ツゲ の山 12 月 1 週
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○自由な題名
◎おいしかったことやまずかったこと
★小さいころから大切にしているもの、ないしょの話

ファイト! 朝練
【1】「浅野たちのチームは今、燃えている。」
 山口先生の声が教室に響き渡った。今日の朝の会で、私たちDチームはみんなの前でほめられた。私たちの学校では、四年生になると女子はミニバスケットのクラブ活動があり、毎日放課後、体育館で練習をしているのだ。
 【2】Dチームは、上から四番目のチームで、公式試合(じあい)には出られない。練習の時も、ゴール下はなかなか使えず、パス練習が多い。Cチームを負かして、自分たちがCチームになれば試合に出られるのだがその壁は厚かった。
 【3】チームの五人のうち、三人は
「どんなにがんばったって、試合になんか出られないし。」
「先生もコーチも、A、Bチームばかり力を入れているみたいだし。しかたがないけど。」
という感じで、なんとなくやる気が出ない様子だった。
 【4】キャプテンである私と、副キャプテンのみちるちゃんは、何とかがんばってCチームに昇格したいと思っているけれど、チームワークが今ひとつなので、うまくいかないのだ。私たち二人しか来ない日もあって、Eチームに混じって練習試合(じあい)をしたくらいだ。【5】私も少しあきらめかけていた。
 ところが、先月のことだ。みちるちゃんが、
「ねえ、このままじゃ、いつかEチームにも抜かされてしまうかも。がんばって、朝練しない?」
と言い出した。みんな一瞬、えーっという迷惑そうな顔をした。
 【6】しかし、みちるちゃんはひるまず、強い意志のこもった目でみんなを見つめ、
「私たちだって、試合に出たいよね?」
と問いかけた。私が思わず、大きくうなずくと、他の三人もつられたように首をたてにふった。∵
 次の日から、三十分の朝練が始まった。【7】三十分早く来るのも実は大変だ。特に朝が弱い私とふくちゃんは、朝ごはんもそこそこに、髪の毛がはねたまま走って登校するようなあわただしさだった。
「朝練前にランニングしちゃうようなものだね。」
 誰もいない早朝の体育館は、すべてが私たちのものだ。【8】シュート練習が思う存分できるし、ドリブル練習も何本もできる。声が響くのでいやでもテンションが上がっていく。一日目にして、私は、これはいけるかもしれないと思った。なんだか昨日までのDチームではないみたいだ。
 【9】翌日からは、山口先生がのぞきに来た。あいさつだけすると、体育館の入口で黙って見ている。ふくちゃんのロングパスを取りそこねた私に、先生は転がったボールを拾うと、強めのチェストパスで渡してくれた。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ)