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読解マラソン集 5番 赤身と白身 e3
赤身代表といえばマグロです。少し歯ごたえがあり、おすしの中ではなかなかの人気者です。一方白身代表といえばヒラメがあげられます。口の中でとろけるようになくなってしまうこの身は、大人の人に人気があります。どちらもおいしさにかわりはありませんが、同じ魚なのに、赤身と白身が存在するのはなぜでしょう。それは赤身と白身にはそれぞれ働きがあり、得意とする力が違うからです。
マグロの体は、赤色筋、遅筋とよばれる赤い筋肉が多くふくまれています。マグロは、赤色筋が多い血合筋とよばれる筋肉が特に発達しているので、酸素を使って活動を長く続けることができます。陸地から遠く離れた広い外洋域を泳ぐマグロには、同じ力を長く持たせてくれる赤身が必要なのです。赤身の魚にはカジキやカツオ、サバなどがあり、どの魚も筋肉もりもりといった力強さを感じさせます。
一方、ヒラメを代表とする白身は、瞬発力があります。ヒラメの体には、白色筋、速筋とよばれる白い筋肉が多くふくまれています。白色筋を動かすには、グリコーゲンとよばれる糖だけを使い、酸素を使いません。ですから、瞬間的に大きな力を出すことはできますが、すぐに乳酸という物質がたまり疲れてしまいます。ヒラメは、敵が近づくと、目だけをグルグルっと動かし身をひるがえして逃げます。それは一瞬の出来事で、敵は砂けむりの中、ヒラメの姿を見失います。瞬発力が命のヒラメにとって、この華麗なダンスは命がけの逃げ方なのです。
人間の筋肉にも、赤身と白身があります。筋肉の場所や役目によって割合がちがい、個人差があるようです。マラソン選手は赤色筋が多く、短距離走の選手は白色筋が多いと言われています。
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お寿司屋さんで魚を食べるとき、赤かったらマラソン型の魚、白かったら短距離型の魚と想像しながら食べるとまた味わいも深くなるでしょう。では、黒かったら。それは、ただ焦げているだけです。
言葉の森長文作成委員会(Ω)
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読解マラソン集 6番 古代エジプトの声 e3
エジプトのピラミッドの中のかべには、たくさんの絵文字がしるされています。タカやつぼ、人間や太陽のような、さまざまな絵で表された文字です。
大昔、エジプトにはピラミッドを作ったすばらしい文明がさかえていましたが、いつしかほろびてしまいました。それから二千年の間、その絵文字をどうやって読むのか、どんな意味があるのか、だれにもわからなくなっていました。
ところがあるとき、エジプトの砂の中から一枚の石の板が発見されました。そこには三種類のことばがきざまれていました。古代ギリシア語、昔のエジプト語、そしてピラミッドに書かれている絵の文字であるヒエログリフということばです。おそらく、同じ文章がこの三種類のことばできざまれているのではないかと思われました。この石の発見に、学者たちは興奮しました。当時、古代ギリシア語は知られていたので、それとくらべればヒエログリフが読めるかもしれないと思われたのです。この石にはロゼッタ・ストーンという名前がつけられました。
しかし、事はかんたんにははこびませんでした。いくら名だたる学者たちが考えて研究しても、だれもヒエログリフの読み方をとくことができなかったのです。
ロゼッタ・ストーンが発見されてから十年後、シャンポリオンというフランス人の少年が、お兄さんにすすめられてこのヒエログリフのなぞにとりくむことにしました。シャンポリオンは貧しい若者でしたが、もう既にたくさんのことばを学んでいました。
シャンポリオンは、それからもさらにたくさんのことばを学びながら研究を続けました。研究を始めてから何年もたったある日、ひらめきがおとずれました。この絵文字には、音だけを表す字と、意味だけを描いた字が両方まざっているのではないかと。
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私たち日本人は、意味を表す漢字と音を表すかなをまぜた文を使っています。例えば、「森だ」という言葉では、「森」が意味で「だ」が音です。「森」は字を見ただけで木が何本か生えている場所らしいことがわかりますが、「だ」には何の意味もありません。ヨーロッパの文字は、音だけを表すアルファベットで作られているので、文字に意味があるという発想がだれにもわかなかったのです。
シャンポリオンは、ヒエログリフの読み方の表を作り、発表しました。ほかの学者たちも、やがてそれが正しいとみとめるようになりました。
その後、シャンポリオンはあこがれのエジプトに行き、本物のエジプトの遺跡の中に入ることができました。そこで、シャンポリオンはぎっしりと描かれたヒエログリフに圧倒されて声も出ませんでした。なぜかというと、シャンポリオンにはそれらが自分が思っていた以上にすらすらと読めることがわかったからです。それはまさに「祖先からの声が聞こえてきたようだった」とシャンポリオンは記しました。二千年もの間眠っていた声が、あちこちから聞いたこともないすばらしい神話やエジプト文明の物語を語りかけてきたのです。シャンポリオンは感動のあまり、二時間も動くことができませんでした。
今では、エジプトに観光旅行すると、このヒエログリフ文字で自分の名前をつづったペンダントを作ってもらうことができ、おみやげに買って帰る人がたくさんいます。
言葉の森長文作成委員会(λ)
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読解マラソン集 7番 かわいい子には e3
ことわざは、昔から人々に使われてきた、決まった言い回しのことです。どれも短い言葉ですが、その中に人がよりよく生きるための知恵がたくさんつまっています。
「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあります。これは、子どもはかわいいから、楽しい旅行に連れていきなさい、という意味ではありません。
このことわざは、四百年も昔から使われていました。そのころは、飛行機もなければ電車も自動車もありません。旅といえば、歩くのが普通でした。野宿をしたり、追いはぎにあったり、危険がつきものだったのです。このことから、旅に出てつらい経験をさせたほうが、子どもをりっぱに成長させるという意味になりました。
「枯れ木も山のにぎわい」ということわざがあります。友だちの誕生会にお祝いにかけつけた大勢の人を見て、「枯れ木も山のにぎわいだね。」などと言ったら失礼です。
枯れ木のようにつまらないものでも、何もないよりはましだという意味で、自分に関することをへりくだって言うときに使うのが、このことわざです。
