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読解マラソン集 9番 免疫の連携プレー se3
私たちの身の周りには、細菌、かび、寄生虫など、病気の元になるものがたくさんあります。しかし、私たちは病気の元に出会ったからといって、すぐに病気にかかってしまうわけではありません。なぜなら、体の中には、病気の元になる病原体から体を守るシステムが備わっているからです。このシステムのことを免疫システムといいます。
体の中には、免疫細胞という細胞が何種類もあり、病原体が体の中に入ってくると、それを攻撃してとりのぞく働きをします。これにはいろいろな方法があります。まず、病原体を丸ごと食べてしまう方法です。血液の中には、赤血球と白血球がありますが、免疫を担当しているのは白血球です。白血球の仲間の好中球は、食いしん坊な細胞で、体の中に入った細菌などを食べて消化してしまいます。しかし、好中球だけでは病原体を退治できない場合があります。
風邪で熱を出したときなど、わきの下や首筋がはれて、さわるとぐりぐりを感じる場合があります。これはリンパ節がはれている状態です。このリンパ節は、体のあちこちに約六百個もあります。免疫システムの主役は、このリンパ節と、リンパ節どうしをむすぶリンパ管です。リンパ管の中にはリンパと呼ばれる黄色っぽい透明な液体が流れています。その中には免疫細胞のリンパ球が入っていて、病原体が入ってくると、リンパ節のところで待ち受けて戦いを始めます。
では、リンパ球はどのように病原体と戦うのでしょう。まず、ヘルパーT細胞が、自分の体に本来あるはずのないものが入って来たことに気づきます。そして、攻撃を始めなさいという命令をB細胞に出します。B細胞は、抗体という武器をあやつることができる細胞です。B細胞が作り出した抗体は、効率よく病原体を攻撃することができます。抗体に攻撃されて弱った病原体は、マクロ
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ファージが食べてしまいます。みごとな連携プレーです。
そのほか、ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)も、病原体を攻撃することができます。T細胞やB細胞が見逃すような病原体でも、「何か変だな」と思えば攻撃します。また、T細胞やB細胞は、攻撃を始めるのにある程度時間がかかりますが、その間も、ナチュラル・キラー細胞はずっと攻撃をし続けてくれます。体を守るために、免疫システムは、二重三重に防御をしていることがわかります。
それぞれの細胞の連携プレーによって、病原体がほぼ全滅すると、T細胞の仲間が攻撃をやめるように全体に命令を出します。この命令が出ると、戦いは終了です。
おどろいたことに、T細胞もB細胞も、一度出会ったことのある敵は決して忘れません。同じ敵が二度目に体に入ってきたときは、一度目よりもずっとすばやく攻撃をしかけることができます。たとえば、はしかの病原体に初めて出会ったとき、B細胞は、抗体を作るのに時間がかかるので、その間に熱が出たり病気のさまざまな症状が出たりします。しかし二度目からは、B細胞がはしかの病原体を覚えているので、すぐに抗体を作り、病原体を退治することができます。抗体によって、あっという間に病原体を後退させてしまうのです。ですから、二度目からは、はしかの病原体が体に入っても熱が出るようなことはありません。このことを「はしかの免疫がある」と言います。
免疫は、明るい気持ちでいると強くなることが知られています。免疫さえあれば、細菌や寄生虫に囲まれていても元気に暮らしていくことができます。試しに、カビだらけでにこにこ笑っている自分の姿を想像してみてください。何だか楽しくなってくるでしょう。 言葉の森長文作成委員会(κ)
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読解マラソン集 10番 音のしくみ se3
暗い夜道を一人で歩いているとき、後ろから誰かが近づいてきたら、何となく気配でわかるものです。何も見えないのに、後ろの様子がわかるのはなぜでしょう。このとき感じる気配というのは、実は音なのです。真っ暗闇の中では、目よりも耳が活躍して、音によって周りの様子を感じ取っています。
