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読解マラソン集 1番 脳のネットワーク se3
脳は、人間の体の中でもとくに大切な器官で、がんじょうな頭蓋骨の中におさめられ、念入りに守られています。人間のからだの、ほとんどすべての動きは、脳の命令によるものです。また、体の動きだけでなく、感情、思考、創造、言語などの知的活動も、脳が行なっています。その重さは、生まれたばかりの赤ちゃんで約四百グラム、大人はその三倍ぐらいあります。
しかし、人間よりももっと重い脳をもつ動物もいます。たとえば、ゾウの脳は約五キログラムもあり、クジラにいたっては十キログラムにも達するものがいます。もし脳の重さだけで頭のよさが決まるとすれば、私たち人間は、ゾウやクジラよりも頭が悪いということになってしまうので、重さだけが頭のよさを決めるわけではなさそうです。
人間の脳では、大脳とよばれる部分がとくに発達しており、その表面にはたくさんの皺があります。大脳の皺をていねいにのばすと、その大きさは新聞紙1ページ分にもなります。それだけの広い面積をもつ大脳の神経細胞の数は、百四十億個と言われています。では、この神経細胞の数が、頭のよさを決めるのでしょうか。
実は、二十歳をすぎたころから、人間の神経細胞はだんだん減っていきます。その数は、一日に十万個から二十万個です。しかも、神経細胞は新しく作られることはありません。
もし、神経細胞の数が頭のよさを決めるのであれば、二十歳ぐらいの人が一番頭がよく、その後、神経細胞が減っていくにしたがって、次第に頭の働きがおとろえていくということになります。しかし、六十歳や七十歳になっても、りっぱな仕事をして、すばらしい活躍をしている人はたくさんいます。計算してみると、二十歳の人とくらべると、六十歳の人は二十億個以上も細胞が減っていることになりますが、その分、頭の働きが悪くなっているということはないのです。
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人間の頭が働くために大切なものは、神経細胞の数だけではありません。神経細胞は、一つ一つが別々に働くのではなく、いくつもの細胞が手をつなぐようにネットワークを作っています。そして、私たちが勉強をして頭を使えば使うほど、たくさんの神経細胞が手をつなぎ、新しいネットワークを作ってくれます。ぎゃくに、使わないネットワークは、次々と消えていきます。たとえば、自分でものを考えず人にたよってばかりいると、せっかく作ったネットワークがどんどん消えてしまうおそれがあります。神経細胞の数が減っても頭の働きはおとろえませんが、このネットワークが減ってしまうと、判断する力や新しいことを考える力がおとろえていきます。
人間の脳は、使い続けるかぎり新しい神経細胞のネットワークが作られ、何歳になってもそのすばらしい働きを失わずにいられます。そして、自分の頭の中に、どんなすばらしい神経細胞のネットワークを作るのかは、自分しだいというわけです。
すばらしいネットワークを作って、ワークワークした人生を送りましょうねっと。
言葉の森長文作成委員会(κ)
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読解マラソン集 2番 恐竜はなぜ絶滅したか se3
恐竜は、およそ二億三千万年前に出現しました。しかし、今から六千五百万年前に、なぜか突然のように、地球上から姿を消してしまいました。なぜ恐竜は、絶滅してしまったのでしょうか。その理由について、研究者たちから多くの考えが出されています。
そのひとつは、巨大隕石説というものです。宇宙から巨大な隕石が落ちてきて、地球に衝突したのではないかという説です。そのため、ガスや細かいちりが発生して地球をおおいつくし、半年近くも太陽光線をさえぎりました。まっくらな大地で植物は枯れ、気温も下がりました。植物をエサとする草食恐竜たちは、飢えと寒さで次々と倒れ、死んでいきます。すると、その草食恐竜をエサにしていた肉食恐竜たちも死に絶えます。こうして、地球上の恐竜たちは絶滅してしまったとする考えです。
ほかに、火山噴火説という説もあります。そのころ、地球のいろいろなところで火山が爆発しました。噴出した二酸化炭素で、地球は急激に温暖化しました。このため食べられる植物が、すっかり枯れてしまったのです。さらに、噴火によって塩素が大量に放出され、地球を取り巻くオゾン層も破壊されました。この結果、有害な紫外線が地上に降り注ぎ、恐竜をはじめとする多くの生物が死に絶えたという説です。
さらに、ストレス説という考えもあります。恐竜の数がどんどん増え、地球はいたるところ恐竜だらけになってしまいました。満員電車に乗っているような状態です。このストレスで、異常のある卵が生まれるようになりました。また、たくさんの恐竜たちが植物を食べつくし、エサも少なくなってしまいました。このため、恐竜の数が減っていき、ついには絶滅したというのです。
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おもしろいところでは、便秘説というものもあります。そのころ、地球上に多くはえていたソテツは、草食恐竜の大切なエサでした。このソテツには、草食恐竜が排泄をするために必要な成分がふくまれていたのです。ところが自然環境の変化で、このソテツは少なくなってしまいました。草食恐竜たちは便秘になり、死んでしまいました。すると肉食恐竜たちもエサがなくなり、生き続けることができません。あの大きな恐竜たちが便秘で絶滅してしまったなんて、運が悪くてかわいそうな、しかしちょっと情けないような話です。
