ひとこと
科学文明の発達
アジサイの広場
武照あよ中3
 私の化石棚に四本のホオジロザメの歯が入っている。縁が薄く透き通って青
緑色で私が特に気に入っているものである。私は日曜日に時々仲間と化石採集
をする。ひどいときは片道六時間以上電車に揺られることもある。しかし化石
を探すときのワクワクする気持ち。戦利品をザックに入れて帰る時の満足した
気分はいつまでも心に残る。我々は経験を大切にする生き方をしていくべきで
あろう。
 なるほど、博物館の化石は質も高く、きれいに処理されて展示されている。
しかし博物館に展示されている化石は時に空しく見えるのである。博物館の化
石は我々に多くの情報を提供する。だがその化石からは探す人の苦労や喜びは
感じられない。つまり経験はその人の生きる喜びと直結しているのであろう。
 では経験を大切にする生き方をするにはどうすればよいのだろう。それは心
を開いておくことであるとであろう。経験とはべつにエベレストに上ったり南
極に行ったりしなければすることのできないものではない。登校中に心に残る
風景を見れば立派な経験である。経験するきっかけはそこら中に転がっている
のである。
 画家のダグラス・ヘンダーソンは旅をするとき絶対写真機を持っていかない
という。それは写真機を持っていくと簡単に自分の見る風景を撮ることができ
ると思い、結局何も見ることができないからであるという。心に響いた風景は
その場に座りスケッチをするのである。心を開いておくことの大切さを見るこ
とができるであろう。
 確かになにか知ったり学んだりするには知識としていろいろな情報を取り入
れることも重要である。しかし我々の人生に意味を与えているともいえる生き
る喜びは自分の経験によって生まれるのである。私の化石はつまらないものか
も知れない。値段をつければ一円もつかないだろう。しかしその化石は私の経
験の象徴なのである。