a 読解マラソン集 5番 星の一生 ka3
 夜空よぞらにはたくさんのほし輝いかがや ています。しかし、これらの美しいうつく  ほし永遠えいえん輝きかがや 続けるつづ  わけではありません。ほしにも一生があり、生まれたり死んし だりしています。ただし、ほしの一生は人間にんげんの一生とはくらべものにならないほど長くなが 、その寿命じゅみょう人間にんげんの一おくばいもあります。
 宇宙うちゅうのあちこちには、冷たいつめ  ガスやチリが集まっあつ  暗黒あんこく星雲せいうん呼ばよ れるものがあります。暗黒あんこく星雲せいうんは、その名のとおりひかり持たも ない黒いくろ くもです。実はじつ 、この暗黒あんこく星雲せいうんの中にはほしもとになる物質ぶっしつがたくさんあります。なにかのきっかけで暗黒あんこく星雲せいうん縮みちぢ 始めるはじ  と、ガスやチリが集まっあつ  てうずを巻きま はじめます。このうず巻き  ま ほしのたまごです。
 重力じゅうりょくによって更にさら 縮んちぢ でいくと、うず巻き  ま 中心ちゅうしん濃くこ なり、熱くあつ なっていきます。それは、やがて自らみずか ひかり放つはな ようになり、赤ちゃんぼし誕生たんじょうします。ふゆよる肉眼にくがんでも見ることができるオリオンの大星雲せいうんも、新しいあたら  ほしが生まれている場所ばしょです。星雲せいうんの中で、数え切れかぞ き ないほどたくさんのほしの赤ちゃんが輝いかがや ています。
 一人まえほしとして輝きかがや だしたほしその後  ご運命うんめい決めるき  のはおもさです。太陽たいようぐらいのおもさのほし最ももっと 長生きながい で、百おく年ぐらいはそのまま輝きかがや 続けつづ ます。その後  ご、年をとったほしは、ぐんぐんふくらんで大きくなっていき、それにともなって温度おんども下がるため、真っ赤ま かいろ変わりか  ます。さそりのアンタレスや、オリオンのベテルギウスは、赤くふくらんだおじいさんぼし代表だいひょうです。これらのほしは、むかし姿すがたとはすっかり変わっか  ているので、アンタレスも「あんただれです?」と言わい れてしまうかもしれません。
 巨大きょだいな赤いほしは、風船ふうせんのようにふくらんだりしぼんだりしながら、最後さいごには爆発ばくはつしてしまいます。爆発ばくはつのあとに残るのこ のは、小さな白色はくしょく矮星わいせい呼ばよ れるほしです。
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白色はくしょく矮星わいせいは、たいへん重いおも ほしで、そのほしから切り取っき と たマッチばこほどのかけらでも、人間にんげん持つも ことができません。ダンプカーでやっと運べるはこ  ほどです。
 太陽たいようよりも更にさら 重いおも ほしは、燃料ねんりょうをむだづかいするため、寿命じゅみょうすうまん年ほどしかありません。このようなほしが年を取っと てふくらむと、自分じぶん体重たいじゅうをささえられず、きゅうにつぶれて大きな爆発ばくはつ起こしお  ます。これを超新星ちょうしんせいの大爆発ばくはつ言いい ます。爆発ばくはつのあとに残るのこ のは、白色はくしょく矮星わいせいよりもっと小さな中性子星ちゅうせいしせいです。中性子星ちゅうせいしせいは、中身なかみ圧縮あっしゅくされたおそろしく重いおも ほしです。中性子星ちゅうせいしせいから、角砂糖かくざとうぶん切り取っき と てみると、そのおもさは一おくトンもあります。
 更にさら 重いおも ほし死んし だら、どうなるでしょう。巨大きょだいになったほしは、更にさら はげしく爆発ばくはつし、はげしくつぶれます。残っのこ ほしは、そのものすごい引力いんりょくのため、ひかりさえもそとへ出られなくなってしまいます。わたしたちは、この真っ暗ま くらほしを見ることはできません。ブラックホールと呼ばよ れるこのほしは、近づくちか  ものすべてをものすごい引力いんりょく吸い込んす こ でしまいます。それはまるで宇宙うちゅうにできた巨大きょだい落とし穴お  あなのようです。
 人間にんげんが生きているあいだに、一つのほしの一生を観察かんさつすることはできません。しかし、宇宙うちゅうには生まれたばかりのほしからにゆくほしまで、さまざまなほし輝いかがや ているので、これらを一つ一つ観測かんそくすることで、わたしたちはほしの一生を知るし ことができます。
