題名 | 2005年の主な時事問題 103 |
名前 | 森川林 |
時刻 | 2006-01-12 15:35:28 |
時事問題は、いろいろな立場からの見方が可能です。
家庭で話し合って、多様な意見を理解しておきましょう。大事なことは解答(のようなもの)を覚えることではありません。いろいろな立場からの意見をふまえて自分なりに考えてみましょう。 ■中国の反日デモ 小泉首相が、これまでの首相が避けてきた靖国神社参拝(さんぱい)を強行したために、「A級戦犯がまつられている靖国神社に参拝するということは、日本が中国侵略を反省していない証拠だ」として、中国の民衆が反日デモを行った。しかし、反日デモが暴徒化し、日本料理店を破壊するなど行き過ぎが生じたために、中国政府は反日デモを鎮静化した。このデモの背後には、中国国民の民主化要求を反日デモに向けることによってガス抜きしようとする中国政府の政治的意図があるとも言われている。 ■郵政民営化 郵便局の、郵便事業・郵便貯金・簡易保険の3事業を、国による運営から民間による運営に移行する政策。小泉首相が、国の行政改革の本丸として推進している。国鉄→JR、電電公社→NTT、専売公社→JT(日本たばこ産業株式会社)に続く改革と位置づけられている。ソ連の崩壊に見られるように、国よりも民間に移行した方が効率のよい経営ができるということで、多くの人の支持を得て、先の衆議院選挙では、民営化を訴えた自民党が圧勝した。しかし、郵政民営化の背後には、300兆円にも上る郵便貯金という国民の財産を、アメリカの国債購入に充て、アメリカの財政赤字をカバーするためのものだという批判もある。 ■年金問題 年金を受け取る高齢者の数が、年金を支払う国民の数よりも少なかった時代には、年金はうまく運用されていた。しかし、今後、高齢者の増加と少子化の進行に伴い、現在の年金システムは破綻することがほぼ確実になっている。老後の安心を国の年金制度任せにするのではなく、日本の昔からの伝統である家族の中で子が親を扶養するという仕組みを見直すことが求められている。 ■ハリケーンカトリーナ アメリカ国内の今年のハリケーンの多発は、地球温暖化による環境の変化が遠因となったと言われている。そのうちの一つであるカトリーナがアメリカの低所得者層の多く住む地域を直撃し、堤防の決壊などにより多くの死傷者を出した。被害者の多くは、ハリケーンが到来しても、移動する手段(車・資金など)を持たない層だった。テロとの対決で支持を得たブッシュ大統領が、国内の貧富の差などを解決できていないことが明らかになった。 ■愛知万博 「環境との調和」をテーマにして愛知県で行われた「愛・地球博」が終了した。のべ入場者数は、当初の予想を上回り興行的には成功した。しかし、開催地の工事のため、自然環境が破壊されるなど、いくつかの問題を残したとも言われている。 ■ライブドアとニッポン放送 経営規模の大きいフジテレビの株式を経営規模の小さいニッポン放送が取得しているというねじれ現象が長く続いていた。これは、言わば、力のなくなった親が、自分よりもはるかに力の強くなった子供を株式の上で支配しているという構図だった。このねじれに目をつけたライブドアが、ニッポン放送の株式を取得し、フジテレビの経営権を握ることを意図し、株の買い取りを行った。しかし、ニッポン放送・フジテレビ側の反発を受けたために交渉はこじれ、最終的に、ライブドアの取得した株式をニッポン放送・フジテレビ側が高額で買い戻すことで和解した。 株式を持つものが株式会社を支配するという世界の資本主義のルールからはずれた日本の株式会社の特殊な体質が明らかになるとともに、ネット企業の台頭が強く印象づけられた。 ■韓流 韓国の大衆文化の流行を指すために中国で生まれた言葉。NHKで放送されたドラマ「冬のソナタ」をきっかけに起こった、日本における韓国ブームを指すために使われている。隣国への関心が増すのはよいことだが、単にムード的な友好を進めるだけでは不充分である。教科書問題・靖国問題など、日本と韓国の間には、まだ解決しなければならない問題も多い。 ■靖国神社参拝問題 靖国神社は、明治維新の際に、官軍の死者をまつるために作られた。その後、日清・日露戦争で、国家に殉じた戦没者をまつる神社として発展した。太平洋戦争の戦死者もまつられたが、日本の敗戦により、戦争を開始した責任があるとされたA級戦犯もまつられているため、韓国・中国側からの反発が強い。 日本の歴代首相は、中国・韓国などの反発を避けるため、靖国神社への公式の参拝を見送ってきた。しかし、小泉首相は首相就任前の公約を実行するとして、靖国神社への参拝を行ったため、中国や韓国との摩擦が拡大した。日本国内では、アメリカ側の一方的な裁判で戦犯とされた過程に対する不満と、国内の問題に他国が干渉することへの反発も強い。 ■NHK番組改変 天皇を戦争犯罪人とする団体が催した企画の放映で、内容に行き過ぎがあると感じたNHKが番組を一部改変した。しかし、朝日新聞が、その改変を政治家からの圧力によるものだと報道したために、大きな社会問題に発展した。真相は、事実の裏づけがないまま見込みで報道した朝日新聞の誤報だったと言われているが、この影響で、NHKの受信料不払い者が拡大した。 ■テロリズム 自分の政治的信条を、言論ではなく暴力によって認めさせようとする行為。強力な政治体制のもとで、ルールを守った言論によっては自分の意見が反映されないと感じる集団が、絶望的なテロリズムに走ることが多い。かつては、皇帝専制時代でのロシアで、現在はアメリカの支配に反発するイスラム文化圏で、また、英国の支配に反抗するアイルランド系住民の間で、また、ロシアの支配に反抗する少数民族の間で、テロリズムによる破壊が続いている。 テロリズムが問題となるのは、まず恐怖や破壊は憎悪を再生産するだけだということである。もう一つは、科学技術の発達によって、テロリズムの破壊がますます巨大なものになっているということである。 ■環境問題 地球温暖化、オゾン層破壊、環境ホルモンの増加・大気汚染・処理できないゴミの増大・絶滅動物の増加など、地球環境の破壊はますます進んでいる。 解決の道は、省エネルギー化・省資源化・リサイクル化・植林などの環境保護・新しいクリーンエネルギーの開発など、さまざまに考えられるが、現在の私企業の利益中心の資本主義が、根本的な解決を阻んでいる。例えば、政治的・経済的に最も大きい影響力を持つ米国が、国内からの企業の圧力により、環境保護に消極的な態度を取っていることなどがその典型的な例である。 ■プロ野球 プロサッカーの人気の上昇に比べて、プロ野球の人気の凋落は激しい。これは、プロ野球界が、これまでの繁栄に甘んじ、新しい改革を怠ってきたからである。経営優先の立場から、チームの合併を決めた近鉄とオリックスは、野球ファンと選手からの猛烈な反発を受けた。この中で、新たに球団経営にネット産業が名乗りを上げ、ライブドア、楽天の競争の結果、楽天が東北楽天ゴールデンイーグルスを設立した。 ただし、プロ野球は経営的には黒字化が難しいと言われており、これまでプロ野球の主なオーナーだったダイエー・阪急・西部などが産業の衰退とともに、新たに台頭したネット産業に取って代わられるという現象が置きつつある。 |