a 長文 12.2週 hu
 人は生まれながらにもっている性格があるね。
 しかし、その人の経験と努力で、ある程度変えることができる。
 また、人は生まれながらにもっている資質というものがある。こちらのほうはうっかりしていると気づかないもので、自分の資質がどういうものなのかなかなかわからない。
 この資質は、ちょうどその人だけのいずみのようなもので、だれでもがすぐれた資質をもっているのに、一生かかっても掘りほ 当てられない人がいる。(中略)
 若いわか 君たちは、自分のすばらしいいずみがどこにあるのか、さがしている時期だ。大いにいろいろのことをやって、さがしたらいい。
 そして、ちょうど釣りつ をしているときのように、コツンと当たりがあったら、そこに君がかくれているのだからじっくりやってみたらいい。すぐにあきてしまわないで、持続することも大切なんだ。しんぼう、しんぼうってわけ。
 高校とか大学とかに入るというのももちろん一つの標的だろう。自分で決めた標的なら、みごと的の中心をねらいどおり射抜くいぬ べきだ。
 しかし、高校や大学の入試という標的だけでは、だれもがねらう的だし、青春のすべてをかけるには、ちょっとさびしい気もする。ケンカの相手としても、月並みつきな でもあるね。
 君だけにしかない、君自身の青春の標的。標的は夢のあるビッグのほうがいい。若いわか 君には無限の可能性があるのだから。
 しかし、それは君の資質にあったものでなければならないだろうね。といっても、まだ資質のいずみ模索もさく中なのだから、君の好きなことでいい。なにかが好きということは、そこに資質の鉱脈があるのだから。
 たとえば、勉強がどうしても嫌いきら でスポーツが好きな人は、スポーツに君自身の標的をかかげて、二度とこない青春のあいだにやりぬく目標を決め、ライフルの標準をピタリと合わせたらいい。君自身で決めた目標がなかったら、自分にどのようにツッパッたらいいかわからないってもんだ。
 自分のかかげた標的にむかって、一流のツッパリ方をしてみようじゃないか。
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 青春のうちにこれだけはやった! その自信が君を大きく変えてゆく。
 さてそこで、標的をかかげるにあたって、君は生活を選ぶか人生を選ぶかだ。
 生活と人生は同じようで、実は大いにちがうんだね。多くのオトナは生活のほうを選んでしまう。大学を出て就職しゅうしょくしてマイホームをつくり、子どもを育てる。もちろんこうした生活は大切なことだ。しかし、その生活のために、せっかく掘りほ 当てた自分のいずみ涸らしか  てしまう人が多いんだね。
 人生を選ぶというのは、自分の資質に合ったことをして、たとえ貧しくても生活ができ、おのずと社会に役立つ生き方になっていることなんだね。生きている意義が実感でき、他人のではない自分自身のこれが生き方だと、自信をもっていえる生活。
 そういう人生を選ぶと、この地球上の一角に、君自身のつめあとをつけたことになる。
 それには、これまでふれたように、社会を高みから見おろすのではなく、ひとの苦しみやいたみのわかる低い視線しせんが必要だろう。感動を大切にすることも重要だ。また「知」のたのしみを知ることや広い視野しやで地球社会を見ることも。(中略)
 いまアメリカでは高校生の間に、「ジェントルマンズC」という合言葉があるそうだ。本当のジェントルマンは、オールAの成績をとろうとしてガリ勉するものではなく、テニスをしたり、マイコンに夢中になったり、ヨットで遊んだり、女の子とドライブを楽しんだり……勉強もそのうちの一つという考え方なんだね。学校の成績はCでも、広い視野しやでさわやかに行動できる人のほうが、物事を大きく把握はあくし、国際人として実力を発揮はっきできるってわけ。
 君もひとむかし前のガリ勉の野暮ったいやぼ   ジェントルマンではなく「ジェントルマンズC」の精神で青春をすごそうじゃないか。
 君らしいさわやかな青春の標的。
 輝かしいかがや   標的をもたないオトナなんてメじゃないってわけだ。
 そして、君の資質にあった好きな職業を選ぼう。生活のためにいやいや働いたのでは、君自身の人生を生きることができず、君の人生という大きなケンカに負けてしまうからね。
 (佐江さえ衆一しゅういち「けんかの仕方教えます」)
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