1果物をお皿にのせたまま長いあいだ放っておいたり、死んだ動物をそのままにしておくと、くさったにおいがしてくることは、知っていますね。2パストゥールは、このにおいの原因が、微生物あるいは細菌(ギリシア語でmicros「小さい」という意味)とよばれる、小さな生き物のしわざであることをつきとめています。
3この生物は、独特な性質をもっており、酸素があると死んでしまうか「眠れる森の美女」のように眠ったままでいます。4ところが、いったん酸素がなくなるときゅうに元気づいて、どんどんふえはじめます。
5パストゥールは、新しい生物を発見したのです。それは、酸素を必要としない生物でした。
6有機体(生物)は、みな何百万もの微生物をすまわせています。7有機体が生きているあいだは、その細胞は空気を必要としているので、これにたえられない微生物は、眠った状態になっています。生物が死ぬと、空気が細胞にはこばれてこなくなります。
8こうして酸素という脅威からときはなされた微生物は、まるで王子のキスで目ざめた「眠れる森の美女」のように、目をさましはじめます。9成長していくにつれて、酵母がグレープジュースをワインにかえてアルコールのにおいをさせるように、この微生物はまわりの組織を少しずつこわして、悪臭をはなちます。0
「細菌と戦うパストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社
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