a 読解マラソン集 9番 もう少し、むこうのほうが ti3
「もう少し、むこうのほうがいいわね。」
「このへんかしら……。」
 きれいなポスターをはっているのは、お店の広告こうこく係の人です。
 おおぜいのおきゃくに来てもらい、しなものをたくさん売るために、スーパーでは、いろいろなくふうをしています。
 しなものを広告こうこくするためや、たのしいふんい気をだすためのポスターをつくって、お店にはるのも、その一つです。
 クリスマスなど、一年の行事にあわせて、お店の中をきれいにかざりつけることもあります。
 たのしそうで、きれいで、買いやすいお店にするために、お店では、いろいろなアイデアを考えます。
 売るためのくふうの中でも、スーパーの人たちが、いちばんしんけんに考えるのが、特売とくばい品です。
 毎日、おきゃくのよろこびそうな、安くてよいしなものを見つけだし、ねだんを安くして売りだすのです。
 そのため、魚の係、肉の係、野さいやくだものの係の人たちが集まって、店長といっしょに、どんなしなものがよいか、特売とくばい品をきめる会議かいぎをします。いくら安くても、おきゃくがよろこばないものでは売れませんから、みんな、しんけんです。
 こうして、特売とくばい品がきまると、入り口やけいじ板など、よくめだつところに、ポスターをはりだして、おきゃくに知らせます。
 このスーパーには、自動車で買いものにくる人のためのちゅうしゃ場があり、あんないをする係の人がはたらいています。
 店内がいつもきれいなように、そうじをする係の人もいます。
 このお店は、朝の十時から、夜の十時まで開いています。
 ですから、お店の人たちは、こうたいではたらきます。その人たちの、はたらく時間をきめる係の人もいます。
 あした売りたいしなものを、本社へれんらくする係の人もいます。
 このように、一つのスーパーのお店で、毎日、おおぜいの人が、いろいろなしごとをしています。
 でも、スーパーではたらく人は、これでぜんぶではありません。お店とはべつのビルではたらく本社の人たちもいます。

福生ふくおたけし「スーパーの一日」)
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a 読解マラソン集 10番 わたしがおもしろいとおもったのは、 ti3
 わたしがおもしろいとおもったのは、「テレビで、現実げんじつにはできない経験けいけんがあじわえるか」という質問しつもんにたいして、「そうおもう」があきらかに半数をこえ、「そうおもわない」のは四人に一人くらいでした。わたしたちが直接ちょくせつ体験たいけんできることは、かぎられているので、テレビがわたしたちにかわって体験たいけんさせてくれること、また、テレビが現実げんじつ以上いじょう現実げんじつ劇的げきてきにつくりあげて体験たいけんさせてしまうことに、人びとはおそらく気づいていて、このような回答がでてきているのだとおもいます。
 しかし、「テレビがあることで、生きかたや行動の手本がえられる」とこたえた人は過半数かはんすうにとどかず、「そうおもわない」とこたえた人は三人に一人で、テレビで生きかたの手本をとかんがえているひとはおおいとはいっても二人に一人になりません。テレビを人の生きかたのうえでぜったいに重要じゅうようなものとはかんがえていないといえるかもしれません。
 この点は、「テレビはひとことでいえば、どんな感じのものですか」という質問しつもんにたいして、「あれば便利べんりという程度ていどのもの」というこたえが過半数かはんすうをこえ、「なくてはならないもの」というこたえを二〇パーセントぐらいうわまわっていることからもこのことはうらづけされているようにおもわれます。
 テレビの影響えいきょうについては人びとはどのように感じているのでしょうか。
 テレビ、新聞、ラジオ、週刊しゅうかんなどをひっくるめて、マスコミというよびかたがされていますが、そのようなマスコミ全体のなかでテレビの影響えいきょうはどんな位置いちをしめているのでしょう?
