「Ｒ君ほんとはイギリスに行くのさびしいらしいよ。」 ２ヶ月の間にクラスでお別れ会をして、最後もじゃあなーといつも通りのあいさつであっという間に去ってしまった。 （81字）

　

オンラインで繋がる
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　メガマウス
「ぼく、もうすぐイギリスに引っ越すんだ。」
　いつも通り仲良しグループと遊んでいる時にRは少し得意気に言ってきた。お父さんの仕事があると言ってイギリスに引っ越すことになったらしい。ぼくが二年生の時だった。
「えー。」
みんなびっくりしていた。Rはさびしさくもなさそうに普通だった。次の日からもRはいつもと変わらなく毎日家に来る。毎日一緒に遊んだ。Rは幼稚園から一緒だったけれど小1の時同じクラスになってから仲良くなった。毎日サッカーやテレビゲームをしたり、最後の方は、土日まで来るようになった。
「R君ほんとはイギリスに行くのさびしいらしいよ。」
（そうなのかな？）
　2ヶ月の間にクラスでお別れ会をして、最後もじゃあなーといつも通りのあいさつであっという間に去ってしまった。その後、夏休みにクラス宛に手紙をくれた。イギリスの生活では通学ははなにで行ってもよくて、Rはキックボードでいっているといることや、「電車と船どっちが好き？」というよくわからない質問が書いてあった。僕はRらしいと思った。
　1年くらいたって、母にRに会いたいと言った。イギリスに行くのは無理だからスマホの LINE でビデオ電話をつないでくれた。ビデオでRを見ると少し太って恥ずかしそうでお互い喋れなかった。僕とRはテレビゲームが好きだった。クラスの友達とも大乱闘スマッシュブラザーズやスプラトゥーンというオンラインでゲームをやっている。もしかしたら僕は外国でもゲームの ID を入れればできるかなと思った。IDを聞いて入れたら本当につながった。オンラインゲームはマイク機能付きでしゃべりながらゲームができる。もちろん
「もう、いいかげんにやめなさーい」という母の怒鳴り声だって相手に聞こえてしまう。ゲームをやったらあっという間にいつもの会話ができて元の僕とRに戻った。まるで隣にいるみたい。
　便利だけれど一つ問題がある。それは時差の問題だ。イギリスと日本では9時間時間が違う。どちらかが夜にやるとどちらかが早朝になってしまう。こないだRはご飯も食べずに寝起きでやっていた。でもたまにだからお互いの母が許してくれた。母は昔、別れは一生の別れのような感覚だったけれど今は外国でも 簡単にしかも無料で連絡が取れるなんてすごいなぁと言っている。もし僕が昭和に時代に生まれていたら、Rと一生の別れだったかもしれない。
　Rは今頃いびきかいて寝てるんだろうな、グルンと地球儀を回して時計を眺めた。