対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。



大学受験作文の解説集(法学)




 第一段落は、要約のように、生物進化論が社会科学に与えた影響を説明する。「生物界における適者生存・自然淘汰という考えを、人間の社会における民族の適者生存にあてはめたり、人為淘汰を合理化したりする考えに発展させた」

 続けて、問題提起。「自然科学の成果は社会科学にも活用されるべきだが、無批判に社会科学に適用されると、かえって人間社会を否定する要因となる」

 第二段落は、その原因。「自然科学には価値観がないが、社会科学には、人間にとっての幸福とは何かという価値観がある。その価値観と自然の法則を結びつけるのが社会科学者の役割である。また、科学的真理というものも、常にその時代の認識に制約された一面的な真理である。天動説が地動説に取って代わられたように、ある時代に絶対的な思われた思想も、時代の変化とともに変化する可能性がある。このような自覚を持たない社会科学者及び社会科学の方法論に問題がある」

 第三段落は、対策。「第一に、社会科学に志すものは、自然科学も確実に学ぶ必要がある。自然科学に無知であることが、ある意味で自然科学への盲信を生み出す。例えば、社会科学者がダーウィンの進化論を正確に消化していれば、その限界にも気づいたはず。第二に、科学的理論よりも、人間の生きている現実に目を向ける必要がある。理論は現実に生かしてこそ価値がある」

 第四段落は、反対理解とまとめ。社会科学(法学)を志すひとりとしての反省を含めて論じよう。



 内容よりも、論旨が一貫していればよい。
 第一段落は、状況実例と意見。「現在、クジラやイルカにも人間と同じような生きる権利があることを認めようという考えが生まれている」など。「私は、……と思う。」
 第二段落は、理由1。「その理由は第一に、人間以外の生物にも生きる権利を認めることが、人間の権利を守ることにもつながるからだ。例えば、クジラやイルカに同情を持つ心は、人間の弱者に同情を持つ心につながっている(という話を具体的に)」など。
 第三段落は、理由2。「第二の理由は、人間以外のものに人間と同じような権利を認めないことが、人間にとってもマイナスになるからだ。例えば、クジラやイルカが生存しにくい世界は、人間にとっても決して住みよい世界ではない(という話を具体的に)」など。
 第四段落は、反対理解と意見。「確かに、人間よりも環境が大事とするような行き過ぎた考えにならないように注意する必要はある。しかし……」。



 内容:隣人間でもめごとがあった場合、日本では裁判に持ち込むようなケースは少ない。これは隣人間の問題が話し合いで解決するのが難しいということと、弁護士の存在が市民から遠いことによる。しかし、地域のコミュニティが崩れ、共通の社会ルールも少なくなり、調整のメカニズムも働きにくくなった現代社会では、裁判などの公的な解決の場を利用するのもやむをえなくなりつつある。
 解説:米国は、契約と訴訟の社会だと言われています。日本の社会も、世界の基準に合わせて次第に契約や訴訟などを取り入れるようになりました。しかし、ドライな割り切り方は、ウェットな人間関係を重視する日本人にはやはり苦手なようです。「どうすべきか」というかたちの意見にして、そのための方法を考えていきましょう。
 第一段落は、実例と意見。「地域のコミュニティが崩壊しつつある中で、隣人間のもめごとが起こった場合、日本では裁判でドライに決着をつけるという習慣がない。今後、外国人の移民が増え、異なる文化を持つ隣人が増えれば、もめごとは更に多くなると考えられる。このような状況で、私たちはどのようにしていくべきか」など。
 第二段落は、方法1。「そのために大事なことは第一に、もめごとを恐れないということだ。利害の対立はどの社会でもある。それが異なる価値観に基づく対立であれが解決が困難であることは当然だ。しかし、これから地球は、好むと好まざるにかかわらす一つの家族のように運営していかなければならなくなる。隣人間のもめごとのこの大きい文脈の中で考える必要がある。その点で、裁判のような解決法はひとつの参考になる。例えば……」など。 
 第三段落は、方法2。「第二の方法は、もめごとを恐れないと同時に、それを避ける工夫を社会の仕組みとして作っていくことだ。日本の社会は、相互の思いやりの中で運営されている面が強い。自己主張をぶつけあい論争で利害の対立を克服するという文化とは程遠い文化を持つ。そのような日本の社会に、大量の外国人が移民として入ってくれば摩擦は大きくなる。その摩擦を緩和するのは、個人の力ではなく政治の力によるものだ。だから……」など。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、人間の社会は対立を通して進歩してきた面がある。互いによりよい生活を目指していれば、その中で利害の対立が生まれることはやむを得ない。しかし、その対立をできるだけ少なくするのが人間の知恵である。私たちは……」など。



