ひとこと(8月2週)
十人の一歩と一人の十歩
アジサイの広場
○○○○あう大1
 日本において、年功序列、終身雇用から実力主義、年俸制へ転換する企業が
少しずつ増加している。「ビックバン」という言葉が象徴しているように、ア
メリカ型の経済への移行が日本において始まっている。今日に至るまで日本で
は「日本社会主義」と言われるように、アメリカと比較すると、トップの人間
と一般的なサラリーマンとの所得格差が小さい平等社会であり、これが高度経
済成長において大きな役割を果たしたといわれている。つまり日本は「十人で
一歩」前進する構造になっていたといえる。一方アメリカは、所得格差が非常
に大きく、一部の高所得者が、国家の経済を支えている「一人で十歩」前進す
る構造になっている。
 
  日本経済は年功序列、終身雇用によって成り立っており、これらによって
社員の企業に対する忠誠心と結束力をを高め、高度経済成長の原動力となった
。また所得格差が小さいためほとんどの日本国民がある程度の購買力を持って
おり、このことが消費を拡大させた。しかし一人が十分の一歩進むことによっ
て一歩進む社会で他人より少しでも多く進むことは許されない。したがって高
所得者に多額の税金を課せられ、所得を向上させる魅力がなくなり、国民の労
働意欲を低下させる。また一人だけ勝手に他人とはことなる方向へ進むことも
許されないため、多様性がなくなり、活力をなくすことになる。
 
  では、アメリカのように一人が十歩進む社会はどうであろうか。アメリカ
においては、自由競争が徹底しているため、一定の所得が保証されないが、高
所得者が多額の所得税を課せられることもないため、「やりがい」のある経済
体制が成立しているといえる。しかし、高所得者でも努力を怠れば低所得者に
なり、また低所得者が高所得者になることができる周流が機能している場合は
有効であるが、低所得者と高所得者が固定化し始めると活力を失うことになる
 
  確かに、あらゆる神話が崩壊しつつある日本の経済において十人が一歩前
進する構造は「護送船団方式」として批判されているし、熾烈な競争を展開す
るアメリカのような場合は、集団で一つのことを行うことが難しくなる。大切
なことは、敗者に対する受け皿を作り、復帰する機会を与えることよって高所
得者と低所得者との間に周流を作り、市場を活気付かせることではないだろう
か。