僕の家には、広島県物産陳列館の隣の踏切の近くに行ってはいけないという、先祖代々の言い伝えがあった。 （49字）

　

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んの形見としてこの人形をもらっていた。それを僕はすっかり忘れてしまっていたのだ。粗末に扱われ、洗濯機への中へと何度も入れられてしまっていた。魂の宿るこの人形は、恨みを持ったであろう。遺憾の意にかられた僕は、その人形をお焚き上げに出したのだ。それから、不思議なことは何も起きてない。

彼女
　私は友達の愛理と一緒に遊園地に行った。帰りに駅で安い指輪を買ってあげた。しかし彼女は断った。私は何度も受け取ってくれるよう、懇願した。最後に
「仕方ないね～。ちょっと私の家に来て。」と誘われた。家で僕が買った指輪を指に通すと、
「スパッ」と言う音を立てながら真っ二つに切れたのだ。それから私を見た人はいないはずだ。

踏切
　戦争が終わる頃、僕は広島に住んでいた。僕の家には、広島県物産陳列館（原爆ドーム）の隣の踏切の近くに行ってはいけないという、先祖代々の言い伝えがあった。けれども、この日は、国民学校から帰る途中、近道をするためにそこの踏切を通っていったのだ。
「キュ、キィーーー」
錆びた遮断機が下りてきた。
「シュッシュー」
蒸気機関車が汽笛を鳴らしながら走っていった。踏切の反対側を見た。そこには人が立っていた。性別は不明だけどスーツ見たいな物を着ていたのだ。当時はみんな着物に空襲の時の熱から守る頭にかぶる布（防空頭巾）が普通だった。その人は手招きをしていた。逃げようとしたけど体が金縛りみたいに動かないのだ。本人は口を動かしていた。なにをいっているのかは分からない。
「ウィーウィー」
空襲警報が鳴った。防空壕に逃げるのが普通だったが、僕はその場にいたのだ。こんなに「B-29」を目の当たりにするのは始めてだった。爆弾は遠くから見るとキラキラ光っている。カプセルの中に何十個も油脂焼夷弾が入っている。それが
「キュー！」と地上に落ちる。数メートル近くに落ちる爆弾も自分には害はない。この世と違う空間にいると思えるぐらいだった。
　次の日、僕はまた国民学校の帰りあの踏切を通って行った。またあのスーツを着た人が立っていたのだ。そして、昨日と同じことが繰り返された。それから何日もそこの踏切を通っていき爆弾から身を守ってくれたのだ。
　八月六日僕は珍しく無意識に学校へ行く途中踏切を取っていった。丁度八時十五分だったと思う。米軍飛行機が小さな爆弾を落とした。音はしなかった。その時、
「ドゥワン」
大きな爆発音と煙が飛び散った。しかし爆風は僕をよけるように走っていったのだ。すると一枚の紙が空から落ちてきた。そこには
「ありがとの。あんたのおかげでわたしは成仏できる。」と広島弁で書いてあったのだ。