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解説集 グミ の池 (最新版 /印刷版 /ウェブ版 /最新版
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10.1週 
●学問の意義、人間にとっての幸福
 みなさんがこれから大学でする勉強で考えていくといいでしょう。高校までの勉強は与えられた勉強という面が強かったと思いますが、大学生以降は自分から進んで取り組む勉強が中心になってきます。なんのために勉強(学問)をするのかを考え、そういう学問への取り組みがしにくくなっている社会の問題を考えてみましょう。
●構成図の書き方
 構成図は、小3以上の生徒が書きます。小2以下の生徒は、絵をかいてから作文を始めるという課題になっているので、構成図は書かなくて結構です。
 構成図を書くときに大事なことは、思いついたことを自由にどんどん書くことです。テーマからはずれていても、あまり重要でないことでも一向にかまいません。
 たくさん書くことによって、考えが深まっていきます。したがって、構成図は、できるだけ枠(わく)を全部うめるようにしてください。しかし、全部埋まらなくてもかまいません。
 枠と枠の間は→などで結びます。この矢印は、書いた順序があとからわかるようにするためです。作文に書く順序ということではありません。
 構成図は、原稿用紙や普通の白紙に書いて結構です。
構成図を書きます。
頭の中にあるものをそのまま書くとき。
構成図で書くとき。
初めに絵をかきます。(絵はどこにかいてもいいです)
思いついた短文を書きます。(どこから始めてもいいです)
思いついたことを矢印でつなげていきます。
関係なさそうなことでも自由にどんどん書きます。
はみだしてもかまいません。大体うまったらできあがり。


★学問の意義、人間にとっての幸福
 「与えられた勉強だけをこなし、自ら進んで勉強をするという姿勢が失われていることは問題だ」。これを主題としましょう。
 二段落、三段落には原因を挙げていきます。第一の原因として挙げられるのは、教える側と教えられる側のメリット。「与えられた勉強をこなすということは、教える側にも教えられる側、双方が楽だからだ」。生徒はもちろん、課題を与えられて、それを機械的にこなす方が楽です。見逃してはならないのは教える側のメリット。決まった課題を生徒に与え、それを採点する方が教える側も楽なのではないでしょうか。
 もう一つの原因は、「知識の量を競うような受験システム」なども挙げられるでしょう。中学受験などでは、この先、生きていても、日常生活で使うことのないような知識を問う問題もたくさん出るといいます。しかし、生きていくのに本当に必要な力とは、「考える力」「実行する力」。それらを身に付けるには、やはり、自ら学ぶ姿勢なのでしょう。
 四段落はまとめ。与えられた勉強をするということにどんなメリットがあるかを考えましょう。自ら進んで勉強をしていると、どうしても好きな分野にばかり偏ってしまう……、与えられた勉強をするということは、幅広く知識を身に付けることの近道になるとも言えますね。

10.2週 
●近代社会は前近代の(感)
 近代社会は、前近代の安定したピラミッド型の社会構造を破壊し流動状態をもちこんだが、ピラミッドの枠組そのものは破壊しなかった。しかし、現代では、階層構造の秩序そのものが信頼を失っている。人々は全体への従属関係を持てなくなった不安を、カルトという同質性のうえに作られたささやかな異質性の中に求めようとしている。
 高校生のうちは、受験という大きな目標があるので、まだ階層秩序がないことへの不安という心理はわかりにくいかもしれません。しかし、受験が終わると、果たしてこの社会に生きるに値する大きな目標があるのだろうかという気持ちを多くの人が感じるようです。この不安を解消する手段として特殊な小さなコミュニティというものが成り立つ、というのが著者の意見です。現代社会の問題として考えていきましょう。
高2 10.2週 近代社会は前近代の(感想文)の書き方
 いろいろなことが重層的に書いてあるので、問題を一つに絞るのは難しい。敢えて一言で言えば、「価値からの疎外」か。
 長文の内容をわかりやすく言うと、次のようなことである。
 現代は昔のような、誰もが支持する大きな価値はなくなった。(昔は、「尊皇攘夷」とか「鬼畜米英」とか「所得倍増」のようなすべての人が支持する大価値があった)現代かろうじてあるように見える「受験勉強」などの大価値も、いつでも放棄できるような弱い価値である。大きな価値のない中で、人々は他人とのささやかな一致や相違に自分というものを見出そうとしている。
 第一段落は要約。続けて、「社会を貫く大きな価値がないところに問題がある。」
 第二段落は原因1。「大きな価値がない原因は第一に、日本の社会が『欧米に追いつけ追い越せ』という目標を一応達成してしまったからである」。続けて体験実例。「父母の時代は、テレビを買ったり自動車を買ったりすることに憧れがあったようだが、現代の高校生はせいぜい新しい携帯電話がほしいぐらいである」。
 第三段落は原因2。「また、第二の原因としては、社会全体に大きな価値をいかがわしく思う風潮があることだ」。続けて社会実例(自然科学実例)。「巨大化した恐竜は6500万年前に滅びた。そのあとに多様な哺乳類が誕生した。大きな価値は恐竜のように滅びる運命にあるものと見られている。云々」。ことわざの加工。「大は小を兼ねられない」。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、たった一つの大きな価値に塗りつぶされた社会は不自由かもしれない。しかし、現代のような価値の不在と分散の時代もまた人間にとって不幸なのではないか」。続けて自作名言。「人間は、ただ肉体的に生きているのではなく、価値的に生きているのだ」。

 

10.3週 
●日本は豊かな国で(感)
 内容:日本は豊かな国になったが逆に人々はゆとりのない生活をしている。経済的な価値だけが評価される社会では、福祉などはあまり評価されない。
 解説:大人の社会はなんでもお金に換算され、子供の社会ではなんでも成績に換算されるという風潮があります。現代の社会では、「清く、貧しく、美しく」という言葉は死語になってしまいましたが、昔の日本には「貧しくても、人様に迷惑をかけないように」という考え方が社会のすみずみにまで生きていました。江戸時代に日本に来たイギリス人は、日本の役人が賄賂などを受け取らないことに驚いたそうです。戦後すぐ、日本の田舎でアメリカ占領軍が日本の子供たちにチョコレートをばらまいたところ、次の日芋や大根などの野菜がアメリカ軍の宿舎に届けられたそうです。「人様に物をいただいたら、きちんとお返ししなさい」という倫理観が敗戦で着の身着のままになった人々の心の中にも生きていたのです。「一隅を照らすこれ則ち国宝なり」という最澄の言葉がありますがこういう精神は日本人の心の中にずっと残っていたようです。福沢諭吉は、政府から、国家に尽くした功労が与えられるという話があったとき、人間が当たり前の仕事をしているという点では車屋も豆腐屋も同じだ。自分を誉めてくれるのならまず隣の豆腐屋から誉めてくれ、と断ったそうです。財布を落としてもそれが交番に届けられて持ち主に戻ってくるというのも、日本の社会の美点としてよく取り上げられます。しかし、バブルのころには少なからぬ日本人が目先の利益に振り回されました。もちろん経済的な価値は、社会の柱となるものですから、それを否定することはできません。しかし、経済的な価値だけが肥大した社会は、非人間的な社会だと言えるかもしれません。
高2 10.3週 ●日本は豊かな国で(感)
 第一段落は要約。続けて、社会問題。「日本は豊かになったが、経済的な価値観しかないように見えるのは問題だ」。
 第二段落はその原因1。「その原因は第一に、日本の社会がこれまで『欧米に追いつけ追い越せ』で走ってきたからである」。体験実例。「私の父も、毎日残業で、日曜日もよく出勤する。仕事はよくするが、生活を楽しんでいるようには見えない。私と反対である(笑)」など。
 第三段落はその原因2。「第二の原因としては、日本人全体の横並び意識がある。経済的な価値観が主流なので、それ以外の多様な価値観を認めない風潮がある」。社会実例(自然科学)。「恐竜も、多様な進化の方向に進む前に、ますます巨大化し、ますます獰猛化する方向に単純に進化したために、滅びやすくなったのではないか」など。
 第四段落は、反対理解を入れながら最初の問題提起に戻る。「確かに、経済的な豊かさは、そのほかの豊かさの条件とはなる。しかし……」。自作名言。「豊かさとは、お金をどれだけ多く持っていることではなく、そのお金をどう使うかということではないか」など。

