ひとこと(7月1週)
先生
イチゴの広場
加奈子かけ
 
 私の周りには、学校の先生になりたい人が結構多くいる。
 
 印象に残っているのは、小学校のとき担任だったせんせいだ。その先生は教
室で煙草を吸ったり、生徒と給食中将棋をして負けるとイライラして生徒に八
つ当たりした。宿題を忘れてくると黒板用の定規でお尻をたたく「けつピン」
をよくされたりもした。しかし、その先生のことを悪く言う人は、私の知る限
りでは、いない。きっと先生が生徒をいじめているのではないことを、みんな
知っていたんだと思う。小学校を卒業してからも、たびたび先生に会いに行っ
た。同じように、特に用事があるわけでもなく先生のところへ足を運ぶ生徒は
私だけではなかった。
 
 数年後、その先生が学校を移ることになったことになった。先生のすること
が「体罰」であると父兄からクレ-ムがついたから、という噂もあった。離任
式で卒業生が見送りに行くことなんて滅多にないことだと思うが、十人近くの
人が集まっていた。
 
 その先生は「先生」としては、あまりよくなかったかもしれない。生徒が真
似をしたらいけないことを、生徒の前でしていた時もあった。けれどそんな先
生を慕う人は多かった。いい先生だったと生徒の記憶にのこることももちろん
大切だし、授業もちゃんとやってもらわないと困る。それと同じくらい、先生
とのくだらなくも楽しい思い出も大切である。私がその先生を好きなのは、一
緒にいて楽しかった記憶があるからだと思うから。
 
 だから先生を目指している友達には、生徒から人間的に好きだと言われるよ
うな先生に、なってほしい。