なぜかというと、それは初めて父も一緒に日本へ帰った時、父の旧友が私に贈ってくれた思い出が詰まっている、唯一無二の大切なウサギだったからだ。 （69字）

　

私は、物の価値をすべてお金に換算して考えるのは悪いと思う。その理由は二つある。
　 第一の理由は、お金に換算して物の価値を考えると、その物の持つ大切な価値を見失ってしまうことがあるからだ。四年生の夏、私はウサギの縫いぐるみを、旅先に忘れて来たことがあった。それに気付き、私の心はまるで稲妻の閃光のような衝撃を感じた。なぜかというと、それは初めて父も一緒に日本へ帰った時、父の旧友が私に贈ってくれた思い出が詰まっている、唯一無二の大切なウサギだったからだ。私の気持ちを話すと、両親もそれを理解し、往復二時間もかけて、取りに戻ってくれたのだった。
　第二の理由は、お金には換算できない特別な価値を持っている物もあるからだ。私の学校では、学年末の最終日に、修了証書が全員に授与される。それには、様々なステッカーが貼られており、学年を通じ生活態度が良い、学業優秀などを、先生たちが評価した証である。去年の私の修了証書には、九個もステッカーが貼られていた。努力した成果が、実際に目に見える形あるものとなり、私はとても満足した気持ちになる。それは、私以外の人にとっては、お金に換算したらほとんど価値のないものであろう。だが、私にとってそのステッカーは、決してお金に換算できるものではなく、さらに貴い価値あるものだと実感している。
　確かに、すべての物をお金に換算すると、分かりやすくなる。しかし、人それぞれその物に対して付加する価値観が違うのである。「二十代の頃より十倍金持ちになったという六十代の人間を見つけることは簡単だ。だが、そのうちのだれもが十倍幸せになったとは言わないはずだ。」と言う名言がある。それは、幸せがお金に明瞭に換算できるものではないからだ。私たち人間が、幸せを感じるのは物質的なものからだけではなく、人それぞれ心の奥から感じるものだからに違いない。だからこそ、私はこれからは、ものの本来の価値を見つけるためには、お金に換算せずに考えていくことが大切だと心に留めている。