11.1週 
●日本とはくらべものに(感)
 内容:ドイツでは、日本と比べて社会的共通資本が充実している。夜間まで運営されている交通機関や医療機関は市民に安心感を与えている。労働時間も日本より少なく、一日の中に労働と文化生活と家族のだんらんが並行して行われるゆとりがある。
 解説:ヨーロッパの特にドイツやフランスなどには、仕事の能率を上げることよりも人間らしい生活をすることを優先するような風土があります。イギリスやアメリカは、その反対に、仕事を優先する考え方が強いようです。日本はちょうどその中間ぐらいになるのでしょうが、これまではどちらかと言えば、生活よりも仕事を優先するという考え方が強かったようです。
 いま、平日の夕方にお父さんが早く会社から帰ってきて、子供と公園でキャッチボールをするというような光景はほとんどありません。それどころか、単身赴任で月に数回しか家族がそろわないとか、それほどでなくても、日曜日は平日の仕事でくたびれて寝てばかりというようなお父さんもかなりいます。
 ゆとりのない日本の社会の背景にあるものは何かということを考えてみましょう。
高2 11.1週のヒント ●日本とはくらべものに(感)

 
 第一段落は要約と意見(社会問題の主題)。「家庭生活や地域社会よりも労働時間を優先する日本の社会に問題がある。」
 第二段落は原因と体験実例。「第一の原因は、企業が仕事優先の価値観を社員に強制しているからだ。私の友人の家庭は、父親が単身赴任で母子家庭のようだと言っていた。私の父も、夕飯を一緒にとる日はほとんどない。」
 第三段落は原因2と自然科学実例。「第二の原因は、日本人には個人の事情よりも集団の都合を優先させる発想がまだ根強いからだ。自然界にも、アリのように集団生活を優先させる生き物と、キリギリスのように個体の生活だけで生きている生き物とがある。日本人が働きアリにたとえられるのも、それが日本の社会に根付いた生き方だからではないだろうか。」
 第四段落は反対理解と自作名言。「確かに、集団主義は戦後の高度成長を生み出したという点で評価される。しかし、これからの社会はもっと個人の生活を優先させるものになるべきだろう。人間は社会のために生きているのではなく、まず自分のために生きているのである。」
 
 

11.2週 
●その広告は(感)
 内容:その広告は、サービスや製品を超えて世の中を理解する方法までも売り込もうとしていた。現代の商業主義の世界では、人生は消費を通して実現されるようになっている。かつての農業や手工業が持っていた自然との融合は、賃金労働と消費生活によって取って代わられている。
 資本主義以前の世界では、貨幣を通しての商品交換も限られていました。人々は、生活に必要な多くのものを自分の手で作り育てていました。そういう社会では、生産そのものが人生であり、消費はやむをえずするものと考えられていました。しかし、資本主義が発達すると、それまで自分自身が生産者であった農民や手工業者は工場労働者となり、労働と引き換えに賃金を受け取るようになりました。生活に必要なものは、この賃金で商品として購入しなければなりません。こうして、やがて、労働はやむをえずするもので、消費の中にこそ人生があるという考えが生まれてきました。
 今多くの人の日常生活は、次のようなものになっていると思います。「あーあ、今日からまた月曜日か。しょうがない、また一週間働くか。そのかわり、日曜日にはカラオケに行って、うまいもんでも食べて元気を取り戻そう」
 昔の人は、そうではありませんでした。朝起きるとすぐ文句も言わずに、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に、すると川上から大きな桃がどんぶらこっこどんぶらこっこと流れてくるような生活をしていました。
 近代の資本主義は、確かに世界を飛躍的に豊かにしました。しかし今、この物質的な豊かさのあとに来るもの、心の豊かさを実現するような社会が求められているようです。
高2 11.2週のヒント ●その広告は(感)

 第一段落は、要約と意見(社会問題)。「人間や自然との関係を、販売や消費の関係に置き換える社会に問題がある。(例えば、出会い系サイト、家族の団欒システム、自然との触れ合いサービスなど)
 第二段落は、原因1と体験実例。「歴史的な原因としては、私たちがいま生きている社会が、あらゆるものを商品化する資本主義社会になっているということである。この前、おばあちゃんからお年玉をもらったが、つい「いくら入っているのか」が気になってしまった。(笑)本当は、心の交流であったお年玉というお祝いの行事が、現在の社会では商品に還元できる金銭の多寡で評価されている。」
 第三段落は、原因2と社会実例(自然科学実例)。「社会的な原因としては、テレビなどのメディアの発達によって、私たちの欲求が、テレビなどの映像に逆に影響されるようになってしまったことがあげられる。(例えば、むかーし流行ったタマゴッチなど)。自然界にも次のような例がある。餌を食べて満腹になったニワトリのいる場所に飢えたニワトリを入れると、その飢えたニワトリが餌を食べるのを見て、満腹のニワトリも餌を食べ出すということだ。自分の本当の欲求ではなく、他者から与えられた欲求によって生きるという面が、動物にもあるのである。」
 第四段落は、反対理解と自作名言。「確かに、あらゆるものを販売や消費に還元する社会は、社会の資源を無駄なく配分することに成功した。インターネットのオークションやショッピングサイトを見てみると、およそ人間が欲しいと思うもので売られていないものはないと言っていいほどである。しかし、そのことが私たちの人間や自然との直接の交流を妨げていることもまた事実である。人間は、消費するために生きているのではなく、まず生きることが先にあって、生きるために消費するという原点を忘れてはならない。」