 ほしも、人間にんげん同じおな ように、小学せい、中学せい高校こうこうせい成長せいちょうし、さまざまなかたち変化へんかしていくのです。そう言えい ば、動物どうぶつえんにもいました。オットせい

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(κ)
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a 読解マラソン集 6番 世界へはばたく「もったいない」 ka3
 ノーベル平和へいわしょうは、世界せかい平和へいわのために努力どりょくした人に贈らおく れるしょうです。二〇〇四年度ねんど受賞じゅしょうしゃは、ケニアのワンガリ・マータイさんでした。アフリカ人の女性じょせいがこのしょう受けう たのは初めてはじ  のことでした。
 マータイさんがノーベル平和へいわしょう選ばえら れた理由りゆうは、貧しいまず  女性じょせいたちにはたらきかけて、アフリカの砂漠さばくに三十年のあいだに三千まん本もの木を植えう たからです。
 アフリカでは、砂漠さばくが年々広がっひろ  ています。砂漠さばくになると、農作物のうさくもつ育たそだ ず、飲みの 水もなくなります。そのために、病気びょうき広がりひろ  、人々は更にさら 貧しくまず  なります。学校で勉強べんきょうもできませんし、からだ育ちそだ ません。
 一人の人間にんげんが木を一本植えう ただけでは、とてもそんな大きな問題もんだい解決かいけつできないと思うおも かもしれません。ところが、三千人の人が一本ずつ木を植えう たら、三千本の木になります。三千まん人の人が一本ずつ木を植えう たら、三千まん本の木が育ちそだ 、りっぱなみどりの森になるのです。 
 たくさんの木が植えう られた場所ばしょでは、料理りょうり作るつく ために燃やすも  まきも、すぐに手に入ります。土地とち豊かゆた になり、小さな動物どうぶつたちも集まるあつ  ようになります。また、空気がきれいになり、涼しいすず  木陰こかげもできます。
 ノーベル平和へいわしょう選ばえら れたマータイさんが、どうしたら自然しぜん守らまも れるかというはなしをしに世界中せかいじゅう回っまわ ているとき、日本ですばらしい言葉ことば聞きき ました。それは、「もったいない」という言葉ことばです。
 マータイさんは、かぎりある地球ちきゅう資源しげん守るまも ために、これまでつぎのことを世界せかいによびかけてきました。「むだづかいをしない」「ものはなんかいでも使うつか 」「古くふる なったものは新しいあたら  使い道つか みちをさがす」
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 「もったいない」という日本語にほんごは、この三つのよびかけをひとことで表しあらわ ていると、マータイさんは思いおも ました。そして、日本にはむかしから、稲刈りいねか をしたあとのワラをゾウリや細工物さいくもの利用りようしたり、ぬの端切れはぎ で子どものためのお手玉を美しくうつく  作っつく たりするという文化ぶんかがあることを知りし ました。「もったいない」という気持ちきも とともに、ふつうなら捨てす てしまうものも美しいうつく  ものに作り上げつく あ ていることに感心かんしんしたのです。英語えいごたような言葉ことばがなかったので、マータイさんは、「モッタイナイ」という日本語にほんごをそのまま使っつか て、世界せかいにこの日本語にほんご広めるひろ  ことにしました。 
 マータイさんは、日本語にほんごの「もったいない」だけでなく、自分じぶんくにのケニアの言葉ことば運動うんどうに入れています。それは、「ハランベー」という言葉ことばです。意味いみは「みんなで協力きょうりょくしよう」というものです。マータイさんがこころのささえにしていることわざには、こういうものもあるそうです。「空こそが限界げんかい」。空は、どこまでも広がっひろ  ているということで、「やろうと思えおも ばどこまでもやれる」という意味いみです。 
 わたしたちも、マータイさんにならって、みんなで協力きょうりょくして美しいうつく  地球ちきゅう作っつく ていきましょう。「はい。こえ合わせあ  て。」「ハランベー。」「ハランベー。」「ハラヘッタベー。」「ん?」

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(λ)
