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  新しい3枚住所シールについて
  最強の教材、入試問題
  「なぜだろう」(みち/みち先生)
  心動くもの(ふじのみや/ふじ先生)
  生きようとする力(うさぎ/きら先生)
 
言葉の森新聞 2007年2月3週号 通算第971号

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森新聞
新しい3枚住所シールについて
 今学期から、住所シールが3枚に分かれるようになりました。これまでは1枚のシールでしたので、これまでのシールを貼りなれた方には、貼りにくいと思います。
 将来は、項目シールと住所シールを合体させたようなシールにしたいと思っていますが、今のところ、項目用のシール半枚と住所用のシールを半枚送る形は無駄が多いので、やむをえず現在のような形になっています。
 それぞれ半分に切ったものを送るということもできなくはありませんが、人間の手作業が入るとミスが必ず生じるので、事務処理に関しては人間の手作業は極力入れない方針です。
 したがって、しばらくは住所シールが貼りにくいことと思いますが、ご理解ください。次の次の学期からの封筒用紙は、3枚シールに対応したものとなりますので、小さいお子様でも貼りやすくなると思います。
最強の教材、入試問題
 どういう問題集や参考書がいいのですか、という質問を受けることがあります。実は、どの問題集や参考書よりも価値のあるものは、入試問題そのものです。
 なぜかと言えば、入試に合格することを目標としているのであれば、入試問題以上に優れた教材はないからです。現在は情報量が多いので、こういう当たり前のことが忘れられがちです。
 国語の勉強にいちばんよい教材は、全国の昨年の国語の入試問題です。国語という科目はその時代を反映した内容の文章が載るので、最近の入試問題の方が役に立ちます。問題集や参考書に収録された形になっている入試問題は、古いものが多いので、教材としては昨年の入試問題よりも劣ります。
 これは、ほかの教科についても同様です。高校2年生の今からの勉強の基本は、当然全教科の入試問題です。春休み中に、志望校の過去問を答えを書き込みながら解いてみてください。高校2年生のうちから問題を自力で解くというのはまだ負担が大きいので、答えを最初に書き込んで、それを見ながら解いていくのです。1年間分の過去問をこのように解いて(読んで)みると、自分がこれから勉強していく方向がはっきりとしてきます。これが、勉強の基本戦略です。
 このことを、毎年同じように、高校2年生の人に言っていますが、みんな、なるほどと納得した顔をするだけで、実際に過去問を解く人はほとんどいません。その理由は、まだ早いから解けない、できないのが怖い、もったいないから最後までとっておく、などです。たぶん、全国の高校生のほとんどが、そういう考え方だと思います。ですから、高校2年生の春休みに過去問を解いてみる人は、それだけでかなり有利なスタートを切ることができます。
 これは、中学生でも小学生でも同じです。中学受験の塾によっては、受験直前に過去問を解かせて、合否の可能性を見るというところがあります。そのために、早めに過去問を解かないように指導しています。これも一つの方法ですが、私が親だったら、まず最初に過去問を解く勉強をさせます。
 塾や予備校の勉強は手段です。何の手段かと言えば、入試に合格するための手段です。合格という本当の目的をいつも考えながら勉強していってください。
 もちろん、勉強の目的は、入試に合格することではありません。自分自身を向上させることです。この大きな目的も忘れずに勉強を続けていってください。

                              
 
「なぜだろう」(みち/みち先生)
 新しい年がスタートしました。
みなさんが「毎日をこころ豊かにすごせますように」といのっています。
 毎日の生活の中で「なぜだろう」と関心をもつと、好奇心(こうきしん)が好奇心を生み、感動(かんどう)にふれ、想像力(そうぞうりょく)を元気にします。家庭で、またお友だちとの対話(たいわ)が、楽しくおもしろくなると思います。

