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  12.1週に作文進級テスト
  「山のたより」に学級新聞
  作文小論文の自動採点ソフトが完成
 
言葉の森新聞 2003年12月1週号 通算第822号
文責 中根克明(森川林)

12.1週に作文進級テスト
 12.1週は、作文進級テストを行います。課題フォルダの項目表の●印が全部できることが合格の条件になります。キーワードと字数が採点の基準ですので、指定された字数以上で必要な項目が全部入る作文を書いていってください。中学生以上の時間制限については、今回は採点の基準にしませんが、できるだけ時間内に書き上げる力をつけていきましょう。
 キーワードは、カッコ書きで書いてもいいようになっています。作文を書き終えたあとに読み返して、抜けているキーワードがあったら入れておきましょう。キーワードのかわりに作文シールをはっておいてもいいです。
(小学2年生までの生徒は、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。項目やキーワードの意味がまだよく理解できないときは無理に項目に合わせて書かなくても結構です)
※10〜11月に入会した生徒は、進級試験の結果にかかわらず、1月からの課題は全員進級扱いとなります。
「山のたより」に学級新聞
 12月1週の「山のたより」には、学級新聞が載っています。
 これは、担当している先生が、生徒や保護者向けに書いたものです。言葉の森新聞の学級版としてごらんください。
 これから毎月1週目に掲載する予定です。
作文小論文の自動採点ソフトが完成
 8月の半ばから着手した作文小論文の自動採点ソフトが完成しました。原案はすぐに思いついたので2、3日でできるつもりでしたが、実際の作文に照らし合わせてみると、いろいろ手直しをしなければならないところがあり、結局3カ月もかかってしまいました。しかし、アメリカで既に運用されている同様のソフトは、15人の開発者が100万ドルもかけて開発したそうですから、それに比べれば3カ月で、かかった費用はプログラムのプリント代数千円(笑)というのは、かなり省エネに貢献したと思います。
 プログラムの仕組みは、文章の中から、「そして、しかし、だろう、思う」などの平凡な語彙を除き、残った語彙をユニークな語彙として集計し、ある一定の字数の中でユニークな語彙の種類が多い文章ほど内容が充実していると見なすというものです。これは、私たちの日常会話でも同様で、話題や語彙の豊富な人の話は、そうでない人の話よりもたぶん面白いだろうということです。ただし、小学生から高校生までを同じ基準で集計する場合は、意見文は事実文よりも難しく、漢語の多い文章はひらがなの多い文章よりも難しいということも考慮しなければならないので、意見文の語彙の数と漢語の数をある範囲で加算しました。しかし、評価の中心となるのは、あくまでもユニーク語彙の多さです。
 アメリカで稼動しているソフトは全然参考にしませんでしたが、あとで調べてみると、次のような仕組みになっているようです。まず、上手な文章を多数選び、それらの上手な文章の様々な特徴を上手さの基準とします。例えば、1文の長さは平均60字で、句点と読点の割合は平均1:1.2で、「したがって」という語句がよく登場するというようなことです(あくまでも例です)。そして、評価する文章を、その上手な文章の基準との隔たり具合から見て、基準からかけ離れている文章ほど上手ではないと見なすということです。
 この方法の弱点は、第一に、上手でない文章の評価は正確だが上手な文章の評価はあまり正確ではないということです。例えば、例に挙げた1文の長さ60字で考えてみると、60字から著しくかけ離れた文章が上手ではないということは言えますが、61字の文章が65字の文章よりも4字文だけうまい(笑)というようなことは言えません。
 第二は、正確な評価の基準を作ろうとすれば、多くの特徴を抽出しなければならず、プログラムが巨大になるということです。たぶん、このアメリカのソフトはプログラムの行数が数千から数万行になっていると思います。一方、言葉の森のプログラムはわずか800行です。(笑)
 第三は、数多くの基準を組み合わせて評価しているために、評価がブラックボックス化しているということです。生徒が作文を書くときの目標として、「どこにあるかわからない上手な文章のいろいろな特徴にできるだけ似ているような作文を書きなさい」と言われてやる気が出る子がいるでしょうか。言葉の森のソフトの目標は、「できるだけ多様な表現と実例を使って書きなさい」ということですから、同じ機械でもずっと人間的です。
 第四に、これは教育というものの考え方ですが、欠点を細かく評価することに教育的な意味はあまりないということです。アメリカでは、現在のプログラムを更に発展させて、綴りの間違いなども抽出できるソフトを開発しています。よくやります。(笑)教育に携わる人の陥りやすい錯覚は、欠点を指摘して直すことが上達につながるという考え方です。しかし、実際には、欠点の抑制の延長上に長所の伸展があるのではありません。欠点はテストで評価する対象ではなく、指導の対象なのです。つまり、長文音読や短文暗唱や読書などの学習を通じて、自然に欠点のない文章を書く力をつけておくことが重要で、それらの学習をしないまま綴りの間違いにいくら×をつけてもそれは採点する側の自己満足にしかならないということです。
 さて、以上のような理念上、方法上の相違にもかかわらず、アメリカのソフトが採点した論文のサンプルをウェブ翻訳で翻訳して(自分では翻訳できないので)、言葉の森のソフトで評価してみると、何とアメリカのソフトよりも正確な評価結果が! ほんとか。(笑)
 言葉の森のソフトは、仕組みが単純なので、日本語だけでなくほかの言語にもすぐに対応させることができます。今後、英語用、フランス語用、中国語用などの採点ソフトを作って、アメリカやヨーロッパや中国に売り込みに行こうかと思っています。どなたか作ってください。(笑)
 また、言葉の森のソフトで使っている語彙の辞書は900語程度です。しかも、これらの語彙はひらがなや易しい漢字ばかりなので、現在の光学文字読み取りの技術でもかなりの精度で認識することができます。すると、手書きの作文をスキャナで読み取って採点するということも可能になります。どなたか作ってください。(笑)人に頼ってばかりですが。
 このソフトは今、作文の丘で動いています。作文の題名の右側にある☆印をクリックすると、このソフトの採点結果が表示されます。点数の目安は、難関大学の小論文試験に合格できるぐらいの文章が100点前後ですから、小中学生の場合は点数が低くても当然だと考えてください。小学生から高校生までを同じ基準で採点しているので、小学3、4年生の作文は、その学年のレベルではかなり上手な文章である場合も10点前後の点数しかつかないことがあります。また、字数の少ない文章は採点の誤差が大きいため、1200字よりも短い文章は点数が低めに出るようにしています。
 作文の丘には編集機能がついていますから、自分の作文の語彙を増やして再送信することもできます。編集機能は、題名の右側にある日付時刻をクリックすると出てきます。
 自動採点のページでは、課題で書く作文以外の一般の文章も採点できるようにしています。ちなみに、ここまでの文章を採点してみると66点でした。(^^ゞ しかし、これは言葉の森新聞用に敬体で易しく書いたためで、もっとしっかり書いていれば高得点になったはずです。言い訳。(計算式を載せているので自分で計算できます)
http://www.mori7.info/moririn/moririn.php
 このソフトの名称は、言葉の森に棲む伝説の七色のキリンにちなんで森リンとしました(勝手に伝説を作るなって)。本当は森麟にしようかと思ったのですが、同じ名前の人がいたので(笑)森リンとしました。しかし、あとで調べると、森リンという人もいました。特許の出願番号は、2003−399577(2003年11月28日出願)です。
(つづく)
 
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