「そうだ、クラスの中でも自己紹介をしなければいけないんだった。」 早速自己紹介をしようとすると、前ぶりだったみたいで担任はクラスメイト全員に自分の好きなものや好きなことを言わせた。 （91字）

　

　「私たちのことを、忘れないでください。」
これは、私が転校する前日にクラスメイトが言ってくれた言葉だ。私はこの時、表には出さなかったが、心の中はさびしい気持ちでいっぱいだった。
　一昨年の十月の月末、私は父の仕事の都合で広島から東京に引っこした。人生初の東京に降り立った時、広島での生活を白紙にもどしたかのように、分からないことだらけだった。
　十一月一日、私は転入する学校へと向かった。きんちょうしていて、今にも心臓が飛び出そうだった。どうやら、その週はあいさつ週間だったようで、何人かの生徒たちが登校してくる生徒たちにあいさつをしていた。私は目立たずに校長室へ行きたかった。しかし母はそばにいるし、正門の前には生徒たちのかべが立ちはだかっているから、当然、目立たずに入れるわけがない。おまけに母が
「今日から転入するから仲良くしてあげてね。」　
と私はきんちょうしているのに、母は一ミリもそんな感情をいだいていなかったようで笑顔で言った。この発言は私のきんちょう感に対して、火に油を注いだ。周りからは、明るくて活発だと言われている私だが、さすがに初めての友達や初めての先生だときんちょうしてしまう。さらに、その日は全校朝会があり、全生徒の前で自己紹介をしなければならなかった。名前を言うてい度だったが、もともときんちょうしていた私は、ダブルパンチを食らった。なんとかつっかえずに紹介ができ、一件落着と思ったら、次に担任に自己紹介をたのまれた。
「そうだ、クラスの中でも自己紹介をしなければいけないんだった。」
早速自己紹介をしようとすると、前ぶりだったみたいで担任はクラスメイト全員に自分の好きなものや好きなことを言わせた。聞き終えた後、私も好きなものを言った。 拍手に包まれ、
「はあ、 もう大丈夫。」
と心の中で安心して、一時間目の授業を受けた。五分休けい、何も用事がなかったので、ろう下に出てみたら、一しゅんで私は生徒たちに囲まれた。
「どこから来たの？友達になってくれる？」
「広島から来たよ。いいよ。」
次々と降りかかってくる質問に私は答えた。見えない圧力に今にも落ちつぶされそうになった。しかし、何とかふんばって押しつぶされずにすんだ。その日、私は人気者になった。 月日が流れていくうちにだんだん友達が増え今では他のクラスにも大勢友達がいる。
　私はこの経験を通して、別れは悲しいがその先には新たな出会いがあることが分かった。