11.3週 
●A氏は、まず(感)
 内容:昭和60年代以降の広告には、「モノ離れ」現象がおきたと言われている。しかし、広告の役割は依然として、新しい生き方と一体化した商品=モノへの欲求喚起である。
 解説:最近の広告では、その商品がどれだけ役に立つかというような機能面での説明はあまりなく、その分、雰囲気を重視したものが多くなっています。昔からあるリポビタンDの宣伝などでも、何がどう効くのかよくわからなくても、「ファイトー! 一発」などという元気な広告を見ていると、何か効きそうだなあと感じてきます。
 昔の広告は、より豊かな生活をというメッセージが豊富にありましたが、最近の広告はときどきすごくしょぼくれた場面が出てくることがあります。これは「豊かな生活にあくせくするよりは、今手に入る身近な幸せに満足しよう」という生き方の提案なのかもしれません。
 最近気になった身近な広告を例にして考えてみましょう。
高2 11.3週のヒント ●A氏は、まず(感)
 第一段落は、要約と社会問題の主題。「広告が、モノを通した新しい生き方の提案をできなくなっている。にもかかわらず、オモシロ広告のように目先を変えただけの広告が量産されているところに問題がある。」
 かつての広告は、例えば自動車の広告にしても、「最高時速が○キロ、燃費が○キロ」という明確な主張がありました。パソコンやデジカメでも、「解像度が○ドット、容量が○メガバイト」などという主張があり、広告を出す側が、生活を提案するという意識がありました。そして、消費者は、その商品を買うことによって、「こういう夢のある生活ができるのだろう」と購買意欲を掻き立てられてきました。しかし、やがて、消費者は、買いたいものが特にないという状態になります。広告はそれでも購買意欲を喚起しようと、さまざまな趣向をこらしていきます。それが、一つは「オモシロ広告」であり、他方では、メールのスパム広告に見られるような「やたらに大量広告」であり、安さだけが取り柄のような「安売り広告」である、となっているのが現在の状況です。
 第二段落は、原因1と体験実例。「その原因は第一に、広告そのものにあるではなく、広告すべきモノ自体が生活への提案力をなくしていることにあるのではないか。私も、テレビでいろいろなコマーシャルを見て、面白いと思うものはあるが、それによって買いたくなるというものはあまりない。」
 第三段落は、原因2と自然科学実例。「原因の第二は、マスメディアを通した広告よりも、クチコミの情報に信頼感が置かれるようになったからである。」または、「原因の第二は、広告に提案された生き方よりも、一人ひとりが自分なりの生き方をめざすようになったためである。」など。
 自然の例になぞらえると、巨大化した恐竜は地球環境の変化に対応できずに滅びていった。今のマスメディア広告の現状は、インターネットという新しい哺乳類の登場を前に、恐竜が最後の生き残りをかけて変身しようとしている姿ではないか。」
 第四段落は、反対理解と自作名言。「確かに、広告が新しい生き方を提案する分野はなくなったわけではない。しかし、広告全体に、生活提案力がなくなっているのに、依然として大量の広告が溢れている。インターネットビジネスのモデルも、そのほとんどは「無料サービスプラス広告料収入」だったが、それらの多くは既に破綻している。モノを売るために広告があるのではなく、まず売りたいものがありその手段として広告があるという原点に戻るべきだろう。」