 そのアイディアの一つとして、「なぜなぜ」を集めてみました。

日本という国の名はどうしてついたの?
アジアで一番先に日の出を迎(むか)える国。つまり「ひのもと」であるということから「日本」となったのです。

世界で一番初めに日付の変わる国は?
日付は日付変更線(ひづけへんこうせん)を境に変わります。日付変更線に一番近い、太平洋上に浮かぶトンガ王国が最初です。

鳥居(とりい)の鳥って、どんな鳥?
鶏(にわとり)のことです。やみを追い払い夜明けを告げる長鳴鳥(ながなきどり)です。明るい幸せな太陽を招く鶏が神様にふさわしい鳥と考えられたのです。

寒い時 なぜ 息は白く見える?
息の中の水蒸気が冷たい空気にふれ、水の粒となって見えるから。やかんの口から出る湯気が白いのも同じです。

寒いと なぜ からだがふるえるの?
からだが冷えると血液の循環(じゅんかん)も悪くなります。そうすると筋肉(きんにく)をはげしくふるわせて体を暖めるよう脳が命令するのです。

土俵(どひょう)で力士が向き合い手を広げるのはなぜ?
武器(ぶき)をもたないで、正々堂々と戦うことを示すため。両力士が向かい合って手を広げる。これを「ちりを切る」といいます。
 
高い山の上 太陽が近いのに なぜ 寒いの?
気温は、太陽の熱に暖められた空気の温度です。高い山の上は空気が薄く、暖められる空気が少ないから寒いのです。

木の葉は なぜ 広がる?
どの枝の葉っぱにも、光がたくさんあたるように広がるのです。一枚ずつ調べてみると、ほとんど重なりあっていないです。

眠いと なぜ あくびがでるの?
つかれた頭や体が、新しい空気をほしがり、自然に口が開いて、深く息を吸いこむのです。これが、あくびです。

コップに熱いお湯を入れると割れるのは なぜ?
お湯の熱でコップの内側がのび、外側とのバランスがくずれて割れるのです。厚手のコップのほうが割れやすいです。

白うさぎの眼はどうして赤いの?
うさぎの眼のおくにある血を運ぶ(血管)がすきとおって見えるから、うさぎの眼が赤く見えるのです。

床屋さんのマークは なぜ 赤、青、白?
昔、床屋さんは外科医のような仕事をしていたので、そのなごりで赤は動脈(どうみゃく)、青は静脈(じょうみゃく)、白は包帯を表わす世界共通のマークです。

虫歯の虫って何?
歯についた糖分(とうぶん)を細菌(さいきん)が分解し、酸をつくります。この酸が歯の表面(エナメル質)を溶(と)かします。これが虫歯です。

 日常生活を自然科学、社会科学の目で見ると、話題が多くなり楽しくなると思います。
 
心動くもの(ふじのみや/ふじ先生)
 2007年が始まりました。どんな一年がわたしたちを待っているでしょう。いや、待っているのではありません。自分で一瞬一瞬を重ねるうちに、作りあげていくのですね。

 月日のたつのは、早いもの。
 わたしが、この「言葉の森」と出会ってから、今年で9年目になります。
今では、テレビを視聴するのと同じような感覚で、インターネットの画面を立ち上げたり、メールを送ったりしていますが、9年前は、そうではありませんでした。
 使った時間に応じて、分刻みで料金が加算される。メールを送るときは、電話とつながっている線を抜いて、パソコンと差し替える。インターネットやメールを使っている間は、わが家の固定電話は不通になりました。でも、知らない世界が広がっているのがおもしろくて、不通でも構わず数時間もパソコンにつなぎっぱなしにして、家族に不評を買ったことも。懐かしい思い出です。

Dog Year という言葉を知っていますか?
犬は人間の約7倍の速さで成長し老いていくことから、特にIT業界などの時代の移り変わりの速さを言う。(「はてな」より)
私のパソコン歴は約10年ですから、70年を駆けぬけてきたことになるのかな?…なっていません(^_^;)。体の細胞が生きるために活動するのと同じようには、使い続けていないからです。仕事や他の人との関わりに応じて、必要なときに必要なだけ接するだけ。そういう使い方なので、技術の進歩に追いつけず、しょっちゅう「浦島太郎」状態になります。「これは新しいけれど、自分には必要がないから、知らなくてもいいよね」と、興味をストップさせることもあります。面白いものがあっても、見逃してしまっているかも? こんなことが重なると時代遅れになってしまう?