 実例があまり書けない分野なので、説明だけで800字書く力をつけておくこと。
 法律に関する用語を使えるように、岩波新書などで法に関する本を読んでおくこと(図書館を利用するとよい)。
 結びの5行に、自作名言を入れられるとなおよい。

 法学部で出た問題なので、やや主観的な価値観が出ている。Bに賛同する立場の方が求められている。
 複数の理由と反対理解でまとめ、そこに資料のキーワードである「審判」などを入れる。

 第一段落は、裁判員制度の簡単な説明と自分の意見。「裁判員制度は、有権者から選ばれた裁判員が裁判官と並んで刑事事件の審理に参加する制度である。私は、裁判員制度は、審判の神聖さを回復するというBの意見に賛同する。」など。
 第二段落は、理由1。「その理由は第一に、裁判に市民の日常感覚を反映させることができるからだ。裁判官は確かに、専門的な知識を持っている。しかし、そのために市民の日常感覚とずれる判断を下す化膿性がある。そのときに、市民から選ばれた裁判員が……」など。
 第三段落は、理由2。「また、第二の理由は、私たち有権者が、司法に対する理解を深めることができるからだ。日本では特に、司法の世界は日常生活から縁遠いものになっている。しかし、刑事事件の対象となるような出来事はいつでも起こりうる。そのときに、市民が裁判というものに対する理解と関心を持っていれば、司法の仕組みが日常生活に結びつく形で……」など。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、刑事事件に一般の市民が参加を強制されることに対する不満も多い。また、裁判の制度を工夫するよりも、そのような裁判を必要としない治安のよい社会を作ることが先決だという考えもある。しかし、選手が審判の立場を知ることは……」など。




 法というものを抽象的に考えるのではなく、権利のぶつかり合いという現実や、裁判所という実務の場面と関連させて考える必要があるという内容。
 複数の方法で考えていくとよい。

 第一段落は、説明と意見。「日本では、法というものはそれほど身近な話題ではない。しかし、多くの人は、法という概念や、法と権利の関係は心得ている。しかし、その理解はまだ抽象的な段階にとどまり、法の現実の適用場面である裁判や裁判所との関連で考えられることはきわめて少ない。私たちは、法と権利と裁判所をばらばらに考えるのではなく、それらをひとつのものとして考えるべきではないだろうか。」など。
 第二段落は、その方法1。「そのためには、第一に、法を権利との関係で具体的に考える機会を教育の場で作っていく必要があるのではないか。日本の学校教育は、対立する意見の是非を論じるような学習機会が少なく、与えられた知識を吸収する面が多すぎるように思う。例えば、ディベート授業などで……」など。
 第三段落は、方法2。「第二には、市民が裁判や裁判所を身近に感じる機会を作る必要がある。その点で、現在制度化されている裁判員制度はさまざまな賛否はあるものの……」など。
 第四段落は、まとめ。「確かに、日本の社会では、これまで、法律で決着をつけるよりも人間関係のつながりを優先することが多かった。しかし、これからの国際化の進展で日本の社会でも、利害の相反する権利が衝突する場面が多くなってくることが考えられる。だから……」など。



 二つの意見のどちらかを選び、その理由を複数書く形か、二つの意見のそれぞれを生かし総合化する形で書く。(どちらかひとつを選択した方が書きやすいが、解説は総合化する形)

 第一段落は、現状の説明。「法令や規則と人間としての常識が対立する例は日常生活でもしばしば見られる。今の世の中にあるさまざまな規制は、当初は弱者の保護のために作られたものであっても、年月がたつうちにその保護によって生まれた既得権を守るだけの古い制約になっていることもある。例えば、今は便利に利用されている宅配便なども、普及する前は官庁からの制限を克服することが最も大きい課題だったと言われている。……」など。
 第二段落は、意見A。「確かに、法令や規則を守ることは大切だ。それは、逆に法令や規則でなく情実で社会が運営されている国の例を見ればわかる。そういう国では賄賂がなければ物事がスムーズに進まないことも多い。……」など。
 第三段落は、意見B。「しかし、社会の常識をもとに考えるということも大切だ。日本の社会の暮らしやすさは、法令や規則の間を埋める思いやりの豊富さによっている。例えば……。」など。
 第四段落は、総合化でまとめ。「このように考えると、法令や規則と人間としての常識は、必ずしも対立して考えるものでもない。法令や規則が完備している社会でこそ、人間の常識が生き、逆に人間の常識に支えられているからこそ、法令や規則が生かされる、という関係にあるのである。私はこれから……」など。



