ひとこと
産業構造の中で
アジサイの広場
吉見こと大1
 小さい工場のなかで、油にまみれて黒くなりながらも一生懸命働く、というのが産業の本当の姿で
ある。経済の高度成長期には、このような工場が、いたるところにあった。つまりは経済の高度成長期
は、このような工場があったからこそ成り立ったのである。現在の日本では、どうだろうか。今は情報
産業が主流である。国内産業は海外へ移転し、労働力なる若者の工業離れも甚だしい。日本は農業、
工業と物を作ることで、ここまで成長してきた。物を作ることを手放したら、私たちには何が残るの
か。
 まずは国内産業に力を注ぐことだ。一般にいうと産業の空洞化は悪いとみなされるが、はたしてそ
うだろうか。国内で需要がないから海外で生産し、まだ製品が普及していないから海外で販売するの
である。そして国内では新製品の開発に全精力を注ぐ。実際に日本の企業というのは研究開発投資を
必死でやっている。日本は過去三十年間で研究開発投資が十倍以上に増加している。それに比例して
製造業の売り上げ金額も三倍以上に増加しているのだ。
 私は友人と将来の職業について、よく話す。するときまって楽な仕事がいいな、という結論に達する
。楽な仕事というのは俗にいうデスクワークである。デスクワークも楽ではないが、いわゆる3Kより
かは、と思うのである。これは私に限らず多くの人がそうだろう。では、そう思ってしまうのはなぜ
か。それは小さい頃から物を作る楽しさを知らないからであろう。自分が想像したものを自分の手で
創造し完成させる。人はこうして飛行機や車を作り上げた。小さい頃から物を作ることが楽しい、と
思わせる教育も必要だろう。
 日本は昔から物を作ることで成長してきたのだから、このまま製造業を末永く維持していくことが
必要である。産業とは、ただ単に物を製造するのではなく、その国のすべての基盤となる物を作るの
である。いくら情報化社会といっても様々な集積回路やコンピュター部品を作り出す産業がなければ
成り立たないのである。油にまみれて黒くなりながら工場で働いている人たちは自分らが、この国を
支えているんだ、という自信に満ち溢れているのである。