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a 読解マラソン集 7番 CDの仕組み ka3
 CD(コンパクトディスク)が登場とうじょうするまで、音楽おんがく録音ろくおんにはレコードを使うつか のが一般いっぱんてきでした。レコードは、プラスチックの円盤えんばん刻んきざ だでこぼこのみぞはり当てあ て、音を再生さいせいする仕組みしく 持っも ていました。CDは光ディスクひかり    とも呼ばよ れ、ひかり信号しんごうを音として再生さいせいする仕組みしく 持っも ています。
 CDに音を記録きろくするには、まず、音による空気のふるえをマイクで取り込みと こ 、それを電気でんき信号しんごう変えか ます。この電気でんき信号しんごうは、さまざまな大きさのなみかたちをしています。レコードでは、このなみの大きさをそのまま、レコードばん表面ひょうめん刻んきざ でいました。
 光ディスクひかり    への記録きろくは、この電気でんきなみをデジタル信号しんごう変えか 行いおこな ます。デジタル信号しんごうは、0と1の二つの数字すうじだけで成り立っな た ています。この二つの数字すうじ組み合わせく あ  で音のかたちや大きさを表しあらわ 、そのデジタル信号しんごう光ディスクひかり    記録きろくしていくのです。
 光ディスクひかり    は、見ただけでは表面ひょうめんはでこぼこしていません。これは、でこぼこしている記録きろくそうの上が、平らたい 透明とうめいなプラスチックで覆わおお れているためです。記録きろくそうはそのおくにあるアルミニウムのとても薄いうす そうです。ここには、ピットと呼ばよ れる、肉眼にくがんでは見分けみわ られないほど小さなくぼみがたくさんついています。光ディスクひかり    にじのように輝いかがや て見えるのは、たくさんの小さなくぼみに入って反射はんしゃするひかりが、それぞれのくぼみから出るときにいろいろな波長はちょういろ分かれるわ   ためです。
 音楽おんがく聴くき ときは、このアルミニウムのそう光線こうせん当てあ て、平らたい 部分ぶぶんとくぼみのある部分ぶぶん反射はんしゃするひかり変化へんかをデジタル信号しんごうとして読み取りよ と ます。この信号しんごうもと音楽おんがく映像えいぞう信号しんごう変えか て、わたしたちが見たり聞いき たりできるようにするのです。
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 ひかり使っつか 信号しんごう読むよ ので、光ディスクひかり    なん繰り返しく かえ 再生さいせいしてもその信号しんごう消えるき  ことはありません。また、デジタル信号しんごう使うつか ので、細かくこま  てくっきりとした音楽おんがく映像えいぞう記録きろくすることができます。
 ところで、CDによくある録音ろくおん時間じかんの74ふんというのは、なぜこんなに半端はんぱ時間じかんなのでしょうか。これは、日本で年末ねんまつによく演奏えんそうされる、ベートーベンの交響曲こうきょうきょくだいばん演奏えんそう時間じかんから決めき られたのだそうです。
 たまに、「カラスよけ」としてCDをぶら下げているのを見ることがありますが、あのキラキラした円盤えんばんの中に、こんなにたくさんの情報じょうほう詰まっつ  ているとは、カラスたちは夢にもゆめ  思わおも ないでしょう。カラスよけなんて、ヨケいなことするなと思っおも ているだけかもしれません。
「ところで、CDさん。いつもきらきら光っひか てきれいですね。」
「そんなこと言っい てもらうと、うれシィーディーす。」

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(τ)
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a 読解マラソン集 8番 文字の歴史 ka3
 わたしたちは、文字を使うつか ことで、自分じぶん意思いし相手あいて伝えるつた  ことができます。しかし、人類じんるい最初さいしょから文字を持っも ていたわけではありません。わたしたちの遠いとお 祖先そせんは文字を持たも ず、話し言葉はな ことば身ぶりみ  、手ぶり、音楽おんがく踊りおど まで使っつか て、意思いし伝えつた 合っあ ていました。
