セリ の山 2 月 3 週
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○自由な題名
○バレンタインデー、もうすぐ春が


★そのころ、パストゥールは(感)
 【1】そのころ、パストゥールは、ニワトリのコレラを研究していました。かれは犯人が8の字のかたちをした細菌であることをつきとめていました。毎日準備したスープの中で、この細菌を培養することができたからです。
 【2】一八七九年の夏の休暇をパストゥールは故郷のアルボアですごしました。パリに帰ってきたとき、培養液のことをすっかり忘れていたことに気がつきました。何週間も放っ(ほう )たままにしていたのです。【3】かれは助手にそれをすてるように命じましたが、ふと思いなおしてともかくニワトリに注射してみるようにいいました。細菌はひょっとしたら、まだ毒性をもっているかもしれません。
 ところがどうでしょう。ニワトリは、コレラにかかりませんでした。【4】実験をくりかえして、こんどは新しいとても強力な培養液を注射してみました。するとおどろいたことに、ほかのニワトリは病気になったのに、古い培養液を注射しておいたニワトリは、病気にかかりませんでした。
 【5】長いあいだにやしなわれた直感と、知識と、それに偶然も味方して、パストゥールはその生涯でもっとも重大な発見をすることになったのです。
 パストゥールは、ジェンナーの天然痘のワクチン接種から百年ののちに、新しいかたちの予防接種法を発見しました。【6】古くなったコレラ菌の培養液を注射されたニワトリは、この病原菌のはいっている新しい培養液に抵抗することができたのです。この発見によって、医学全体が新しく生まれかわることになりました。
 まず獣医たちがパストゥールの仕事を絶賛しました。
 【7】ニワトリコレラを克服したかれは、ふたたび炭疽病に興味をしめしました。ニワトリコレラで幸運がかれにあたえてくれたことを、こんどは自分の力でやってみるのです。しっかりとした方法で、培養液の毒性をやわらげようとしました。∵
 【8】炭疽菌のはいっている培養液を、摂氏四十三度で八日間加熱したあとならば、この培養液を羊、ウサギ、モルモットに注射しても、動物は発病しません。これらの動物の体は、弱められた細菌によって予防されたのです。【9】この弱められた細菌は、いわば、もとの仲間をうらぎって体の味方をする、二重スパイの役割をえんじました。ですから、あとになって「猛毒」な炭疽菌を注射しても、平気でいることができるのです。【0】
 こうしてパストゥールは、動物に炭疽病のワクチンを接種する方法を見つけだしました。
 
 「細菌と戦うパストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社