12.1週 
●本来、特許制度は(感)
 内容:特許制度は、発明者にも、その発明を利用する者にも、また社会全体にも利益を与える。イギリスが産業革命を迎えようとしていた18世紀、日本は日用品の改良さえ禁止される鎖国体制にあった。
 解説:日本では、新しいものを発明しようとする人は、ちょっとおっちょこちょいだと思われる傾向にあります。これも江戸時代のお触れ書きの影響がまだ残っているためかもしれません。
 特許制度は、これまで多くの発明を発展させてきました。しかし、制度というものには必ずその制度を悪用するマイナス面も付随してきます。特許制度の先進国アメリカでは、数学の公式が特許として申請されています。いまもし、インドで0(ゼロ)を発明した人がその特許権を主張したら、その人は特許で莫大な財産を得るでしょう。なんと言っても0(ゼロ)を使うたびにその人の特許料を払わなければならなくなるからです。しかし同時に、社会はこの0(ゼロ)の特許権のためにその発展に大きなブレーキがかけられるでしょう。ノーベルはダイナマイトの特許で大きな財産を得ましたが、フランクリンは自分の発明したストーブの特許を放棄しみんなに安く利用してもらうことを考えました。特許制度を無制限に拡張すると、それは社会全体の利益と一致しなくなります。一時、ドメイン名を商売にする人がいましたが、自分で使いもしない有名な名前を多数登録しておき、企業がそのドメイン名を使うときに高値で売るというものでした。特許制度の行き過ぎは、これからもかたちを変えて問題になるでしょう。
 しかし、逆に、いまのインターネットの世界では、違法コピーが氾濫しています。音楽や画像やゲームソフトは、すべて0と1のデジタル情報に還元されていくらでもコピー可能なものですから、オリジナルなものを尊重する仕組みがなければ、新しいものを作る人はいなくなってしまいます。コピーできないようにする技術や、小額の決済が簡単にできるようにする技術が開発されつつありますが、まだ十分なものではありません。
 発明を尊重し、その発明を社会にうまく生かす仕組みを作るためには何が問題かということで考えていきましょう。
高2 12.1週のヒント ●本来、特許制度は(感)
 第一段落は要約と社会問題の主題。社会問題は、現代の日本の問題と考えることが大事です。ここでは、「享保の時代の観念が今も私たちの社会に残っているのではないか」という問題になるでしょう。例えば、IT産業では、デファクト・スタンダードの変化が頻繁に起こります。ある土俵で勝利したと思っているうちに、土俵そのものが別のところに移動していたというようなことが起こります。また、産業の垣根が取り払われ、全くの部外者がこれまで平和に共存していた業界に突如登場するということもよく起こります。こういう激動の時代にあっては、変化は善だという積極的な価値観がなければ生き延びることはできません。
 しかし、日本には、変化よりも安定を志向する社会風土があります。そういう風土がどこから来るのかということが展開部分になります。
 第二段落は、原因1と体験実例。「その原因は第一に、日本の社会の横並び意識である。クラスで何かを決めるときも、周りの人の様子を見てから手を挙げるという意識が私たちには根強い。」社会批判は、他人の批判ではなく自分も含めた社会の批判という姿勢で書いていきましょう。
 第三段落は、原因2と自然科学実例。「第二に考えられる原因は、日本の社会が、一部の製造業を除いてまだ海外との直接の競争にさらされていないことである。オーストラリアは、大陸から切り離されて独自の進化を遂げたために、今でも有袋類が支配している。外部との接触のないところでも進化はあるが、その進み具合はきわめて遅い。」
 第四段落は、反対理解と自作名言。「確かに、特許によって、新たな参入者に対する障壁を作るという、社会進歩に反するような特許の利用の仕方もある。しかし……。」「特許とは……ではなく、……である。」

12.2週 
●九二年度末の時点で(感)
 内容:規制は、政官業癒着の構造を磐石のものとする主因である。規制の中には、安全、環境保全、弱者保護、経済的不正の防止、景観保全、自然保護などをねらいとする「必要」な規制が数多くある。しかし、あってもなくてもいいような規制、健全な自由競争を阻害する規制、不必要にきびしすぎる規制、利権の温床となる規制など、緩和ないし撤廃することが望ましい規制が、少なくとも過半を占めているとみてよい。
 解説:日本の社会は、問題が起こるとすぐに規制で対応しようとします。規制は初めは善意から出発するのですが、やがてその規制を既得権とする業界を生み出し、規制が自己目的化していきます。これには、いったん制度や法律ができると、なかなか変えたがらないという日本人の性格もからんでいるかもしれません。
 今日の社会というと話が大きくなりすぎてわかりにくいという場合は、学校などの身近な例を通して、規制のもたらす問題点を考えてみましょう。
高2 12.2週のヒント ●九二年度末の時点で(感)
 第一段落は、要約と意見(社会問題)。「多すぎる規制が問題だ。(そのままですが)」
 