「馬子にも衣装」ということわざも聞いたことがあるでしょう。「まご」って何だろうと、まごまごしてしまいそうですが、この「まご」というのは子供を表す「孫」ではなく、馬に人や荷をのせて運搬することを職業とする人のことを指します。ですから、小さい子供にもかわいい衣装を着せなさいという意味ではなく、ちゃんとした衣装を身につければ誰でも立派に見えるという意味のことわざなのです。
言葉の森長文作成委員会(κ)
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読解マラソン集 8番 サルにつけたなまえ e3
大分県の幸島というところにいる野性のサルのむれは、人間がまいてやるサツマイモを海の波であらって、塩水の味つけをして食べることで有名です。
そのころ、日本ではまだあまりサルの研究をする人がいませんでした。しかし、サルが大好きだった京都大学の今西錦司さんたちは、幸島のサルを観察したくてやってきたのでした。ところが幸島のサルは、猟で狩られたことがあったために、人間をとてもこわがっていました。そこで京都大学の人たちは、サルを安心させようと、サツマイモをまいてやりました。そのサツマイモを、サルはあらって食べるようになったのです。それまで外国では、サルの研究をするとき、えさをまいてやるということはしていませんでした。
そのほかにも、外国の人がやっていないことを、この日本の若い研究者たちはしました。むれのサルに、一匹一匹名前をつけて観察したのです。たとえば、こわいボスザルには「カミナリ」、わかくて頭のいいオスザルには「ヒヨシマル」といったぐあいです。
日本での研究になれてくると、京都大学の人たちは、アフリカに行ってゴリラやチンパンジーの研究もするようになりました。
そして、研究したことを国際会議で発表しましたが、それを聞いて世界のサル学者たちはたいへんおどろきました。日本で、こんなにりっぱなサルの研究がされていたとは思っていなかったのです。日本のサルの研究がいちばん進んでいる、と世界のサル学者たちは感心しました。そんな世界のサル学者たちが最も驚いたのが、日本人がサルたちに名前をつけていたことなのでした。
世界の学者たちは、サルに番号しかつけていませんでした。それに、サルの顔や性格が一匹一匹ちがうことにも気がついていなかったのです。
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西洋の人は、人間と動物はまったくちがうものだと、はっきりわけて考えていました。けれど、日本人は昔から、人間と動物とはあまり変わらないものだという考え方だったのです。サルもタヌキもキツネも、日本人にとっては同じ村の仲間のようなものでした。だから、今の時代になっても、若い研究者はごく自然に、サルになまえをつけたのでした。サルを番号でよぶことのほうが、むしろやりにくかったのです。
最初のころ、世界の学者たちは、日本人がサルに近いからそういうことができるのだと考えていました。しかし、今では、世界中のサルの研究者たちは、この日本の方法を使って、サルたちに名前をつけて研究するようになっています。そのほうが、サルたちの社会や生活について、よく理解できることがわかったからです。
言葉の森長文作成委員会(λ)
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問題
e-02-4 問題1
問1 読解マラソン集5番「赤身と白身」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A マグロは歯ごたえがあり、ヒラメは口の中でとろけるようになくなる
B 魚の赤身は筋肉が多く、白身は脂肪が多い。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答1
e-02-4 問題2
問2 読解マラソン集5番「赤身と白身」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 魚には、赤身の筋肉と白身の筋肉があるが、人間には、赤身の筋肉だけがある。
B 白人には白い筋肉が多く、黒人には黒い筋肉が多い。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答2
e-02-4 問題3
問3 読解マラソン集6番「古代エジプトの声」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A ロゼッタストーンは、ロゼッタという人によって発見された。
B 古代エジプトでは、絵文字が使われていた。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答3
e-02-4 問題4
問4 読解マラソン集6番「古代エジプトの声」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A シャンポリンは、研究を始めてすぐにひらめきがおとずれた。
B 日本語で「森だ」という場合、「森」が意味で、「だ」が音である。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答4
e-02-4 問題5
問5 読解マラソン集7番「かわいい子には」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 「かわいい子には旅をさせよ」ということわざは、子どもはかわいいから旅行に連れていきなさい、という意味ではない。
B 今使われていることわざは、最近できたものが多い。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答5
e-02-4 問題6
問6 読解マラソン集7番「かわいい子には」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 「まごにも衣装」とは、「小さい子にはかわいい衣装を着せなさい」という意味である。
B 昔、馬に荷物をのせて運搬する仕事をする人のことを馬子と言った。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答6
e-02-4 問題7
問7 読解マラソン集8番「サルにつけたなまえ」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 外国では、サルの研究をするとき、サルに名前をつけるようなことはしなかった。
B 京都大学の人たちは、サルを安心させようと、サツマイモを洗って食べさせた。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答7
e-02-4 問題8
問8 読解マラソン集8番「サルにつけたなまえ」を読んで次の問題に答えましょう。
○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 日本人はサルに近いので、サルの研究が得意だった。
B 京都大学の人たちは、アフリカでゴリラやチンパンジーの研究もした。
1 A○ B○ 2 A○ B× 3 A× B○ 4 A× B×
解答8