走り込みの練習の途中で、ふと空を見上げるとわたがしのような入道雲が、空一面に広がっている。 （45字）

　

　あの日は、五月晴れだった。私は、意気揚々とグラウンドのスタート地点に立つ。
「よーい、スタート。」
という声と同時に、私は大地を蹴って走り出した。
「あれ？みんなの背中が見える。」
私は、不安と同時にゴールした。結果、私は五位だった。
　私は、小学一年生の頃からずっと運動会のリレー選手だ。もちろん今年も出場するつもりでいた。しかし、この春のクラス替えでリレー選手の常連が顔を揃えた。リレー選手は、クラスから上位4名が選ばれる。案の定この五月の体力テストで五位という悲惨な結果となった。私は、セミの抜け殻みたいになって自宅に着いた。
　そこへ、姉が帰宅した。私は、せきを切ったように泣きながら、姉に今日の出来事を話した。すると姉は、
「りこの気持ちはよく分かるよ。でも私なんて、ずっと補欠だったんだよ。りこは、まだ決まったわけじゃないじゃん。夏休み明けに決まるんでしょう？練習するんだよ。そして、リレー選手になって私の無念を晴らしてよ。私、応援しているよ。」
と、勇気付けてくれたのだ。
「そうだ！練習しなきゃ。」
九月のリレー選手決めまでまだ時間はある。私は、夏休みに、走り込みの練習をしようと決めた。
　そして今、夏休み。正直、練習は辛い・・・。でも、リレー選手に選ばれて運動会で活躍したいんだ。走り込みの練習の途中で、ふと空を見上げるとわたがしのような入道雲が、空一面に広がっている。
「りこちゃん、がんばれ！」
と聞こえてくるようだ。私は、
「よし！負けるもんか！」
と思った。
そして、まだ大地を蹴って走り出した。