さて、どの考えが一番正しいのでしょうか。実は、それはわかっていません。恐竜絶滅の理由は、まだまだ大きな謎につつまれています。
しかし、恐竜は一億六千万年以上もの長い間、この地球上でゆうゆうと生きました。一億六千万年。気が遠くなるような、長い年月です。わたしたち人類は、誕生してから今日まで、まだ数百万年しかたっていません。恐竜の生きた時間をかりに一年とすると、人類の生きてきた時間はわずか数十日ほどという計算になります。今、我がもの顔にこの地球を支配している人類も、恐竜に比べたら、まだほんのわずかしか生きていないのです。
そう考えると、恐竜は十分にこの地球上で生きつくしたとも言えるでしょう。わたしたち人類も、恐竜のように長くたくましく生きていきたいものです。そして、少なくとも人類が便秘で絶滅することだけは避けなければなりません。それは、ちょっと格好悪いからです。
言葉の森長文作成委員会(γ)
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読解マラソン集 3番 筋肉の働き se3
私たちの体を動かすために、筋肉はとても大切なものです。筋肉というと、きたえぬかれた肉体をもつボディビルダーを思い浮かべるかもしれませんが、筋肉は、動物にとって生命活動をいとなむためになくてはならない重要な組織なのです。
私たちが走ったり歩いたりジャンプしたりするために、筋肉が働いているのは言うまでもありませんが、運動するときに働く筋肉は、骨格筋といって、骨にしっかりとむすびついて骨を動かしているものです。この筋肉は、私たちが動かそうと思えば自由に動かすことができます。顔にも、表情を作り出すたくさんの筋肉が複雑に入り組んでいます。これは骨格筋ではありませんが、自分の意志で動かせる筋肉です。笑い顔や泣き顔や困った顔など、心の動きに合わせて私たちはいろいろな表情を作ることができます。
筋肉が働くのは、運動するときだけではありません。私たちの内臓が毎日動いているのも、内臓の壁を作っている筋肉のおかげであり、たとえば心臓が動くのは心筋という筋肉が動いているからです。この心筋は、生まれてから死ぬまで、休むことなく一定のリズムで動いて、体中に血液を送っています。内臓の筋肉は、自分の意志で動かすことはできません。
自分の意志で動かせる骨格筋について考えてみましょう。腕を曲げると、りっぱな力こぶができる人がいます。筋肉があまりない女の人でも、さわってみると、少しは力こぶができているのが確認できます。この力こぶは腕の筋肉が縮んだときにできるもので、筋肉が力を発揮するのは、このように縮んだ状態のときです。
オリンピックの陸上選手を思い浮かべてください。短距離を走る選手の筋肉は、みごとに発達していて、いかにも力強い感じです。しかし、マラソンのような長距離の選手はどうでしょう。
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ほっそりとして、華奢な体つきの選手がほとんどです。あの細い体のどこにあれだけのパワーがひそんでいるのかと、不思議に思えるほどです。では、マラソン選手が、短距離選手のように筋肉を発達させたら、もっと記録をのばせるのでしょうか。そうはいきません。
私たちの骨格筋には、縮み方が速く瞬時に大きな力を出せる速筋と、縮む速さがおそいかわりに持久力にすぐれた遅筋があり、短距離走者には速筋が多く、長距離走者には遅筋が多いといわれています。それぞれの必要な筋肉の種類が異なるわけです。遅筋は、赤い色のタンパク質を多くふくんでいるので「赤い筋肉」、速筋は「白い筋肉」とよばれることがあります。
おもしろいことに、「赤い筋肉」「白い筋肉」は、魚にもあります。みなさんは、マグロの身が赤く、ヒラメの身が白いことを知っているでしょう。マグロやカツオのように長距離を泳ぐ魚には遅筋が多くついているので、肉が赤身になり、ヒラメなど海底にじっとしていることの多い魚はほとんど速筋なので、肉が白身になります。つまり、マグロは長距離走者、ヒラメは短距離走者に似ているというわけです。
もし、マグロの赤身とヒラメの白身の両方を持っている魚がいたらどうなるでしょう。身が赤と白なので、おめでたい魚として、お正月のカマボコのかわりに使われるようになったかもしれません。
「マグロさん、どうでしょうか。」
「マー、グロテスク。」
「ヒラメさん、どうですか。」
「そんな魚、ヒラメえなあ。」
言葉の森長文作成委員会(κ)
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読解マラソン集 4番 伝書バト se3
伝書バトは、信頼のおける郵便配達員のようです。伝書バトに届けてもらう手紙は、足につけた小さな筒の中に入れたり、背中にくくりつけたりします。伝書バトは、託された手紙を、遠く離れた相手のもとへ届けることができます。二百キロメートルぐらいの距離を飛ぶのが普通ですが、時には千キロメートルも離れた場所まで飛ぶこともあります。千キロメートルというと、だいたい東京から北海道、又は東京から九州ぐらいまでの距離になります。これほど離れた相手先に、間違わずにたどりつける能力にはおどろきます。
しかし、こんなに優秀な伝書バトにも弱点があります。それは、いつも同じ届け先にしか手紙を運べないことと、あまり重いものは運べないことです。伝書バトがめざすのは、手紙のあて先に書かれた住所ではなく、自分が生まれたハト小屋です。つまり、伝書バトの手紙の配達は、帰巣本能を利用したものなのです。
