セリ の山 1 月 4 週
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○自由な題名

★清書(せいしょ)

○伝書バト
 伝書バトは、信頼のおける郵便配達員のようです。伝書バトに届けてもらう手紙は、足につけた小さな筒の中に入れたり、背中にくくりつけたりします。伝書バトは、託された手紙を、遠く離れた相手のもとへ届けることができます。二百キロメートルぐらいの距離を飛ぶのが普通ですが、時には千キロメートルも離れた場所まで飛ぶこともあります。千キロメートルというと、だいたい東京から北海道、又は東京から九州ぐらいまでの距離になります。これほど離れた相手先に、間違わずにたどりつける能力にはおどろきます。
 しかし、こんなに優秀な伝書バトにも弱点があります。それは、いつも同じ届け先にしか手紙を運べないことと、あまり重いものは運べないことです。伝書バトがめざすのは、手紙のあて先に書かれた住所ではなく、自分が生まれたハト小屋(ごや)です。つまり、伝書バトの手紙の配達は、帰巣本能を利用したものなのです。
 地図も持たずに何百キロも離れた地点に正確にたどりつくのは、人間にとっては、たいへん難しいことです。伝書バトは、なぜ自分の巣のある場所に迷わずに帰ることができるのでしょう。かつては、地上に見える目印と、太陽の場所、それに地球の磁気をたよりに飛び、夜になると星を目印に進むのだろうと言われてきました。最近の研究によると、伝書バトの方向感覚は、すぐれた嗅覚のおかげでもあると言われています。
 遠くからでも、迷わずに自分の巣に帰ることができるハトの性質を、大昔から人間は知っていました。古代エジプトでは、漁船が伝書バトを使って、漁の成果を海から陸に知らせていたそうです。一度放たれた伝書バトは、休むことなく何百キロも飛び続けるため、電話やメールがない時代は、最も速い通信手段でした。∵近代にいたるまで、伝書バトは、軍事用や報道用の通信手段として数多く使われてきました。また、離れ小島(こじま)などの輸送が難しい地域に、薬や血清を運んで、医療の手助けをしていた伝書バトもいました。
 現在では、通信手段として伝書バトが利用されることはほとんどなくなり、スポーツとしてのハトのレースが開催されている程度です。本来、帰巣本能にすぐれているハトですが、近年になって、レースに出たハトが戻ってこないことがだんだん増えてきました。優秀なはずのハトが、なぜか途中で迷子になってしまうのです。この原因は、はっきりとはわかっていませんが、携帯電話などの電磁波が影響しているという説があります。また、ハトの品種改良を行なった際、スピードばかりを重視して、方向感覚がにぶってしまったのではないかとも言われています。
 それにしても、伝書バトの郵便配達には、ガソリンなどの燃料は一切使わないし、切手も不要です。ごほうびに豆をいくつか与えれば満足してくれる伝書バトは、環境にやさしい、すばらしく優秀な郵便配達員ではないでしょうか。
 ハトと同じように身近な鳥に、スズメやカラスがいます。どうして伝書スズメや伝書カラスがいないかというと、スズメに手紙をつけると重くて前にすずめないからです。また、カラスに手紙をつけると、途中でゴミ箱に寄り、手紙のことを忘れてしまうからっす。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(κ)