 まず、「衣食住いしょくじゅうなど、人びとの生活のしかたに、いちばん影響えいきょうをあたえているものは、どれだとおもいますか」という質問しつもんにたいしては、テレビをあげる人がまさに圧倒的あっとうてきにおおく、それぞれ十パーセント以下いかの新聞、週刊しゅうかん、ラジオをはるかにひきはなしています。ところが、「政治せいじや社会問題についての世論せろん」については、
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テレビとこたえるものがやく半数で、新聞とこたえるものとほとんどかわりません。この点では新聞の影響えいきょうもおおきいと感じられているわけです。なお、週刊しゅうかんとラジオはたった一パーセント台でした。
 さらに「マスコミがつたえていることは、ほぼ事実どおりだとおもうか」という質問しつもんにたいして、「そうおもう」が「そうおもわない」よりすくなくなっています。マスコミへの不信ふしんがかなりおおくみられているわけです。この点は、「どちらかといえば、いろいろな情報じょうほうがありすぎて、まどわされることがおおい」という回答が三人に一人ぐらいはいるのと合致がっちしているようです。
 マスコミの報道ほうどうがかならずしも事実をつたえていないとすれば、それにふりまわされるようなことがあってはならないということになります。いかがわしいとすれば、事実や真実をみきわめる必要ひつようがあります。
 人びとはマスコミへの不信ふしんをもちつつ、さらにそれにのせられる――うごかされる――ことに不安ふあんももっているのです。
「人びとの意見は、知らないうちにマスコミのいうとおりにうごかされていることがおおいか」という質問しつもんにたいして、「そうおもう」が四人に三人ぐらいで、「そうおもわない」をはるかにしのいでおおくのこたえをよせています。
 人びとがマスコミにたいして意外とおおく、批判ひはんてき意識いしきをもっていることがわかります。これはだいじにしなければならない意識いしきだとおもいます。
 近年、テレビの社会てき影響えいきょう力についての専門せんもんてきな研究の分野でも、テレビの影響えいきょうが「強力」であるということがほぼ定説ていせつとなってきています。わたしたちは、やはり、ひとりひとりがまず「テレビをみる目」をつくり、やしなうことが必要ひつようなのです。

佐藤さとうたけし「テレビとわたしたち」)
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a 読解マラソン集 11番 このところ酸性雨が ti3
 このところ酸性さんせい雨が地球規模きぼ環境かんきょう問題となってきたのも、ヨーロッパを中心として、きゅう西ドイツ、オランダ、スイス、イギリス、デンマークなどで森林が大きな被害ひがいをうけていることが、テレビや新聞などで知らされてからです。これらの国では、森林面積めんせきの半分以上いじょうの木が、マツ枯れか などの被害ひがいをうけています。
 カナダでは、シロップをとるカエデの木に、いちじるしい被害ひがいが出ています。ニューヨークのアジロンダックの山林地帯ちたいで、赤トウヒは林の半分以上いじょうが、すでにかれてしまいました。中国は一九七○年にはいり工業化をすすめ、いまや年間一○おくトンの石炭をエネルギーげんとして燃やしも  、その結果けっか酸性さんせい雨によって四川しょうの美しい我眉山がびざんのスギがすがたを消しはじめ、そのやく九○%が被害ひがいをうけています。
 日本ではどうだったのでしょうか? 四日市石油コンビナートや水島などの近代公害こうがいよりも、はるかまえの公害こうがいの原点といわれた足尾あしお製錬せいれん周辺しゅうへんの森林は、大正初期しょきまでに六○○ヘクタールがはげ山となったのです。木を育て、木を切って生活する林業経営けいえいができなくなった面積めんせきは、一六○○ヘクタールになってしまいました。秋田県小坂銅山どうざんでは、一九一○年ごろに森林の被害ひがいがひどくなり、被害ひがい面積めんせきは一一万五○○○ヘクタールになったのです。また、茨城いばらき県の日立銅山どうざんは、一九一五年から一九二八年あたりまでに三万五○○○ヘクタールに被害ひがいをもたらし、アカマツ林は一万ヘクタールがかれてしまいました。
 愛媛えひめ県の別子べっし銅山どうざんは、一六九一年にどうをほり、精練せいれんを始めました。明治めいじのはじめには製錬せいれん工場を大きくしました。その結果けっか、ムギやイネなどのあらゆる農作物、森林に大きな被害ひがいをおよぼしたのです。一八九九年のことですが、森林がかれ、はげ山となったところへ大雨となり、山くずれを引きおこし、五一三名のとうとい命がうばわれたのです。
 山に木がなくなると、雨は地下へもぐらず、山はだをドッと流れ
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だすので、洪水こうずいがおこります。あまりの被害ひがいのため、一九○五年べつ銅山どうざんは、四国の新居浜にいはまから瀬戸内海せとないかいにうかぶ無人島むじんとう四阪島しさかじまへ、製錬せいれん所をうつすことになりました。