地図も持たずに何百キロも離れた地点に正確にたどりつくのは、人間にとっては、たいへん難しいことです。伝書バトは、なぜ自分の巣のある場所に迷わずに帰ることができるのでしょう。かつては、地上に見える目印と、太陽の場所、それに地球の磁気をたよりに飛び、夜になると星を目印に進むのだろうと言われてきました。最近の研究によると、伝書バトの方向感覚は、すぐれた嗅覚のおかげでもあると言われています。
遠くからでも、迷わずに自分の巣に帰ることができるハトの性質を、大昔から人間は知っていました。古代エジプトでは、漁船が伝書バトを使って、漁の成果を海から陸に知らせていたそうです。一度放たれた伝書バトは、休むことなく何百キロも飛び続けるため、電話やメールがない時代は、最も速い通信手段でした。
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近代にいたるまで、伝書バトは、軍事用や報道用の通信手段として数多く使われてきました。また、離れ小島などの輸送が難しい地域に、薬や血清を運んで、医療の手助けをしていた伝書バトもいました。
現在では、通信手段として伝書バトが利用されることはほとんどなくなり、スポーツとしてのハトのレースが開催されている程度です。本来、帰巣本能にすぐれているハトですが、近年になって、レースに出たハトが戻ってこないことがだんだん増えてきました。優秀なはずのハトが、なぜか途中で迷子になってしまうのです。この原因は、はっきりとはわかっていませんが、携帯電話などの電磁波が影響しているという説があります。また、ハトの品種改良を行なった際、スピードばかりを重視して、方向感覚がにぶってしまったのではないかとも言われています。
それにしても、伝書バトの郵便配達には、ガソリンなどの燃料は一切使わないし、切手も不要です。ごほうびに豆をいくつか与えれば満足してくれる伝書バトは、環境にやさしい、すばらしく優秀な郵便配達員ではないでしょうか。
ハトと同じように身近な鳥に、スズメやカラスがいます。どうして伝書スズメや伝書カラスがいないかというと、スズメに手紙をつけると重くて前にすずめないからです。また、カラスに手紙をつけると、途中でゴミ箱に寄り、手紙のことを忘れてしまうからっす。
言葉の森長文作成委員会(κ)
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問題
se-01-4 問題1
問1 読解マラソン集3番「筋肉の働き」の長文を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 心筋は生きているかぎり休むことはない。
B 一般的にマラソン選手は速筋が発達している。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答1
se-01-4 問題2
問2 読解マラソン集3番「筋肉の働き」の長文を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A マグロやカツオなどの赤身の魚は速筋が発達している。
B すべての筋肉は人間の意志で自由に動かせる。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答2
se-01-4 問題3
問3 読解マラソン集3番「筋肉の働き」の長文を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 筋肉は伸びたり縮んだりするが、力を発揮するのは縮んでいるときだ。
B 内臓の筋肉の中にも人間の意志で動かすことができるものがある。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答3
se-01-4 問題4
問4 読解マラソン集3番「筋肉の働き」の長文を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 縮み方がゆっくりした筋肉ほど大きな力を出せる。
B 海底にじっとしている魚は、白身が多い。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答4
se-01-4 問題5
問5 読解マラソン集3番「筋肉の働き」の長文を読んで、次の問いに答えなさい。
遅筋の赤色のもとになっているものは何ですか。
正しい方を一つ選んで番号で答えなさい。
1 血液 2 タンパク質
解答5
se-01-4 問題6
問題6 読解マラソン集1番「脳のネットワーク」の長文を読んで、次の問いに答えなさい。
正しいものを一つ選んで番号で答えなさい。
1 脳が重いほど頭がよい。 2 勉強をすればするほど脳細胞の数は増える。 3 自分で考えないと神経細胞のネットワークは消えてしまう。
解答6
se-01-4 問題7
問題7 読解マラソン集4番「伝書バト」の長文を読んで、次の問いに答えなさい。
人間は、伝書バトの帰巣本能を大昔から知っていた。漁の成果を知らせるためにこの力が使われていたのは○○○においてである。
正しいものを一つ選んで番号で答えなさい。
1 古代エジプト 2 近代 3 離れ小島
解答7
se-01-4 問題8
問8 読解マラソン集4番「伝書バト」の長文を読んで、次の問いに答えなさい。
正しいものを一つ選んで番号で答えなさい。
1 伝書バトは、手紙のあて先を目指し飛んでいくことができる。
2 伝書バトが遠く離れた場所へも正確にたどりつくのはすぐれた嗅覚のおかげである。
3 最近では、環境が悪化し伝書バトの方向感覚がにぶってきている。
解答8