っていました。九九、百人一首、いろはガルタ、素読などは、日本人が開発した教育の方法でした。
 しかし、この百人一首などに見られるような記憶反復の伝統は、戦後急速に失われ、それまでの記憶や反復の学習に取って代わったものは理解と思考の教育でした。ところが、理解と思考の教育は、一斉指導と結びついていたために教える側の負担が大きく基礎学力の低下を生み出しました。その学力低下を補うものとして、公文式や百ます計算のような記憶反復の方法が登場したのです。しかし、新しい記憶反復の方法は歴史が浅かったために、その方法が万能であるかのような行き過ぎも生み出しました。
 この記憶反復の方法と理解思考の方法を統合するのが、読書、作文、暗唱を結びつけた学習です。
 暗唱の本当の目的は、記憶ではありません。勉強を進めるための目安として覚えることを目標にしていますが、覚えることそのものは決して重要なことではありません。記憶力を高めることや記憶量を増やすことは、暗唱の副産物にすぎません。
 この記憶の副産物に関して、世間では、暗記や暗唱を役立つ知識や文化的な伝統に結びつけようとする傾向があります。例えば、「○○の首都は□□」というような知識を増やすような暗記や、平家物語や枕草子の一部を覚えるような暗唱です。
 暗唱を表現語彙として役立てようとするのであれば、自分がこれから書く作文に結びつくような現代文の事実文、説明文、意見文を中心に暗唱していく必要があります。
 暗唱の真の目的は、反復練習によって物事を把握する力をつけることです。塙保己一が般若心経約300字を毎日100回ずつ1000日間暗唱し、しかも晩年にいたるまで折に触れて暗唱を続けたということを見てもわかるように、宗教的な面を抜きにすれば、これは決して単なる記憶の練習だったのではありません。将来この暗唱の仕組みが脳科学的に解明されるようになると思いますが、当面は暗唱の目的は、記憶よりも理解や思考の方にあると考えておくことが大事です。事実、大人の人が暗唱を始めると、記憶力がよくなるということよりも、発想が豊かになるという感覚を持つことが多いと思います。
 ただし、どの学習にもバランスは必要です。言語と経験の間にもバランスというものがあります。ルソーは、子供時代に本を読みすぎて自分が言語先行型の人間になったことへの反省から、自然教育の「エミール」を著しました。体験が伴わない時期に言語を吸収しすぎると、やはりバランスが崩れる場合があります。もちろん体験ばかり広がって言語が伴わない生活はあまり人間的とは言えませんが、言語が経験よりも大きくなることもやはり人間的な成長とは言えません。
 言葉の森の暗唱の自習は1日10分程度ですから、このようなアンバランスを生み出す心配はありませんが、日常生活の心がけとして、言語的な学習と並行して家の手伝いや自然との触れ合いなど経験の時間を増やしていくことは大事です。

さわやかな朝 (言葉は体験の内容を豊かにしますが、体験が不足していると言葉が先行してしまうこともあります)

●暗唱に関するQ&A

 学校での音読の宿題と重なるので、子供が嫌がってしまいます。
 学校の宿題は夕方の家庭学習の時間にやり、言葉の森の自習は早朝にやるようにしてください。時間が離れていれば負担に感じません。
 低学年なので、100字でも読むのにすごく時間がかかります。
 時間はかかってもかまいません。気長に決めた回数だけ音読してください。
 決められた回数まで音読しても覚えられません。
 覚えることが目的ではありません。決められた回数だけ音読できればそれでよしとしてください。
 「している」を「してる」などと間違って自分なりに読んでいます。
 注意のしすぎにならない程度に、ときどき正しい読み方を教えてあげてください。
 声を出さずに読んでいます。
 声を出した方が頭に残りやすいと教えてあげてください。自分にだけ聞こえる小さい声でかまいません。
 ふざけて早口で読んでいます。
 ふざけるのも早口も一向にかまいません。楽しく読んでください。
 子供にとって意味がわからない難しい言葉があります。
 何度も読んでいるうちに子供自身から質問が出てきますから、そのときはお父さんやお母さんが手短に教えてあげてください。自分で辞書を引いて調べさせるという考え方もありますが、暗唱の定着を目的としているときはできるだけほかの作業はさせない方が続けやすくなります。
 つっかえながら読むので、とても近くで聞いていられません。
 そういうときこそ、読み終えたときに、「じょうずに読めるようになってきたね」と褒めてあげてください。
 数回読むと簡単に覚えてしまうので、それ以上続けて読む気になりません。
 覚えることが目的ではありません。スポーツの準備運動で行うランニングと同じものでくりかえすことで体力がついてきます。
 長いので、とても覚えられるようになるという気がしません。
 歌を覚えるのと同じです。かなり長い歌詞でも歌なら自然に覚えてしまいます。
 暗記よりも考える力が大事だと聞いたことがあります。
 弊害があるのは、中途半端な暗記や低レベルの暗記です。本格的な暗唱は考える力を高めます。
 暗唱だけして、課題の長文の音読をしていません。
 できれば、毎週の課題の長文を中心に長文を1編音読し、そのあと暗唱の長文で暗唱をしてください。しかし、両方できない場合は、とりあえず暗唱だけをしっかりできるようにしてください。
 録音したものを聴く形で、暗唱の代わりになりますか。
 ある程度はなります。しかし、録音には機器や準備が必要ですが、音読には不要です。また、自分で声に出したものの方が定着しやすくなります。
 1日のうちに朝、昼、晩と何回も暗唱をして、先に進みたいのですが。
 いい心がけです。どんどんやってください。ただし、何かを新しく始めたとき子供は飛ばしすぎる傾向がありますから、親の方でコントロールしてあげてください。
 英語や社会や古文で暗唱の宿題がありますが、同じようにできますか。
 同じやり方で簡単にできます。
 寝る前に覚えた方が記憶に残ると聞きましたが。
 寝る前に覚えた方が定着します。しかし、大事なのは毎日の継続です。生活の中で毎日確保できる時間帯でやってください。その意味で朝食前の時間帯をすすめています。
 文章が長くなると、最初に覚えたものを忘れてしまいます。
 イメージ記憶を使えば忘れにくくなります。
 1回覚えた900字の文章は、ずっと覚えていた方がいいのですか。
 自分の好きな文章であればそうしてください。しかし、普通は、次の900字の文章を覚えるときは、前の文章はもう忘れてかまいません。
 暗唱を親の私もやってみたいのですが。
 大人では、更に発想が豊かになるという効果があります。しかし、子供と一緒に始めると親が先に挫折したときに説得力がなくなりますから、続けられる自信がつくまではひとりでやってください。


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