目隠しをしていても、どの方向から音がするのか私たちは知ることができます。それは、耳が二つあるおかげです。右耳と左耳で聞いている音の大きさの違いから、音のする場所を判断することができるのです。これをうまく利用したのが、ステレオスピーカーです。目をつぶってステレオから流れる音楽を聴いていると、自分の前でオーケストラが演奏しているような感じがします。一つ一つの楽器の左右の音の強さを、位置に応じて変えているため、いろいろな位置から音が聞こえてくるように思えるのです。たとえば、右のスピーカーと左のスピーカーから同じ強さでピアノの音が聞こえれば、ピアノは舞台の中央にあるように感じます。また、左のスピーカーからバイオリンの音が強く聞こえれば、左のほうにバイオリニストがいて演奏しているように感じるのです。
音の正体は、空気の振動です。空気の濃い部分と薄い部分が、リズミカルにくり返されると、それが音になります。たいこを叩くと、たいこの皮が押されて、反対側の空気を押しつぶします。すると、その部分の空気が濃くなります。次に、押された皮は反動で元にもどります。このときに空気をひきもどし、その部分の空気は薄くなります。皮が元にもどる力で、この動きがくり返されると、空気の濃い部分と薄い部分がリズミカルに現れます。たいこを叩くと音が鳴るのは、このためです。
バイオリンやギターなどの弦楽器も、たいこと同じ原理で音を出します。ただ、弦は細いので、たいこのように周りの空気をたくさんふるわせることができません。そこで、弦の振動を板に
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伝えて、板全体がふるえるように工夫されています。そうすることで、細い弦を使っていても大きな音を出すことができるのです。
空気が振動すれば、それはすべて音になって聞こえるのでしょうか。空気の濃い薄いがくり返される速さの単位を、ヘルツといいます。たとえば、一秒間に百回くり返されれば、百ヘルツです。このヘルツが大きければ大きいほど、音は高くなります。人間が聞き取れる音は、二十ヘルツから二万ヘルツの間で、それよりも高い音や低い音は聞こえません。ところが、こうもりはもっと高い音を聞き取ることができます。昔は、こうもりには声がないと思われていましたが、調査の結果、人間には聞こえない高い声を出しているということがわかりました。コウモリはこの音の反射を利用して、暗闇の中でもぶつからずに飛ぶことができたのです。昔の人は、コウモリがこうもりこうな動物だとは知らなかったでしょう。
私たちの生活の中で、音は大切な役割を果たしています。ものの位置を確かめるレーダーの役目をしているのはもちろんですが、音はコミュニケーションの役割も担っています。言葉を使えば人と人の心を伝えあうことができます。さらに、生活を豊かな楽しいものにしてくれるのが音楽です。私たち人間は、多くのすばらしい楽器を作り出し、音の組み合わせを芸術にまで高めたのです。楽器は、音の世界を豊かにする画期的な発明だと言えるでしょう。
言葉の森長文作成委員会(κ)
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読解マラソン集 11番 ヘモグロビンと葉緑素 se3
ホラー映画や推理ドラマでは、「したたる真っ赤な血」の映像に、怖い場面が想像されて、ドキドキしたり、時には「きゃーっ」と叫んでチャンネルを変えてしまうことがあります。赤いペンキがたれていても、私たちは血を連想してしまいます。では、血の色はなぜ赤いのでしょうか。
じつは、血の色は必ずしも赤とは限らないのです。ふだんあまり血まで見ることはありませんが、エビやタコ、イカなどは青い血を持っています。人間や多くの動物の血の色は確かに赤ですが、この赤い色は、意外なものに関係があります。それは、鉄です。では、どうして、鉄と血が関係あるのでしょうか。
人間の血液は、赤血球という赤い色のつぶと血漿という黄色の液体でできています。赤血球は、丸いお団子の真ん中をへこませてつぶしたような形をしていて、大きさは髪の毛の太さの十分の一ほどです。この赤血球が、私たちの体の中で酸素を運ぶ大切な役目を果たしているのです。
