a 長文 11.3週 nu
 科学的態度たいどなどというと、たいへんむずかしいことのように思いがちである。しかし、日常にちじょうの生活におけるちょっとした心がけ次第でこの態度たいどを身につけることができるものである。では、どのようなことを科学的態度たいどというのであろうか。
 まず、ものをよく見るということである。よく見ることができれば、何かふに落ちないことがあったとき「はてな。」「変だな。」と思うことができる。これが、科学的態度たいどへの出発点なのである。
 ところで、われわれは、いつでもものをよく見ているようであるが、実は案外よく見ていないのである。たとえば、タイはどんな色をしているかとたずねると、たいていの人は赤いと言う。はたしてそうであろうか。絵にかいたえびす様の持つタイは、確かたし に赤い。しかし、ほんとうのタイは、それとは異なっこと  た色をしている。むらさき色に近い色で、生きているときは、さらに緑がかっている。もし、それを見る機会がないとしても、さかな屋の店頭にあるタイなら見ることができるだろう。タイは赤いという習慣しゅうかん的な考えで赤いと思っているだけである。
 自然界に実際じっさいにあるもの、実際じっさいに起こっている現象げんしょうは、決して単純たんじゅん判断はんだんできるものではない。習慣しゅうかん常識じょうしきにとらわれていたのでは正しくものを見ることはできない。だから、自分の目を見開いて、しっかりと自分の目でたしかめる態度たいどが必要である。
 それでは、ものをよく見て、「はてな。」と感じさえすれば、それでいいのであろうか。問題は、「はてな。」と感じたとき、それだけで終わらせるかどうかという点にある。そのとき、「どうしてだろう。」と思い、それについて考えてみるようにしなければいけない。その場合、自分の持っている知識ちしきで説明がつかないときにはその疑問ぎもんとする点について、すぐ実験したり、調べたりしてみることである。
 ところが、実験などというと敬遠けいえんされがちである。が、実験を生活に取り入れることは、興味深いきょうみぶか ことなのである。たとえば、土をほり起こしているうちに、スコップがみょうに重くなったりする。そこで、草をひとつかみちぎって、こびりついている土をこす
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り取ってみる。すると、軽くなる。
 そこで、土がこびりつかないようにしたら仕事が楽だろうということに気づく。家に帰ってさびを取り、油を引いておく。翌日よくじつからスコップは軽くなるにちがいない。そんな簡単かんたんな実験でいいのである。
 日常にちじょうの生活では、これとたようなことに出合う場合が多いものである。そんなとき、疑問ぎもんをいだいたら、そのままにほうっておかないで、実験したり調べたりすることがたいせつである。
 科学的態度たいどとは、疑問ぎもんを実験や調査ちょうさによって解決かいけつしようとする態度たいどである。これは、科学を研究する者にとって必要な心がけであるばかりでなく、人間たちだれしもが身につけておく必要のある生活態度たいどであるといえよう。
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