そしてバットとグローブと一緒に過ごしていると、広島で友達との野球の練習もないが、久しぶりに母の母校の大学、研究室に行ったり 、広島ならではのお好み焼きを食べたり、いつもの野球とちょっと離れた、特別な生活を送っても不安なく落ち着いて安心していられる。 （124字）

　

　世界中どこに行っても日本人の旅行者たちは身の回りに日本を持って動き回る。日本というのは、私たちの文化的カプセルであり、そこに入って初めて安心するのである。アメリカ人、フランス人も、海外旅行に出かける時はそれぞれの文化的カプセルに包まれて生活するのが快適である。又、皮膜の強さは、国によってだいぶ変わる。ハワイで家庭訪問を企画したが、日本人はカプセルの皮膜が強すぎて現地の生活につかろうとはしなかった。しかし、西洋人が日本に来たら反対に、ぜひ訪問したい、と目を輝かせるに違いない。
　ぼくがこの話を読んで一番心に残ったことは、旅行するときでも、日本の文化的カプセルを強く持っているということだ。ぼくは、旅行に出かける時、必ず、グローブとバットを持って行く。しかし、旅行と言っても、最近は、新型コロナウイルスのため、祖父母や、曾祖母の家に行くことが多い。そして、ぼくの、目的は、素振りと割りという基本的な野球のトレーニングができるからである。素振りも割も、毎日、一意専心になって行わなければ、野球が上手くなれない大切なトレーニングだ。そして、何よりの理由が、持って行くことで自分の心が落ち着くからだ。ぼくが夏休みに広島に住んでいる曾祖母の家を訪れた時の話だ。
　「ついに広島に行く日が来たね。」
ぼくの心は楽しさで舞い上がる。広島に行く日の朝、車の中は荷物であふれかえっていた。もちろん、ぼくはその中に忘れずにグローブとバットが入っている。グローブとバットと共に過ごす生活が幕を開けた。広島に着いて、ぼくは必死に素振りと割りを続けた。そしてバットとグローブと一緒に過ごしていると、広島で友達との野球の練習もないが、久しぶりに母の母校の大学、研究室に行ったり
、広島ならではのお好み焼きを食べたり、いつもの野球とちょっと離れた、特別な生活を送っても不安なく落ち着いて安心していられる。まるで、ぼくにとって、グローブとバットは心の安定剤のようだ。大切な物はどこに行っても持って行きたくなるものだ。
　何故、慣れ親しんだもので安心感を抱くかインターネットで調べてみた。すると、人は分からない物を恐れ、変化によりもともと持っていた情報が役に立たなくなるからだそうだ。しかし、身近にある大切な物は、人を安心させてくれる効果がある。ぼくにとって、野球のある生活が習慣になってるので、野球から離れた生活をすると不安になり、野球道具と過ごす時間があると安心するのだ。もし、ぼくが野球から離れた生活をさせられたら、「やや急に野球が無くなるなんて、絶対嫌だ。」（だじゃれ）と叫びたくなっても、野球道具が安心させてくれるのかな？と考えてみた。
　人間にとって、文化的カプセルというものは、周りが変化して環境が変わっても、精神的に安心させてくれる大切なものであると考えた。