ぼくは、いつも後ろ向きな考えで人のせいにしたりするけれど、みの助さんのように、どんな場所やかんきょうでも前向きに考えたり、自分の間違いに気付いたりできる人間になりたいと心の中で思いながら、お母さんにほほ笑みかえしました。 （111字）

　

　みの助は火打ちで火を切りはじめた。けれども、今になって自分のまちがっていたことがはっきりとわかった。世の中が進んで古い商売がいらなくなれば、男らしくすっぱりその商売は捨てて、世の中のためになる新しい商売にかわろうじゃないか。僕が一番みの助がえらいと思ったのは、自分の間違いに気づいて新しい仕事をしようと決めたことです。
　ぼくにも似た話があります。去年の七月にお父さんが転勤することになったので、ぼくは岐阜から東京に転校しました。岐阜に住んでいた時は、友達がたくさんいました。けれども、東京に来ると自然は少なく、知っている友達もいないので、お父さんに文句ばかり言って、ふさぎこむ日々でした。しかし、新しいクラスの子が、
「遊ぼ。」
とさそいに来てくれました。ぼくにとって、その子は、まるで神さまのように見えました。
　お母さんは、ぼくたちが生まれる前まで、好きな仕事や趣味を楽しんでいたそうです。やがて兄が生まれると、二十四時間赤ちゃん中心の生活になりました。母は最初、家にいる毎日で自分の時間がうばわれるように感じたそうです。それに、お父さんも仕事が忙しく、一人で子育てをしなければいけなくて、ノイローゼになりそうなほど辛くなったそうです。けれども、辛さが二倍の分、かわいい赤ちゃんを見ることで喜びや幸せも二倍になることを知りました。そのうち子育ては楽しいと思うようになったそうです。だからぼくが生まれて、さらに幸せが四倍になりました。
「あなたと、お兄ちゃんが生まれて、本当によかったわ～。」
と、しあわせそうにしわくちゃな顔をしてほほえみました。
　ぼくは、いつも後ろ向きな考えで人のせいにしたりするけれど、みの助さんのように、どんな場所やかんきょうでも前向きに考えたり、自分の間違いに気付いたりできる人間になりたいと心の中で思いながら、お母さんにほほ笑みかえしました。