赤血球の中には、ヘモグロビンという赤い色素がいっぱいに詰まっています。これが、血の赤い色の正体です。ヘモグロビンは、ヘムとグロビンが合体してできています。グロビンが透明なのに対して、ヘムは赤い色をしています。そして、このヘムの真ん中に鉄が含まれているためにヘムが赤い色をしているのです。
ちなみに、青い血のエビやタコでは、鉄は含まれていません。エビやタコの血の中には、鉄の代わりに銅が含まれています。銅というのは、十円玉を作っている金属です。銅は、そのままではやや赤い色をしていますが、血の中では青い色の素になるのです。
細胞が活動するには酸素が必要で、活動するといらない二酸化炭素ができます。ヘモグロビンと血液は、このいらない二酸化炭素を代わりに受け取り、また肺へともどっていきます。そ
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して、また肺で、二酸化炭素と酸素を交換して運んでくるのです。
ところで、この働き者のヘモグロビンですが、意外なことに、とても似たものが植物の中にあるのです。それは、植物の葉の中にある葉緑素です。葉緑素は、葉が緑色に見えている素になっているものですが、こちらもとても働き者です。太陽の光を浴びると、葉緑素は、私たちが捨てている二酸化炭素と水を使って、デンプンという養分と酸素を作り出します。地球上に酸素がいっぱいあるのは、植物の葉緑素のおかげなのです。
そして、不思議なことに、この葉緑素と私たちの血の中にあるヘモグロビンのヘムは、構造がとてもよく似ているのです。葉緑素は、ヘムの中の鉄の代わりに、真ん中にマグネシウムという金属を持っています。ヘモグロビンと葉緑素は、どちらも動物と植物が生きていくのに大切なものですが、それがこのように似ているということは、もしかすると動物も植物も、みんな仲間なのだということなのかもしれません。
私たちが赤い血の代わりに、葉緑素でも生きていけるようになったら、太陽の光に当たるだけで、食事をしなくても済むようになるでしょう。そうしたら、太陽でお腹いっぱい、めでたいようなどということになるかもしれません。しかし、いろいろなおいしい料理を食べる楽しみはなくなってしまいます。また、ホラー映画で血がたれていても、
「だあれ、こんなところに青汁こぼしたの。」
の一言で終わってしまいます。ドラキュラも、緑色の液体を飲み干して、こう言うようになるかもしれません。
「まずい! もう一杯。」 言葉の森長文作成委員会(τ)
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読解マラソン集 12番 薬だった砂糖 se3
時計が動くには電池が必要なように、私たちが生きて活動するためには、エネルギーが必要です。そのエネルギーを、私たちはご飯を食べることで体に取り込んでいます。お米やパンの中に多く含まれているデンプンは、糖質と呼ばれるものの仲間で、人間の体の大事な栄養の素です。砂糖も、この糖質の仲間です。デンプンも砂糖も、いちばん小さい単糖類というのものに分解されて体に吸収され、私たちのエネルギーになりますが、脳や神経は、単糖類の一種であるブドウ糖だけしかエネルギーとして利用できません。つまり、脳や神経を働かせるために、糖質はなくてはならないものなのです。脳や神経は、砂糖のおかげで、さっと動くことができるというわけです。
最近では「太る」とか、「糖尿病になる」とか、「虫歯になる」などと言われて、ちょっと悪者扱いの砂糖ですが、じつは私たちにとってはなくてはならない調味料です。昔のヨーロッパでは、栄養豊富な薬として使われていたこともありました。昔、砂糖は、現在の石油のように輸入しなければならない高価な食品だったのです。また、日本でも、江戸時代ごろから砂糖を輸入し始めましたが、最初のころ、砂糖はやはり薬として高い値段で輸入されていました。
どうして砂糖を輸入しなければならなかったかというと、砂糖は最初、サトウキビから作られていたからです。サトウキビというのはイネ科の植物で、熱帯や亜熱帯などの暑い地方でしか栽培できないので、ヨーロッパなどでは作ることができませんでした。日本では、現在は沖縄と南西諸島で作られています。
サトウキビは、高さが人間の背の倍ぐらい、茎の太さが手首ぐらいの、竹とススキを足して二で割ったような姿をしています。
サトウキビは暑い地方でしかとれなかったので、ヨーロッパで力
