先頭ページ 前ページ 次ページ 最終ページ
高齢化社会には
アジサイの広場
冨田あよ高1
 冬に蚊に刺されたという人はいないだろうか。刺されたとしたらそれはきっ
とチカイエカという蚊である。実はこの蚊は工業化が進む前まで日本にはいな
かったのである。それまでは林に住むアカイエカという蚊であった。それが工
業化に伴って減って行く林に変わって防虫剤に耐えるように自らの体を変化さ
せることによって、冬でも温かい都会に住むようになったのである。もし仮にこ
の蚊がアカイエカのままであったなら現在まで生き残れているという保証はな
いであろう。
 
 これは自然環境の変化に適応、進化をした動物の話だが、人間の世界にもそ
のようなことは言えるであろう。社会は絶えず変化している。その変化が急激
であるればその変化に制度の改革が追いつかなくなった時、そのギャップは大
きな問題を生み出すであろう。そこで変化に追いつく制度の変革ということが
大変重要になってくるのである。
 
 ではどうすればよいのであろうか。一つに個人個人が思想を持つということ
である。変革には必ず我慢が伴う。現在ヨーロッパが「ユーロ」として経済的
、政治的に統合されつつあるがこの変革には15年もの期間を必要とした。こ
の間経済統合において得をした国はほんの数ヶ国に過ぎない。ほとんどの国は
統合の為、不利益に我慢してきたのである。これからもしばらくはこの状況は
変わらないという。各個人が客観的な思想を持っていなければ変革というもの
は成しうるものではないであろう。
 
 しかし現状はなかなかそううまくはいかないようである。現在日本が抱えて
いる社会的変化に高齢化社会の問題がある。現在、最高齢国であるスウェーデ
ンは65歳以上の人口の割合は18%であるが、国民所得に対する税金と社会
保障への拠出金は70%を越えているという。日本が30年後には高齢者比率
が28%と見込まれていることを考えると現在の社会保障制度ガ破綻すること
は確実である。ここで変革が必要であるわけだが世代間の利益の不一致がこの
変革を足踏みさせているというのが現状であろう。修学旅行の時に学生に「年
金は世代と世代の助け合い」と書かれた定規を配っているグループがあったが
本当の助け合いとは何か本当に考えているとは思えないというのが正直な感想
である。ただのエゴとならない為には各個人が思想を持ち、するべき我慢はす
るということが大切である。そこで始めて年齢を越て社会に参加するいことが
できる本当の福祉国家が生まれるであろう。それが助け合いということではあ
るまいか。
 
 確かに社会の変化の中である程度保守的な態度というのが大切である。崇徳
天皇は社会の変化に伴ってあまりに制度の形を変化させたガために律令制度の
崩壊の混乱を助長することになった。しかし脱皮できないヘビは滅びるという
ように保守的な態度による調整は必要であっても社会の変化にそぐわない制度
が残ることは変革のさいの不利益を増大させることになるであろう。高齢化を
一例とする社会の変化は見えないところで着々と進んでいる。社会が大きく変
化していくなかで変化に見合うチカイエカになることが求められている。