私にとって、小学校五年生になるというのは恐怖だった。四年生まではぼーっとしていても何の問題もなかったのだが、五年生になるといろいろと面倒なことを背負わされるからだった。近所に住む、同じ小学校に通う子たちとの集団登校のときも、今までみたいに、ただ足をたがいちがいに出していればいい、というわけにはいかない。
「集団登校のときは下級生の面倒をみる」
これが五年生になった、小学生のさだめなのであった。五年生になったその日から、私は集団登校の副責任者。異様なくらいにおっとりした、六年生のタカシくんが先頭を歩いてみんなを引率し、五年生の私はいちばん最後を歩く。みんなに変わったことがないかを気にしつつ、毎日、登校しなければならなくなったのだ。
六年生と五年生にサンドウィッチされた下級生どもは、こちらの気も知らないで、わいわいいいながら勝手に歩いた。自分の前の子のランドセルをつかんで、前後左右に大きくゆすり、その子の首がカクカクするのを見て喜ぶ奴。道路わきのドブに、わざと片足をつっこんで、
「落ちる、落ちる」
とわめく奴。
(これから学校に行くっていうのに、何でこんなに元気なんだ、こいつ)
去年までだったら、こんな奴をみても、私はふふんと鼻でせせらわらってそっぽをむいていればよかった。しかし今年からは、ドブに片足をつっこむ奴には、
「ほら、ほら、ちゃんと歩いて」
と注意する。いちおうは、
「はあい」
と返事をするものの、三歩歩いたらまたドブに足をつっこんで、
「わあ、落ちる、落ちる」
とわめいていた。
「ほら、ちゃんとしてよ」
ちょっと声を荒げると、
「うるせえなあ、デブ」
などという。私は五年生になったとたん、だんだん体重がふえはじめ、顔も体もまん丸になってきたのだ。いちばん気にしているこ
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