 しかし、インターネットの世界だけにしか、心が動くものがないというわけではありません。むしろ、実際に見たり考えたり、人に会ったり、歩き回ったりする。そのような心身に直接触れる体験があったときに、心は動くのです。(パソコンに向かって長時間を過ごしたあと、外に出て人と話をすると、ちょっとした世間話がすごく新鮮に感じられます!)
 大きな体験でなくてもいいのです。小さな体験から意味を見出すのは非常に大切なことです。進化し、広がり続ける人間社会では、そのような感性が、毎日の楽しみや幸せの実感につながるように思えます。

蜂はお花のなかに
お花はお庭のなかに
お庭は土塀のなかに
土塀は町のなかに
町は日本のなかに
日本は世界のなかに
世界は神様のなかに

そうして、そうして、神さまは、
小ちゃな蜂のなかに。         (蜂と神さま/金子みすず)

 時間に恵まれた学生であるみなさんには、たくさんのことを直接体験し、感じる時間を大切にしてほしいと思います。そこで得たことを、「自分の頭」でかみくだき、さらに、それを作文や小論文の題名に対する答えという形に置き換えて、他の人に伝えてみてください。

そして、インターネットを通じ生身の人間同士の活動・交流に生かし、心に残る2007年を作ることができるといいですね。
 
 
生きようとする力(うさぎ/きら先生)

 私の住む街は、四国松山。夏目漱石の「坊ちゃん」で紹介された道後温泉が知られたところです。市内を中心に、その道後とちょうど反対側の山寄りに「愛媛県立とべ動物園」があります。もとは、道後の温泉街にあった動物園から、大掛かりなお引越しをして郊外に移転したものでした。
 その動物園の人気者のなかに「シロクマピース」がいます。人工保育で育てられたホッキョクグマとして、テレビや本で紹介されていますので、ご存知の方も多いかと思います。ピースも昨年12月2日に無事に七歳の誕生日をむかえ、元気に新年を迎えたそうです。
 飼育員の高市さんも、ピースの育ての親として広く知られることになりました。赤ちゃん熊を家に連れて帰って、一時も目を離さない二十四時間体制で臨んだ子育ては、まさに初めての子育てに挑む若いお母さんそのものだったように思います。
 ミルクの飲みっぷりはこれでいいのか、夜泣きの原因は何か、ウンチのようすはどうなのか、疑問と不安との戦いでもあったと思います。何と言っても頭が下がるのは、これまでに例のない、マニュアルのない保育であったことです。
 試行錯誤であるけれど、命を預かっているからには過ちは許されません。「絶対育ててやるからな!」生まれたばかりのピースと初めて対面した時に約束したこの言葉が、高市さんを信念の人として突き動かしてきたように思えます。
 ピースも大きなホッキョクグマとなり、すでに子離れは済ませてしまったのですが、高市さんは、ピースの本当の幸せを見つけようと、今もずっと温かい愛情を注いでいるそうです。
 同じ松山市内の団地で、盲目の犬ダンが大切に飼われていました。子どもたちが拾った捨て犬は目が見えなかったのです。「目の見えない人間は盲導犬の助けを借りるのに、どうして目の見えない犬は捨てられるのだろう。」子どもたちはダンを守ろうと立ち上がったのです。その様子は「目の見えない犬ダン」という児童書にもなりました。その主人公の犬が、昨年末、人間で言うと百歳を超える大往生で天国にゆきました。ずっと近くで世話をしてきた自治会長さんは、ダンをペット霊園に集団埋葬したそうです。生きていた時は、人間の子供たちと自分たちとしか触れ合えなかったダンに、天国では犬の友だちをたくさんつくってもらいたいからだそうです。
 動物や自然の力にふれるとき、私たちは忘れかけた何かを呼び起される思いがします。とくに、自分なりに頑張って頑張って、それでも不安だったり行き詰っているような時には、身近なところにある「生きようとする力」にふれてみるのもいいのではないでしょうか。また、こういった話題は、作文をいろどるエピソードにもなります。見たり聞いたりした時に、自分の言葉で書きとめておくのもいいですね。




                       
 
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