 文字が生まれる最初さいしょのきっかけは、ものかたちにかいたことでした。あるとき人間にんげんは、小さなをいくつもかいて、意思いし伝えるつた  ことを思いつきおも   ました。けれども、は人によって見方みかた異なること  ので、うまく伝わるつた  こともありますが、誤解ごかいされることも多かっおお  たことでしょう。また、いくら単純たんじゅんといっても、たくさんかくのはたいへんです。より簡単かんたんにかけるように、かたちはだんだん単純たんじゅんされていきました。
 最初さいしょの文字を発明はつめいしたのは、いまのイラクの南部なんぶ当時とうじはバビロニアとよばれていた地域ちいき住んす でいたシュメール人だと言わい れています。いまから五千年もまえのことです。シュメール人の文字は、簡単かんたんにした記号きごうのようなもので、その一つ一つに意味いみがありました。このような文字は、絵文字えもじとよばれています。絵文字えもじ使っつか 文章ぶんしょう書くか ためには、膨大ぼうだいかずの文字が必要ひつようです。これを使うつか のはたいへん難しくむずか  、またわかりにくいという欠点けってんがありました。
 そこで、それぞれの文字に意味いみ持たも せるのではなく、一つの文字に一つの音声おんせいをあてはめることを考えかんが た人々がいました。そうすれば、それほどたくさんの文字は必要ひつようなくなり、話し言葉はな ことばをそのまま写せるうつ  ようになるので、簡単かんたん使えるつか  ようになります。このような音だけを表すあらわ 文字を、表音ひょうおん文字といいます。文字は、どんどんから遠ざかりとお   単純たんじゅん記号きごうになっていきました。
 一つ一つの記号きごう意味いみ持つも 表意ひょうい文字は、絵文字えもじ象形しょうけい文字など、数多くかずおお ありましたが、どれもずっとむかし使わつか れなくなって
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しまいました。しかし、いまでも使わつか れている表意ひょうい文字があります。それは漢字かんじです。中国ちゅうごくには、多くおお の文学作品さくひん宗教しゅうきょう書物しょもつがあり、漢字かんじは、むかしからそれほど変わらか  ないかたち受けう つがれてきました。
 日本語にほんごには、表意ひょうい文字である漢字かんじと、表音ひょうおん文字のひらがな、カタカナがあり、それらを混ぜま て文を書き表しか あらわ ます。これは、世界せかい言語げんごの中でも特殊とくしゅで、外国がいこく人から見ると、たいへん難しいむずか  言語げんごです。
 大昔おおむかし、日本には文字がありませんでした。日本人が初めてはじ  使っつか た文字は、中国ちゅうごくから伝わっつた  漢字かんじです。最初さいしょは、話し言葉はな ことば日本語にほんご書くか 文章ぶんしょう中国ちゅうごく漢文かんぶんという状態じょうたいでした。漢字かんじばかりの漢文かんぶんは、多くおお の日本人にとってちんぷんかんぷん(漢文かんぶん)だったことでしょう。
 その後  ご漢字かんじ意味いみ無視むしして、読みよ だけを日本語にほんごの音にあてはめた万葉仮名まんようがな作らつく れました。これによって、話し言葉はな ことばを文字で表記ひょうきできるようになりました。さらに、漢字かんじかたちをくずして、一文字に一つ音をあてはめたひらがなができました。また、漢字かんじ一部分いちぶぶんをとったり、簡単かんたんかたちにしたりすることによって、カタカナも作らつく れました。
 現在げんざいでは、漢字かんじとかなをまぜて、自由じゆうに文を書き表すか あらわ ことができます。ひらがなの五十音だけで、文章ぶんしょうをつづることもできるし、どの言葉ことば漢字かんじ表すあらわ かは、書くか 人の好みこの 決めるき  ことができます。これは、日本語にほんご表記ひょうきのすばらしい特徴とくちょう言えい るでしょう。
 ただ、面倒めんどうだからといって、すべてひらがなで書くか と、思わおも 誤解ごかい招くまね ことがあるので注意ちゅういしましょう。たとえば、つぎの文はどのように読めるよ  でしょうか。「ははははははとわらった」(はははハハハと笑っわら た・ハハハハハハと笑っわら た)、「きのうおかあさんとぱんつくった」(パン作っつく た・パンツ食っく た) 長文ちょうぶん(κ)
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