ヘチマ の山 3 月 1 週
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○自由な題名
○ひなまつり
★がんばったこと、料理を作ったこと

忘れられない旅行
 【1】僕の目の前に、テストの問題用紙が山積みされている。教室には誰もおらず、僕一人。とても静かな、居残り勉強の時間である。いつもなら頭を抱えるか、逃げ出してしまいたくなるところだ。しかし、この時の僕はやる気に満ちていた。【2】なぜなら、今まで休ませてもらったぶん、ここでがんばろうと決意していたからだ。
 僕はつい昨日まで、北海道にいた。三日間、旅行へ行っていたのだ。両親が計画したこの旅行は、学校のテスト期間とぶつかってしまっていた。【3】卒業と進学を控えたこの時に、テストを休んで遊びに行くなんて言ったら、怒られるんじゃないか……と僕は思っていた。けれども担任の先生は、
「学校の勉強より、旅行の方がずっと良い経験になります。ぜひ行ってきてください。」
と言ってくれた。【4】僕はとても感動した。だからこそ、旅行から帰った後、テストをまとめて受けることになっても、嫌だなんて感じなかったのだ。
 この旅行は本当に楽しく、新鮮なことばかりだった。飛行機に乗るのは初めてで、はじめは不安もあった。【5】墜落したらどうしよう、という心配はもちろん、それ以上に、海外旅行の経験がある友達から「暗いし、混んでいるし、とても窮屈だった」と聞いていたからだ。
 だが、僕たちの乗った飛行機はビックリするくらい空いていた。【6】時季を外れていたからで、両親の計画のうちだったらしい。ばたばたと座席を移動して、色々な方向から雲の下の景色を楽しむことができた。昔、母が滑りに行ったという蔵王のスキー場も見えた。国内の移動だから、二時間も乗っていられないのが、残念だったくらいだ。
 【7】北海道では、最初に摩周湖を見た。雪と霧で一面が真っ白、それは綺麗だったのだが、積もった雪が太陽の光を照り返して、すごくまぶしかったことの方が忘れられない。そこで撮った写真では、∵僕は目を細めて、まるでとても機嫌が悪いかのような表情をしている。
 【8】他にも、アイヌ族の村を見たり、凍った湖の上を歩いたり、スノーモービルに乗ったりした。どれも、先生の言っていたとおり、同じ冬でも東京にいたのでは決してできない経験ばかりだった。
 気がつけば、僕はいつも以上にサッサッと問題を解いていた。【9】一番苦手な、算数のテストも片付いた。人間は、楽しい思い出があるからこそ、やらなければならない辛い勉強にも取り組むことができるのだろう。あと、机の上に残っているのは、数枚の作文用紙だけ。最後は、「この冬の思い出」という課題の作文テストだ。【0】書くことはもう決まっている。「鉄は熱いうちに打て」という。思い出を文章に残すのも、きっと早い方がいいに違いない。僕は笑顔でペンを握り直した。

(言葉の森長文作成委員会 ι)