 新居浜にいはまから三○キロメートルもはなれた四阪島しさかじまへ工場をうつしたから、もう被害ひがいはないものと信じしん 製錬せいれんを始めました。四阪島しさかじまの工場のえんとつからふきだした大気汚染おせん物質ぶっしつは、瀬戸内海せとないかいの海上を、風にのって流れます。海の上をゆっくり流れながら、海面から蒸発じょうはつした湿気しっけ亜硫酸ありゅうさんガスなどがどんどんとけこみ、ガス体よりも濃度のうどはこくなっていきます。ガスよりもどくの強い酸性さんせいのきりとなり、四国の海岸にやってきて、四国の陸地りくち、山などにぶつかります。こうして、大気汚染おせん物質ぶっしつとその酸性さんせいのきりは広がっていきます。
 つまり、海の上は水平で、風速一秒間に三〜四メートルのときは、着物を着るときのおびのようになって流れていくのです。三○キロメートルもはなれた四阪島しさかじまのえんとつから出た、大気汚染おせん物質ぶっしつとその酸性さんせいのきりは、四国に上陸じょうりくして、帯状おびじょうから扇状せんじょうになって広がります。濃度のうどはうすまりますが、汚染おせん物質ぶっしつは風の方向まかせで、四国の瀬戸内せとうちがわの海岸のいたるところを、おそうことになったのです。

(谷山鉄郎てつろう酸性さんせい雨がふっている」)
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a 読解マラソン集 12番 空気のよごれ、 ti3
 空気のよごれ、つまり大気汚染おせんを実感できるのは、まずお天気がいいのに見はらしが悪く、遠くが見えないとか、空が青くないというときでしょう。これは空気中をただようこまかいチリやスス(浮遊ふゆう粒子りゅうしじょう物質ぶっしつといいます)が原因げんいんです。この状態じょうたいがひどいときはスモッグといわれます。
 スモッグは目にみえる大気汚染おせんですが、目にみえない物質ぶっしつによってもたらされる大気汚染おせんもあります。みなさんは光化学スモッグということばを聞いたことがあるでしょう。こちらは硫黄いおう酸化さんか物とかチッ酸化さんか物という目にみえない物質ぶっしつ原因げんいんです。
 かつてはこうした大気汚染おせん原因げんいんとなる物質ぶっしつは、主に工場の煙突えんとつから出るけむりの中にふくまれていました。それで工場を中心とした都市では、ひどい大気汚染おせんが発生し、ぜんそくなどの病気がおこりました。
 これはたいへんだということで、工場の煙突えんとつからはきれいなけむりしか出してはいけないということがきめられました。いまでは、煙突えんとつの下にけむりをきれいにする機械きかいがついています。
 それで、以前いぜんよりはましになったのですが、それでも都市の空気はよごれていますね。そうです、問題は自動車の排気はいきガスです。
 もちろん、自動車の排気はいきガスも、きれいにして出すようにきめられています。ですから自動車の排気はいきガスは、昔とくらべるときれいになっています。
 けれども、排気はいきガスは二酸化にさんかチッ呼ばよ れる物質ぶっしつがふくまれていて、これがいまの都市部の大気汚染おせんの主な原因げんいんとなっています。また、トラックやバスなどの大型おおがたのディーゼル車から出る黒いけむりも問題になっています。
 自動車一台一台の排気はいきガスをきれいにする技術ぎじゅつてきなくふうはどんどん進められています。でも、自動車の数は、どんどんふえています。たとえば、一九九二年(平成へいせい四年)度まつでは、全国で六、四五○万台(トラックやバス、バイクをふくみます)にもなっています。
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 その自動車の多くは、住宅じゅうたくがいから都市の中心部への通勤つうきん利用りようされたり、都市の中での移動いどうに使われたりしています。また、人の移動いどうのためだけではなく、さまざまな品物をお店などに納めるおさ  ことや、宅急便たっきゅうびんなどでも使われています。
 コンビニエンス・ストアなどは、大きなスーパーやデパートなどとちがって、それぞれの店の倉庫そうこが広くないので、品物を補充ほじゅうする納品のうひんのための車が、一日に何回もまわっています。
 こうしたこまめな配送のおかげで、わたしたちはつくりたてのおべんとうを買ってたべることができるのですが、その分、たくさんの自動車が走りまわっていることになります。
 その結果けっか、都市の中心部はもとより、住宅じゅうたくがいの大きな道路でも、いつも渋滞じゅうたいがおこっています。渋滞じゅうたいがおこると、自動車は動いたり、とまったりをくりかえすことになります。
 自動車は動きはじめるときにエンジンの回転数があがり、排気はいきガスが多く出ます。特にとく 、トラックやバスなどの大型おおがたのディーゼル車ですと、ブワーッという感じで黒いけむりが出ます。ですから、スムーズに走っているときにくらべると大気汚染おせんがひどくなるというわけです。

阿部あべおさむ・市川智史さとし「ふくれあがる大都市」)
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