 要約は略。

 第一段落は、説明。「制度や法律は、その国の文化や歴史と深く関わっている。形の上で唱えられている理念と実際の運用にしばしば大きな差があるのはこのためだ。例えば、日本の現代の社会の出発点の一つは明治維新であり、もう一つは終戦である。この二つの時代の歴史を見ることが、現代の問題を探る手がかりになる。
 現代の内閣総理大臣の権限というものを考えると、私は、問題点は二つあると思う。……」など。
 第二段落は、展開1。「第一は、総理大臣の権限は法的にはかなり強いものであるにもかかわらず、歴代の総理大臣は必ずしもその権限を十分に発揮してリーダーシップを取ってきたとは言いがたいということだ。その文化的背景には、明治時代に最初に生まれた総理大臣が、各大臣の調整役としての役割を期待されていたことがある。……この対策は、内閣総理大臣がリーダーシップを発揮する前例を作っていく以外にない。……」など。
 第三段落は、展開2。「第二は、各大臣が、国政全体を考えるよりも、それぞれの省の利益を優先する傾向があることだ。現代でも族議員と呼ばれるように、特定の利益団体と結びついた議員は多い。特に、今日では選挙による洗礼を受けない官僚システムが根強い権限を持っているため、それぞれの大臣も、官僚のシナリオどおりに動く形になりやすい。……この対策は、国民の意思で選ばれた国会議員こそが主権者の代表であるという当然のことを一歩ずつ実現していくしかない。……」など。
 第四段落は、まとめ。「確かに、伝統にはそれなりの合理性もある。日本の社会が激しい社会的摩擦がなくゆるやかな変化を実現してきたのは、法律とは違う文化的な緩衝機能があったからだ。それは、時には裏取引とか談合とか呼ばれるものであったかもしれないが、その隠れた文化的役割を否定することは現実的ではない。しかし、今日の国際社会は、大きな変化の時代を迎えている。これまでのように、アメリカに依存していれば済む時代は終わった。だとすれば、日本には、いま強力なリーダーシップを取る人材が求められていると言えないだろうか。それは、人物であると同時に、もう一つそういうリーダーシップを生み出すことのできる制度でもある。……」など。



 社会問題(又は予測問題)→原因→対策→まとめ、という流れで考えるとよい。

 どのような意見になってもよいが、要は構成が明確で理路整然と書かれていることが大事。独創性は必要ない。



 第一段落は、説明(予測問題)。「家事労働におけるケアの倫理は、市民社会における正義の倫理とは異なるものとされ、主に家事労働に従事する女性は、公的な政治の場から排除される傾向にあった。しかし、ケアの倫理における特定の個人に応える姿勢は、これからの国民国家にむしろ必要とされるものかもしれない。このように筆者は述べている。確かに、現代の社会においてケアの倫理と正義の倫理は接近する傾向にある。公共の利益のためと言っても、個人の権利が侵害されることは滅多にない。しかし、そうは言っても、ケアの倫理と正義の倫理はやはり別のものであり、この二元論の対立は今後も続くと思われる。……」など。

 第二段落は、原因。「それは、ケアの倫理が対象とするものと、正義の倫理が対象するものとが異なるからだ。政治の大きな原理が『最大多数の最大幸福』であるとするならば、その最大の枠から落ちこぼれる個人は必ずいる。例えば、大掛かりな公共事業のために立ち退きを迫られた家は、最大多数の中に含まれるとを考えられてはいない。……」

 第三段落は、対策。「対立は、正義の倫理が主で、ケアの倫理が従であるとする前提から来ている。日本の社会は、家族主義だと言われる。つまり、公であるべき企業や国家自体が、ひとつの家族のように機能しているる面がある。この家族の中においても、当然正義の倫理はある。それは、個人の家庭の中でもルールが決められているのと同様である。しかし、ケアの倫理が主である以上、正義の倫理としてのルールは、個人に対立するものとしては受け止められていない。……」など。

 第四段落は、まとめ。「ケアの倫理と正義の倫理の対立は、今後は少なくなる傾向にある。それは、個人の人権意識が進歩していることと無縁ではない。しかし、どれだけ社会が進歩しても、両者の倫理の対立はなくなるわけではない。大事なことは、ケアの倫理を中心とした社会、つまりどのような個人も、自分が社会から守られていると感じる社会を作ることで、両者の対立を解消することではないか。……」など。


受験作文関連記事 Online作文教室 言葉の森