ひとこと(6月3週)
「人間以外の動物」を読んで
アジサイの広場
乱月あし高3
 
 人間は混沌と化した世界に対して文化という装置を創り出すことによって再
び秩序をとり戻してきた。そのため異なる社会が生きている世界は別の世界で
あり、同一の世界ではないのだ。われわれは、全人類が例外なく持っている言
語という文化装置を通してしか現実を構成することができない。そのため、文
化は、そのはみ出した部分を、消極的には「見えないもの」として、積極的に
は禁忌(タブー)として抑圧する必要があるのだ。
 
 私たち日本人でさえ黒人を見るときにどうしても違和感を覚えてしまってい
る。南北戦争時代の白人と黒人の対立もなるべくしてなったのかもしれない。
しかし今日、国際化が進んだこの世界で、少しでもそんな感覚を覚えることは
もはや許されざることになっている。日本においてもそんな偏見が真の国際感
覚を養うのにあたって妨げとなるだろう。
 
 私たちが持っている、本能的に拒むものを否定するという性質は仕方がない
ものといえる。そうしなければ人間自体、ここまで繁栄してこれなかっただろ
う。だからこの性質をどうこうするのではなくて、意識的にさまざまなものと
接して、慣れていくしかないのだ。私ももともと黒人を見るのを好きではなか
った。さまざまな先入観と文化的背景の違いがそうさせたのだろう。しかし彼
らの運動神経、リズム感、黒人霊歌の素晴らしさに接するにつれ、だんだん慣
れてきた。今では失礼ながら凝視してしまうに至っている。
 
 黒人が奴隷として強制的に虐待を受けていたという過去のせいか、白人は今
でも変なプライド意識を持っているようだ。17世紀から始まり、半世紀もの
間続いたアパルトヘイトによって、確かに彼らは非常につらい経験をしたこと
だろう。しかし今となってはまったく関係のないことだ。むしろ自分たちの立
場に酔いしれている私たちが見習うべき点を彼らは多く持っている。
 
 確かに自分たち固有の文化を保つには、ある程度のプライド意識と、排他的
な態度を持たなければならない。しかし独自の文化を守る反面、国際化社会に
対応していかなければならないのが現状だ。しかもそこに一方的な差別や無意
味な偏見などあってはならない。天上天下には多くの尊敬すべき人物がいる。
そしてその延長線上に真の国際化社会があるのだ。
 
 お互いの良いところを誉めあって、尊重しあっていくことが重要なのだ。