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のあったスペインやポルトガル、イギリスやフランスなどは、そういう暑い地方を自分たちの植民地にしました。そして、その地方の人々や、アフリカから奴隷として連れてきた人たちを働かせて、砂糖を作らせたのです。
しかし、そういう植民地を持たない国は、サトウキビ以外のものから砂糖を作る研究を進めました。そして、今のドイツであるプロイセンの研究者が、サトウダイコンにも砂糖が含まれていることを発見しました。フランスのナポレオンがサトウダイコンの栽培に力を入れると、砂糖はヨーロッパ中に広まりました。
サトウダイコンは、テンサイやビートとも呼ばれ、カブに似た植物で、この根から砂糖をとることができます。サトウキビと違って、涼しい気候でよく育つので、日本では北海道で栽培されています。ロシア民話に出てくるカブは、たいていはこのサトウダイコンのことです。
現在、砂糖の約七割は、やはりサトウキビから作られています。残りの三割が、サトウダイコンから作られています。また、サトウカエデの幹に穴を開け、そこから出てくる液を集めて煮詰めたものがメープルシロップで、カナダのものが有名です。
「宿題しなさい。」と言われて、「ちょっと待って。おやつを食べてから。」というのは、脳に栄養を与えてよく働くようにするという意味で正しいことです。「腹が減っては戦はできぬ」と言いますが、それは脳にとっても同じです。
砂糖は今、サトウキビやサトウダイコンやサトウカエデから取れますが、将来、品種改良が進んで、ニンジンやゴボウやショウガからも取れるようになるかもしれません。
「どうですか。ショウガさん。」
「さあ、どうでしょうが。」
言葉の森長文作成委員会(τ)
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問題
se-03-4 問題1
問1 読解マラソン集9番「免疫の連携プレー」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■好中球は、病原体を丸ごと食べてしまう。
1 ○ 2 ×
解答1
se-03-4 問題2
問2 読解マラソン集9番「免疫の連携プレー」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■B細胞は、いつでも抗体を作るのに時間がかかってしまう。
1 ○ 2 ×
解答2
se-03-4 問題3
問3 読解マラソン集10番「音のしくみ」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■右耳と左耳は、いつも同じように音を感じる。
1 ○ 2 ×
解答3
se-03-4 問題4
問4 読解マラソン集10番「音のしくみ」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■コウモリの声は、人間が聞き取れる限界の二万ヘルツより高い。
1 ○ 2 ×
解答4
se-03-4 問題5
問5 読解マラソン集11番「ヘモグロビンと葉緑素」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■赤血球の中には、銅と鉄が含まれている。
1 ○ 2 ×
解答5
se-03-4 問題6
問6 読解マラソン集11番「ヘモグロビンと葉緑素」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■植物の葉緑素もヘモグロビンと似ているので、赤血球として使える。
1 ○ 2 ×
解答6
se-03-4 問題7
問7 読解マラソン集12番「薬だった砂糖」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■暑い地方でしか作られないサトウキビからとる砂糖は、昔は輸入にたよっていて、高価だった。
1 ○ 2 ×
解答7
se-03-4 問題8
問8 読解マラソン集12番「薬だった砂糖」を読んで次の問題に答えましょう。
次の文を読んで、○だったら1を、×だったら2を選び、その数字を書きなさい。
■植民地を持たない国で研究したが、やはり砂糖はサトウキビ以外からは作れなかった。
1 ○ 2 ×
解答8