背番号が見当たらないと思い、周りを見渡し田が見つからず、同時に野球ノートを脇に挟んでいたのが実はそこに背番号が挟まっていて、脇が緩んだ瞬間に足元に落ちてしまったのだ。 （83字）

　

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くはその日の練習後の、監督の話で、目を丸くするような出来事があった。なんと、背番号が配られたのである。背番号はそのうちもらえると思っていたが突然もらえたので、とてもびっくりしてしまったのだ。一桁の背番号のほとんどが、そのポジションのレギュラーとして試合に出るカッコいい名札のような物である。一つ上の学年の先輩たちが去年まで一桁の背番号を付けていたけど、かっこよすぎてキュンキュン心が踊ってしまう。ぼくは、戦国の武将のよろいもかっこよくて大好きであるが、背番号も、ぼくにとってはそれと同じくらいの武装である。そしてついにその時が来た。ぼくのいつも練習させてもらっているポジションのライトは9番なので、
「10番キャプテン、1番、2番、3番…。」
どんどん呼ばれるにつれて、ぼくの心もついにライトのポジションとして認められるんだ。緊張感が走った。となりにいたキャプテンのいお君が、
「次呼ばれるよ。」
と、ささやいた。そしてついに、この時が来た。
「9番、ライト、みつき。」
ぼくはまるで太陽のように元気に自分の宝物を受け取った。その日、暇になると、背番号を見てばかりで、その背番号を見るたびに、絶対に、チームの為に活躍するぞ、と強く思うのであった。この背番号で、バンバン、ヒットが打てる気がする。(だじゃれ)10分後、片付けの時、大変な事件が起こってしまったのだ。戸川さんと監督が並んで話していた時である。背番号が見当たらないと思い、周りを見渡し田が見つからず、同時に野球ノートを脇に挟んでいたのが実はそこに背番号が挟まっていて、脇が緩んだ瞬間に足元に落ちてしまったのだ。大切な背番号を落としてしまった出来事に目を丸くしながら、思わず飛び跳ね、最悪最悪！とつぶやきながら慌てて拾った。その時戸川さんに
「いいリアクションだね。」
とほほ笑んでくれた。大事なものを落とすと、たっぱり飛び跳ねてしまうものなんだな、と思った。
　母は、ぼくがようちえんの時に、母の日にプレゼントをした、今砂糖を入れてる調味料入れが宝物だという。それには、ぼくが大好きなオムレツ、スパゲッティ、ハンバーグの絵が描いてある。それを見るたびに、成長しても前から大好物は変わらないんだなあ。美味しい料理を作ってあげよう、頑張ろう、という気持ちになるよ、とにこにこその容器をじっくり眺めていた。世界に一つしかなく、その時にしか作れないものだから価値があるようだ。
　ぼくは、ぼくが大切にしている背番号を眺めると、心が踊り、活躍する気持ちになる。母は料理を頑張ろうという気持ちになる。誰にだって大切なプレゼントがあると思うが、それを見るたびに心で思うことであろう。人間にとって、自分の宝物を眺めると、うれしい感情を与えてくれると考えた。