 第二段落は、その原因と体験実例。「その原因は、第一に、日本社会に根強い過保護的な文化にある。海外で電車に乗ると、日本の駅のアナウンスのように、「白線の内側まで……」などというお節介なことはほとんど言わない。日本人は、世話を焼きすぎると思った。」
 
 第三段落は、原因2と自然科学実例。「第二の原因は、日本が戦後、欧米に追いつくために弱者保護の政策をとらざるをえなかったという事情もある。規制というのは、一種の温室だ。温室で外界と隔離されると、そのときは快適なように見えても、長い間には適応力が低下してくる。自然の例で言うと、大陸から切り離されて進化したオーストラリアでは、コアラのような動物が繁栄した。かわいいからいいけど。」
 
 第四段落は、反対理解と自作名言。「確かに、弱者を守る規制は大切だ。しかし……。真の規制とは、現状を固定化するためのものではなく、独占禁止法のように現状を活性化させるためのものでなければならない。」
 
 
Re: 高2 12.2週のヒント ●九二年度末の時点で(感)
 無駄な規制は、街のあちこちで見ることができます。その最たるものが、公園によくある立て札です。「犬を連れて入ってはいけません。」とか「ここでボール遊びをしないこと。」とか、「芝生に入るな」とか。いったい、誰が何をするための公園なのでしょうか? 
 「体験実例」を書くためのヒント。「その原因の1つは、日本人には自己責任の意識が薄く、何か起こった時、他人のせいにしがちだからだ。」例えば、川や海にある「遊泳禁止」の立て札。本来ならば、危険かどうかは本人が確認し、万一のことがあればそれは泳いだ自分の責任であると思えればいいのでしょうが、「遊泳を禁じていない自治体の責任だ」などということになって、賠償問題が起きたりするものですから、「それならば最初から禁止しておこう」ということになります。
 「体験実例」は、他人のせいにしやすいこと。例えば、朝寝坊したのを、「お母さんが起こしてくれなかったからだ!」などと逆ギレしたことはありませんか。教科の成績が悪いのは、「先生の教え方が悪いから。」もてないのは「女の子(男の子)達に見る目がないから。」(笑)など。

12.3週 
●日本人にはボランティア精神が希(感)
 内容:日本人には、ボランティア精神が希薄で、ボランティアのシステムを社会的に定着させるのは困難ではないかとの意見がある。しかし、日本には、仏教の因果応報の考え方があり、「困ったときはお互いさま」という相互扶助の精神がある。ここに日本的なボランティア活動が根づく地盤があると思う。
 解説:日本でも、しだいにボランティア活動が活発になってきました。しかし、まだボランティアが日常的に根づくというところまでは行っていません。この原因を考えてみましょう。
高2 12.3週のヒント ●日本人にはボランティア精神が希(感)

 第一段落は、要約と社会問題。「ボランティア活動は盛んになってきているが、まだ日本では、ボランティア活動が日常生活には根づいていない。自分たちの社会を自分たちで作るという意識を持つことはこれからますます重要になっている。」
 
 第二段落は、原因1と体験実例。原因は、この長文に書いてあることをそのまま生かしていけばいいです。「第一の原因としては、地域社会の中堅となる世代が、会社の仕事で忙しすぎるという事情がある。例えば、私の父も、平日は深夜まで帰ってこない。」
 
 第三段落は、原因2と自然科学実例。「第二の原因としては、日本人は旗振り役になることが苦手な人が多いということである。自然の例で言うと、ヒツジの群れに一頭のヤギがいるだけで、ヒツジたちはオオカミが来てもパニックにならないということだ。日本人というヒツジの群れに必要なのは、ヤギとなる人物なのではないだろうか。」
 
 第四段落は、反対理解と自作名言。「確かに、日本には日本なりの助け合いの精神がある。また、ボランティア活動に任せるばかりでなく、行政が責任を負う仕事ももちろんある。しかし、これからはもっとボランティア活動で自分たちの社会をよくしていこうという意識が必要になるのではないだろうか。ボランティアとは……ではなく……なのである。」